hotline on safety and health at wotk


職場の安全と健康ホットライン開設一覧
1997年10月1日(水)-3日(金) 10:00〜17:00

*開設日・時間が上記と異なる場合は電話番号の下に付記してあります。
*また、各開設団体では、上記期間以外でも日常的に相談に応じています。
Eメールでの御相談も歓迎します。


東 京03-3683-9765東京東部労災職業病センター
神奈川045-573-4289(社)神奈川労災職業病センター
新 潟025-228-2127(財)新潟県安全衛生センター
大 阪06-943-1527関西労働者安全センター
*日本語は15:00〜21:00、日本語以外は17:00〜21:00
兵 庫06-488-9952尼崎労働者安全衛生センター
*10月1-2日のみ
広 島082-264-4110広島労働安全衛生センター
*12:00〜18:00
鳥 取0857-22-6110鳥取県労働安全衛生センター
愛 媛0897-34-0209愛媛労働災害職業病対策会議
*10月2日のみ
高 知0888-45-3953(財)高知県労働安全衛生センター
*10月1日のみ
大 分0975-37-7991(社)大分県勤労者安全衛生センター
熊 本096-372-0915熊本県労働安全衛生センター
*労福協気付[担当・穀本道也]
宮 崎0982-53-9400旧松尾鉱山被害者の会
鹿児島0995-63-1700姶良ユニオン/姶良地区平和運動センター
〒899-52 加治木町本町403明ビル2F
加治木町トレーニングセンター隣



職場の安全と健康ホットライン
10.1(水)-3(金) 全国13か所で開設


全国安全センターおよび各地域安全センターでは、これまで、1990・1991年に、全国14か所での「アスベスト・職業がん110番」の開設と各地域センター・支援団体等の相談事例をまとめた「外国人労働者の労災白書」の発行、また、昨年11月15-16日には全国6か所で「VDT労働ホットライン」を開設したほか、各地域での様々なホットラインや相談会、日常的にも様々な相談に応じています。

昨年11月の「VDT労働ホットライン」でもケイワンをはじめ多様な健康障害の訴えが寄せられ、50件の相談のうち5分の1の方が現に眼科・整形外科等で療養を受けており、医療機関を紹介したケースも4分の1にのぼるという状況でした。また、今年7月13-15日に神奈川労災職業病センター等が開設した「じん肺・石綿健康被害電話相談」には関東全域から100件もの相談が寄せられています。日常的に寄せられる相談も実に多岐にわたっています。

労働省と中央労働災害防止協会の主唱によって、毎年10月1〜7日の「全国労働衛生週間」(本年は第48回)と7月1〜7日の「全国安全週間」(本年は第70回)が実施されていますが、ポスター等による広報や地方大会の開催、優良事業場等の表彰などのセレモニー化してしまっているのではないでしょうか。少なくとも、職場の安全・健康問題の実態を掘り起こすものにはなっていないと言わざるをえません。

今回初めて、この「全国労働衛生週間」の最初の3日間に合わせて、全国一斉の相談窓口を開設し、労働災害・職業病の労災認定をはじめとした職の安全・健康問題、職場での取り組みの相談に応じるとともに、実例の収集と労働基準監督署や労働基準局の現場でのやりとりに基づいて労働省との交渉(年内を予定)を実施しようということで、10月1日(水)〜3日(金)に「職場の安全と健康ホットライン」を実施します。

ホットライン開設にあたっての背景および趣旨は、別紙「職場の安全と健康ホットライン開設にあたって」を参照にしてください。ここでは、ややトピックス的に、多岐にわたる問題を全般的に取り上げていますが、それらのテーマは労働省との交渉にあたっての要請事項にもなる予定です。 地域によっては、ホットライン自体は対象を絞ったものになっているところもあります。今回のホットラインの開設団体と電話番号等は下記のとおりです。

また、インターネット上のホームページでもホットラインについてお知らせし、E-mailでの御相談にも応じることにしています。

ホームページ : http://www.jca.ax.apc.org/joshrc/hotline97.html
E-mailアドレス : joshrc@jca.ax.apc.org
ホットラインに関するお問い合わせは、最寄りの開設団体または全国安全センター事務局(TEL 03-5232-0182)にお願いいたします。



職場の安全と健康ホットライン開設にあたって


目次
労働省の労働災害・職業病データをどうみるか
これだけ違う事業主届出件数と労災認定件数
職業病問題をめぐる最近のトピックス
●ストップ・ザ・ペイン(腰痛・ケイワン)
●孤立無縁のアスベスト使用大国 : 日本
●じん肺に合併した肺がんを業務上疾病に
●その他の問題
国民の意識と乖離していないか―労災補償行政




