講演 

  「悲劇」は今も続いている

林俊宏

 エホバの証人の問題は分かりにくい問題です。どういうふうにそれに関わればいいのですかと、よく尋ねられます。カルトはマインドコントロールを使うと定義されますので、エホバの証人のマインドコントロールは何かについて話しをします。
 私が「エホバの証人の悲劇」を書いてから13年になります。二万部くらいが出版されていて、図書館にも置かれていますので五万人くらいの人たちが読んでいる勘定になります。後発の本と合わせると、だいたい八万人の人たちがこの問題を認識をしています。「エホバの証人の悲劇」を書いたとき、証人は多いときで26万人いました。直近の数字は21万人です。エホバの証人は13年間で五万人減っています。救出運動はものみの塔日本支部に影響を与えました。それは間違いありません。

 エホバの証人の家族は先刻ご承知ですが、それ以外の人からエホバの証人の組織のどこが問題なのですかと聞かれると説明しにくいところがあります。そこで私はそれにこう答えます。「あの組織にはマインドコントロールがあり、何をされるか分からない不安があること、それが深刻な影響を及ぼしています」と説明をしています。日常的にエホバの証人は積極的で非常に活発です。「聖書の真理は何かとエホバの証人がクリスチャンに問いかけていますと受け取ったらいかがですか。聖書はそんなことは言っていないでしょうと言うのがクリスチャンの努めでしょう」とクリスチャンに言っています。

 一人の読者からFAXが届きました。「ものみの塔はあることをしてはいけないと言っていますが、それは本当ですか。聖書の教えはどうなのですか」というものでした。そこで所沢の牧師と私とで読者に会いました。ものみの塔の教えと聖書の教えは違うこと、ものみの塔はカルト教団であることを説明しました。その人は半年くらい教会で聖書研究をやりながら王国会館に通い、教会と王国会館を往復しました。教会の教えを伝えることでものみの塔を離れました。
それから、あるエホバの証人の母親から証人になった娘について相談を受けました。その娘は聖書の教えとものみの塔の教えは同じだと思ってエホバの証人になっていました。そのことが問題解決の糸口だと思います。
 このほかに、現在進行中の話合いがあり、今のところ、二人のエホバの証人と研究を続けています。

 七月の地域大会に出ていって組織の実情を見る機会がありました。大会のテーマは「エホバの許にとどまりなさい」でした。これを裏返して見れば、組織にとどまらない人がいかに多くいるかということです。最近、組織の中は大きく動揺しています。エホバの証人は組織が動揺している中で活動しています。大会では協会はエホバの証人に「信仰の危機はいつ」と問いかけています。1つ目は健康問題を抱えたときに危機を迎える。2つ目は、調整が必要になったときです。エホバの証人に社会は競争社会です。人間関係でぎくしゃくしたときに危機を迎えます。3つ目は子どもが組織を離れるときです。エホバの証人と接するとき、これが一つのとっかかりとなります。またものみの塔はエホバの証人をどのようにマインドコントロールするか語っています。1「エホバへの態度を保ちなさい」。2「長老の助けを借りなさい」。3「家族の支えを保ち続けなさい」でした。

 最近、王国会館にも行く機会がありましたが、以前とは違っているなと感じました。十数年前は会館には緊張感がありました。今では、地域大会で子どもが泣いていたら放っていました。組織に緊張感がなくなっている感じがしました。以前なら子どもが集会に参加するのは当然でした。それが家庭内で摩擦を起こす原因の一つでした。最近、王国会館に行きましたところ、子どもの姿は見えませんでした。組織のかたくな態度は、今では変わってきています。
 マインドコントロールで証人を導こうとしている現実に立ってこの問題に関わる必要があります。エホバの証人との話し合いは難しくなってきています。エホバの証人と接するときは教理だけではなくて、いろんな面を考慮して救出を考えていきたいと思います。


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