無輸血手術体験者の体験談

 3年前から、研究生として伝道者の夫とともに熱心に励んできました。妊娠していることを喜び輸血問題に直面したとき、どうしましょうかと長老に尋ねました。そのとき、研究生の立場では医療連絡委員の助けは得られませんと言われました。輸血を拒否すべきという組織の教えを受け入れ、司会者とエホバの証人としてふさわしく行動できるよう、証言の練習をしました。バプテスマを受けた者も、研究生も、同じ行動をするよう言われているのに、まさか立場によって扱いに差があるとは知らず衝撃を受けました。
 年が明けて、検診では胎児水腫といわれる異常妊娠と言われました。重度の心不全を引き起こす症状で、胎児に死亡率が高いため速やかな対応が必要なこと、治療法として子宮内の胎児に輸血をする手段があり、元気に育っている例があると聞きました。手術をする施設として大学病院を紹介されましたが、この診療にともない無輸血手術を希望しましたところ、大学病院からは受け入れを拒否されました。すぐに戻り、長老に相談し、せめて無輸血手術をする病院を紹介してくれるよう、頼みましたが、必死に訴えても、自分で探すよう、いくつか断られても無輸血手術ができる病院を紹介してもらえると断られました。組織の取り決めにある医療連絡委員を頼るよう教えられ、組織が行動してくれると信じていたのですが、助ける者に手を差し伸べてくれない長老の姿勢に不安と恐怖を感じました。
 やむなく病院を探しましたが初めてですから、要領を得ず、時間がかかる作業でした。助かる子供が手遅れになるという恐怖が重くのしかかりました。時間だけが空しく過ぎました。長老の冷たい仕打ちについて司会者は自分の知人の連絡委員に話をしたところ、伝道者の子供であるから連絡委員が対応するケースになると言われました。
 人間のやり方次第で人命が左右される――これで本当に神の組織なのだろうか、疑いの目を向けました。無輸血手術をする病院に行きましたら胎児はすでに死亡していました。
 長老からは慰めのことばもありませんでした。それどころか、長老からは組織の参考のために書類を出すように言われただけでした。組織の利益だけを優先する態度でした。
 信者を研究生とか、伝道者といった身分で差別していると、日本支部に手紙を書きましたが、おざなりな返事が返ってくるばかり……。慰めの言葉もありませんでした。日本支部に手紙を書いたことを聞いて長老は激怒しました。会衆内では事実を隠蔽していました。

輸血拒否死亡者追悼式式辞

 

 本日ここに、「輸血拒否死亡者追悼式」を行うにあたり、エホバの証人問題に関わる方々を代表して式辞を述べさせていただきます。

 「輸血拒否」、それは彼らの歪んだ聖書解釈に基づく誤った教義であり、他の偏狭な行動規範の中でも、信ずる者を死へと追いやる、ひときわ忌々しき特色となっています。

 彼らの態度は、この教義によって多くの人が傷つき、助けを叫び求める声が出ている現在でも全く変わることなく、傲慢にも信者に対しては、首尾一貫していると主張するこの組織に付き従う事を、あたかも自ら選択しているかに錯覚させて強要し、具体的な医学上の指示が以前とは明らかに変更や解禁となったものであるのにかかわらず、「霊の導きによってより理解が増し加わっただけ」と語り、信者個々人の福祉よりも、一般社会からの非難を避ける事が主眼となり、内外において組織の体面を保つ意図のみがありありとわかる、破廉恥な様相を呈しています。

 そうした偽りの教義に振り回され、その実態を知らずにあまりにも無意味な死へと向かっていった方の事を思うと、又、愛する者をむざむざ死なせてしまった御遺族の方の無念を思うと、ここに集まる私達一人々は深い悲しみが消え去る事は無く、それと同時に詭弁を弄して今なお輸血拒否の教義を取り下げようとしないものみの塔の欺瞞性には、強い憤りを感じます。

 無論、ここに集まった私たちの多くはかつて彼らの一員として輸血拒否をすることこそ、信仰の業であると信じ、人々に教え勧めてきました。

 故に私たちは今、そしてこれからもそれに対する悔俊の念を込め、これ以上新たな犠牲者が増える事のないように声を大にして、現役のエホバの証人や一般社会の人々、次の世代にも訴えてまいりたいと思います。この集会が、この言葉が、何かしらの形で今だ狂気の教えに捕らわれている証人の方々に届き、自らを救い出す契機となる事を願ってやみません。

 また、この集会によって、ここにご来場頂きました元証人以外の方々、また、やがてこの式典について伝え聞くようになる方々にも、これを機に現代社会の病巣の一端であるカルト宗教問題を思いに止めて下さり、人間の本当の幸福のあり方とは一体どのようなものであるか、それぞれにお考え頂けるなら幸いです。

 終わりに、輸血拒否により亡くなられたエホバの証人信者の方、そのご家族の方々の今なお変わる事のない深い悲しみと苦しみに思いを致すとともに、一日でも早い教義の撤回、それによる輸血拒否死亡者の根絶を心から願い、1分間の黙祷を捧げたいと思います。

 

(事情の許される方はどうぞご起立をお願い致します)それでは黙祷をもって「第7回輸血拒否死亡者追悼式」といたします。ご一緒に黙祷をお願い致します。(1分)

 


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