労働省の労働災害・職業病データをどうみるか

●安全・衛生週間に合わせてデータを公表

*労働省と中央労働災害防止協会の主唱によって、毎年7月1〜7日の「全国安全週間」(本年は第70回)、10月1〜7日の「全国労働衛生週間」(本年は第48回)が実施されている。その内容は、ポスター等による広報、地方大会の開催、優良事業場等の表彰などである。これに合わせて中災防が各年度版の『安全の指標』、『労働衛生のしおり』を発行し、その中で前年の労働災害(死亡災害は確定値、休業4日以上の死傷災害は推定値=安全週間)、職業病(業務上疾病=労働衛生週間)の発生状況を各々一般に知らせている。

* これらによると、「死亡者数は実質的に3年連続で増加」「重大災害も多発」しているものの、1996(平成8)年の死傷災害(休業4日以上)は162,862人(確定値)、業務上疾病は9,250人で、いずれも「継続して減少し続けている」と紹介されている。

● あとを絶たない「労災隠し」

* 安衛則第97条は、事業主に「労働者死傷病報告書」(休業4日以上の死傷災害は「遅滞なく」、4日未満は3か月分をまとめて)の届出を義務づけている。安衛法上の届出義務違反(同法第100条)・虚偽報告等(第120条)で送検された件数は、1991年―29・0、92年―66・0、93年―85・1、94年―58・1、95年―61・1件であるが、これも氷山の一角であろう。労働省は、届け出られた「労働者死傷病報告書」の内容と労災請求書類との突き合わせによって、「労災隠し」を厳しくチェックするというが、この報告書に、被災労働者本人等の確認欄がないことは、虚偽報告などをゆるす根本的原因となっている。

* しかし、いわゆる「労災隠し」はあとを絶っていない。例えば、1995年12月21日の日本医師会の労災・自賠責委員会の答申では、「労災隠し事案が増加傾向にあるということばかりではなく、その内容が企業ぐるみで行われている疑いのある事例が増加している」と指摘している。府県医師会の調査でも、トラブルを経験したことのある医療機関が大阪府で38.1%、広島県で30.2%。このとき労働基準監督署に通報したのは各々、3.9%、1.5%にすぎない。労働省は、このような実態を調査しようともせず、考慮に入れていない。

●事業主届出件数と労災認定件数の違い

* 実は、安全週間・労働衛生週間時に公表される労働災害・職業病統計は、いずれも上記の事業主の届出に基づくデータである。したがって、「労災隠し」事案のほか、退職後の発病・死亡事例なども含まれていない。例えば、1995年度の労災保険の葬祭料・葬祭給付受給者=すなわち死亡災害は4,002人で、同年の事業主の届出件数による死亡災害2,414人の1.7倍、4年連続の増加を示している。労働災害の発生件数というと、一般的には「休業4日以上の死傷災害件数」(1996年162,862人)が用いられるが、「労災保険新規受給者数」は1995年で645,025人である。

* 隠しようがない死亡・重大災害以外の労働災害―とりわけ職業病の場合は、事業主の理解が得られず(かえって妨害することもままある)、労災請求ができない、請求書類に必要な証明等をしてもらえないというケースが多い。この場合は、当然、事業主は死傷病報告書も届け出ていない。労働省は、脳・心臓疾患についてのみ請求件数と認定件数の双方を明らかにしているが、これによると、認定件数は請求件数の5分の1〜10分の1程度になっている。請求に至らないケースを含めると、認定件数自体が実際の発生件数の氷山の一角であることがわかる。

これだけ違う事業主届出と労災認定

* 職業病(業務上疾病)に関する統計は、労働者死傷病報告書に基づく「事業主届出件数」と「労災保険新規支給決定件数(労災認定件数)」の2つがあるが、後者については労働省は一般に公表していない。2つの数字は、職業病全体の合計値はあまり違わないものの、疾病の種類によって内容は大きく異なっている。なお、「事業主届出件数」は、休業4日以上、暦年、発生時点でカウント、「労災認定件数」は、休業の有無は問わない、年度、認定時点でカウント、という違いがある。

● 過労死・職業がんでは10数倍の労災認定件数

* 過労死を含む「その他業務に起因することの明らかな疾病」(労基則別表第1の2の分類で第9号)および「職業がん」(第7号)の2つについては、労災認定件数が事業主届出件数の10数倍にもなっている。過労死等は、労災請求に対する事業主の理解が得られにくい職業病の代表格と言えよう。職業がんについては、長期の潜伏期を経て退職後に発病することが多いことも理由のひとつと考えられる。予防対策を推進するうえで重要な労災認定件数が示されないことはどう考えてもおかしい。

