JAPAN-KOREA JOINT SEMINOR ON PNEUMOCONIOSIS



JAPAN-KOREA JOINT SEMINOR ON PNEUMOCONIOSIS(Japanese)

日韓じん肺懇談会を開催



医師・研究者、労働組合、被災者団体等が一堂に会して研究会

昨(1996)年11月3日、韓国・ソウルの西江大学産業問題研究所において「韓日じん肺懇談会」が開催された([韓国側主催]韓国労働保健職業病研究所、[日本側主催]全国労働安全衛生センター連絡会議、労働者住民医療機関連絡会議)。

張任源氏(チャン・イモン、韓国労働保健職業病研究所所長・中央大学校医科大学学長)が開会挨拶で述べたように、これは「3度目の出会い」。前回、1995年7月に東京で開催した「第2回労働と健康に関する日韓共同セミナー」(「安全センター情報」1995年8・9月号参照)において、共通の課題のひとつとして造船所を中心とした「じん肺」の問題を取り上げたことから、「じん肺」にしぼった研究懇談会の開催となったもの。「じん肺」問題は、日韓のみならずアジアをつなぐ共通のテーマのひとつであるという思いもある。

大きな柱として、@具体的な症例の検討、A両国のじん肺関係法制度に対する理解の深化および問題点と共通の課題の検討、B労働者の取り組みの経験の交流を掲げた。 まず日本側から、次のような症例を紹介した。

「退職後に悪化のみられた珪肺」―近藤真一氏(高知・四国勤労病院院長)
「じん肺合併肺がん」―山本真氏(大分県勤労者医療生協大分協和病院)
「中小零細企業におけるじん肺(ガラス工・溶接工・鋳物工)」「炭鉱夫じん肺の症例から」―平野敏夫氏(東京・亀戸ひまわり診療所所長)
「造船労働に伴うアスベスト曝露作業者の歴史的コホート研究」―安本宗弘氏(神奈川県勤労者医療生協横須賀中央診療所事務長・神奈川労災職業病センター)

韓国側からは、任廷基氏(イム・ジョンギ、ソウル大学校医科大学診断放射線科教授―26頁写真)が、「じん肺に合併した肺がん」(炭鉱夫ケイ肺)2例、ボイラー工の「石綿肺」、「溶接工じん肺」を紹介した。最後の例は、胸部エックス線写真上では特別な所見がみられなかったが、高解像度(HR)CTによってじん肺がはっきりと確認できる。

また、崔秉舜氏(チェ・ビョンスン、東國大学校医科大学予防医学科教授)が、「韓国の石炭鉱業から発生するじん肺症の実態―発生に関与する要因および発生率―」という研究成果を報告した。報告者以外にも以下の医師らが参加しており、レントゲン写真を読影しながら、意見を交換した。

[日本側]斎藤竜太 (神奈川県勤労者医療生協十条通り医院院長)、畝博(福岡大学衛生学教室教授)、中里武(東京・渋谷医療生協六号通り診療所所長)、石川雄一(東京・癌研究所附属病院)の各氏。

[韓国側]梁吉承(ヤン・ギルスン、聖水医院院長、産業保健総合センター実行委員長)、鄭浩根(チョン・ホクォン、亜州大学校医科大学産業医学科科長、じん肺審査医)、李京南(イ・キョンナム、韓国産業安全公団保健指導局長)、金琅昊(キム・ヤンホ、産業保健研究院職業病診断センター)、林鐘翰(イム・ジョンハン、平和医院院長)、趙定振(チョ・ジョンジン、韓一病院家庭医学科科長)、キム・チョン(東國大学校予防医学科教授)の各氏。

じん肺をめぐる法制度に関しては、日本側からは次のような報告を行った。
「日本のじん肺健康管理・補償制度について」―安本宗弘氏(前出)
「じん肺をめぐる健康管理の体系と労災補償」―鈴木明氏(東京東部労災職業病センター)

韓国側からは、崔秉舜氏が「韓国の法的管理の概要と問題点」について報告し、梁吉承氏が、「製造業じん肺をめぐる問題点」について補足した。

韓国のじん肺関係法令の翻訳と崔秉舜氏の報告、この日の議論などをもとに「安全センター情報」1997年5月号33頁以下に「じん肺関係法令の日韓比較」を解説しているので、くわしくはそちらを参照されたい。制度問題としては、@「日本ではじん肺所見なし」とされるケースでも「疑症」として補償の対象になる、A肺気腫、肺性心も合併症としている、B粉じん作業1年以上経験者等に健康管理手帳を交付している点などで韓国の方が進んでいる。一方、@じん肺保護法が鉱業にしか適用されない、Aじん肺合併肺がんを認定対象としていない(34頁も参照)、B検診機関・療養機関を自由に選択できない点などでは日本の方が進んでいることなどがわかった。(なお、「安全センター情報」の号外として「韓国のじん肺関係法令」(頒価2,000円)も発行した。)

また、崔秉舜氏は、金正坤(キム・ジョンゴン)報告でも指摘されたような、外部的要因によって健診結果がゆがめられるなどの非倫理的問題、あるいは、数年前までは溶接工じん肺はよくなると言われてきた(鉄分が吸収されるので)などの問題点も指摘された。また、梁吉承氏や他の韓国側参加者からは、韓国では、現在でも報告されるじん肺症のほとんどが鉱業関係のものであり、今後、製造業等での問題が重要になってくることが強調された。

懇談会には、韓国の全国じん肺災害者協会(江原道太白(テベク)市)の会長、同協会太白直轄支会支会長および太白地域のじん肺被災者の支援活動にたずさわっている太白鉱山職業病管理センターの元應浩(ウォン・ウンホ)事務局長らも参加された。

また、ほかにも労働組合関係者らが多数、前出以外では次のような方々が参加されている。

[日本側(前出以外の参加者)]谷沿嘉瑞(高知・四国勤労病院事務長)、白石昭夫(愛媛労働災害職業病対策会議事務局長)、石川節(東京東部労災職業病センター)、川本浩之(神奈川労災職業病センター)、長渡陽一(全造船機械労働組合関東地方協議会)、古谷杉郎(全国労働安全衛生センター連絡会議事務局長)の各氏。

[韓国側(主な団体)]労働と健康研究会、馬山・昌原・巨済労働者健康連帯会議、大宇造船労働組合、現代重工業労働組合、漢拏重工業労働組合、三美綜合特殊鋼労働組合、病院労働組合連盟、民主金属労働組合連盟、韓国民主労総、労働政策研究所、韓日民衆連帯ネットワーク等々。

大宇造船労働組合産業安全部長の金正坤氏が「労働組合からみたじん肺などの職業病の実態と対策」について報告、日本からも川本浩之氏が「日本の造船労働者のじん肺・石綿肺に対する取り組み」について報告した。

なお、韓国の教育テレビがこの懇談会を取材、平野敏夫氏が日本のじん肺問題についてインタビューを受けた。後日、1時間弱の現代韓国の職業病の歴史と現状(炭鉱夫じん肺から源進レーヨン二硫化炭素中毒、過労死、LG電子2-ブロモプロパン問題、韓国通信のVDT障害まで)を特集した番組として放映され、それを収録したビデオテープが届けられている。

「安全センター情報」1997年5月号22〜23頁1997年7月5日掲載


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