* 「細菌、ウイルス等の病原体による疾病」(第6号)および振動障害、頸肩腕症候群(ケイワン)等の「身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病」(第3号)の2つについては、労災認定件数が事業主届出件数の数倍になっている。 後者についてのさらに細かい分類別のデータでみると、「振動障害」は10数倍〜20倍以上、「重激業務による運動器疾患と内蔵脱」が約4倍、「頸肩腕症候群等」が2〜3倍となっている(「非災害性腰痛」については次項)。 これらも、労災請求に対する事業主の理解が得られずトラブルが起こりやすい職業病である。

* 「じん肺および合併症」(第5号)では、事業主届出件数と労災認定件数がほぼ一致している。

● 届け出られているのに認定されていない腰痛

* 一方、「業務上の負傷に起因する疾病(災害性疾病)」(第1号)、「物理的因子による疾病」(第2号)、がんを除く「化学物質等による疾病」(第4号)では、逆転していて、事業主届出件数の方が労災認定件数を上回っている。 事業主届出件数によるデータによれば、「災害性疾病」の約8割がギックリ腰などの「災害性腰痛」である。「身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病」(第3号)のうちの「非災害性腰痛」についても同様の傾向を示している。 「休業4日以上の職業病」が発生したと事業主が届け出ているにもかかわらず、労災認定(おそらく請求も)されていないケースが、構造的に存在しているものと思われる。それらが労災請求・認定されていれば、職業病全体の合計値でも、労災認定件数の方が事業主届出件数を上回ることは容易に推定できる。

● 対策のためには全てのデータの公表を

* 労働災害・職業病の防止のためには、事業主からの届出件数を公表してすますのではなく、少なくとも入手可能なすべてのデータをオープンにして分析可能にすべきである。例えば、男女別のデータや労災請求件数、現在療養中の総件数、労災認定の業種・職種別内訳等々は明らかにされていない。そのうえで、「労災隠し」の実態についても、医療機関等への調査を実施すべきと考える。

アメリカ・スウェーデンの数十分の1

* 労働災害、とりわけ職業病統計の国際比較は容易ではなく、ILO等でもできていない。しかし、例えば、アメリカの労働統計局のデータによると、1994年の民間労働者の業務上の死亡災害は4,671件、1993年の職業病(疾病)が48万2千件。1993年のアメリカの年間平均民間雇用者総数が9千2百万人と日本の1993年の労災保険の適用労働者総数4千7百万人を母数として、各々の発生率を比較してみると、死亡災害はほぼ同じ発生率と言ってよいのに、職業病では25倍近くもアメリカの方が日本よりも高い発生率になっている。職業病のおよそ5分の3が「手根管症候群(CTS=Carpal Tunnel Syndrome)のような反復性外傷関連疾患(Repeated Trauma)であるという。

* このアメリカの統計も事業主の届出に基づくデータ(しかもサンプル調査 )のようであるが、アメリカの労働安全衛生(OSHA)法では、年間に起こった傷病の要約を毎年2月までに職場の目立つ場所に掲示することを規定しており、また、「労働災害を隠していたとなったら大変な罰を受けるので、報告漏れの内部告発などを使用者が恐れて、しっかり報告するようになり、それらが全体として手根管症候群の発症の急上昇につながったと考えられている」、などと言われている。

* スウェーデンでは、1989年の作業関連疾患(職業病)の請求件数は87,240件。そのうち、認定件数が54,053件(認定率85%)で、労働者総数に対する認定(発生)率は日本の60倍以上になっている(総労働者数は日本の10分の1弱)。認定件数の内訳は、腰痛・頸肩碗障害等40,144件(認定率86%)、皮膚障害2,496件(90%)、アスベスト肺等1,193件(86%)、社会心理的要因191件(85%)等となっている。

* 労働災害・職業病発生状況の把握(補償)に関して、日本には構造的欠陥があると思わざるを得ないのであるが、アメリカ、スウェーデンとも、以上のようなデータをインターネット等を通じて、広く国民に活用可能にしていることも指摘しておきたい。

職業病問題をめぐる最近のトピックス

●ストップ・ザ・ペイン(腰痛・ケイワン)

* 過労死が引き続き関心を集めているが、過労性疾患は脳・心臓疾患ばかりではなく、腰痛・頸肩腕障害(ケイワン)等もその代表である。ケイワンが日本で社会問題となったのはおよそ30年前、欧米ではここ10年前後のことで、反復過労傷害(RSI=Repetitive Strain Injuries=)、職業性過使用症候群(OOS=Occupational Overuse Syndrome)、反復性外傷障害(CTD=Cumulative Trauma Disorder)、作業関連上肢障害(WRULD=Work Related Upper Limb Disorders)等々と呼ばれて社会問題化している。コンピュータ(VDT作業)の蔓延やカンバン方式の導入をはじめとしたジャパナイゼーションもこれに拍車をかけ、腰痛(バック・ペイン)と並んで大問題となっている。

* アメリカの労働組合のナショナル・センターAFL-CIOは、今年5月から「ストップ・ザ・ペイン(STOP THE PAIN)」キャンペーンを開始している。腰痛やケイワンで毎年70万人の労働者が苦しめられているとして、インターネット上のホームページで様々な資料やツールも提供している(
http://www.aflcio.org/safety/)。イギリスのTUCも、RSIキャンペーンを展開中で(http://www.tuc.org.uk/vbuilding/tuc/)、毎年22万5千人の被災者が出ているだろうとしている。いずれも職業病に対する補償だけでなく、予防のために人間工学的なスタンダードを策定するように求めていることが特徴。

* 日本では、今年2月3日付けで労働省が22年ぶりに認定基準を見直し、基発第65号「上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準」を策定した。問題点も多いが、対象疾病・対象業務を拡大し、脳・心臓疾患の認定基準の見直しと同様に、認定件数が増加することを見込んでいるという。

* 私たちが昨年11月15-16日に全国6か所で実施した「VDT労働ホットライン」でもケイワンをはじめ多様な健康障害の訴えが寄せられている(50件の相談のうち5分の1の方が現に眼科・整形外科等で療養を受けており、医療機関を紹介したケースも4分の1にのぼっている)。認定が困難かつ時間がかかり、早期に労災を打ち切るというこれまでの労働省の姿勢が、腰痛・ケイワン等の労災請求を抑制していたと言ってよい。認定基準改正を機に新たな事例を掘り越して、そのような姿勢を改めさせ、予防対策の充実を図っていく必要がある。

● 孤立無援のアスベスト使用大国 : 日本

* 今年1月1日からフランスが発がん物質アスベストの禁止に踏み切った。ヨーロッパでは、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、オランダ、ドイツ、スイス、イタリアに次ぐ措置で、次いでイギリスも、来年にも禁止に踏み切るという予測が行われている。フランスでは、「第2のエイズ」として焦点化し、国立衛生医学研究所のレポートでも「アスベスト曝露に起因する死亡は1,950件(悪性中皮腫750件、肺がん1,000件)」と推計されたが、イギリスでも労働組合等が毎年3,000人以上が死亡していると訴えている。そのフランスの年間アスベスト使用量が約5.5万トン、イギリスでは1万トンをすでに割っている。1970年代に約80万トンと世界最大の使用量を誇ったアメリカもすでに数年前の時点で年間3万トンを割っている。パリに本部を置いていた国際石綿協会(AIA)は、フランスでのアスベスト禁止により撤退を余儀なくされ、アスベスト輸出国であるカナダのモントリオールに本部を移して、「管理して使用すれば安全」という巻き返しのキャンペーンに躍起になっている。

* それに対して、ピーク時で約35万トンも使用し、1995年でも年間約19万トンを使用し続けている日本は「孤立無援のアスベスト使用大国」となっている。カナダ・ケベック州政府は最近、「最後の頼みの綱・日本」の動向を調査していたが、統計に現われる被害が少ないこと、マスコミで騒がれていないことにほっとしていたという状況である。

* 日本でのアスベストによる健康被害―とくに肺がん・悪性中皮腫の掘り起こしは、私たちの取り組みによってようやく年20件台の認定件数になってきたものの、きわめて限定的・局地的であり、実態は闇に埋もれたままと言ってよい。関係国際会議に出席すると他国の研究者は、「先進国で現在輸入量が一番多いのに、諸外国と比較して一桁以上少ないので、最初から日本のデータは信じられないというのが共通した先入観」という状況なのである。今年7月13-15日に神奈川労災職業病センター等が開設した「じん肺・石綿健康被害電話相談」には関東全域から100件もの相談が寄せられた。 * 1972年に製造・使用等が禁止されたベンジジンによって現在でも膀胱がん等が発生している。使用禁止を急ぐとともに長期間の追跡が不可欠である。なお、今年3月27日に、離職後の健康管理を促進するための健康管理手帳の交付対象にアスベスト製造・取り扱い業務が追加されており、この周知・活用と同制度の改善も訴えていきたい。

●じん肺合併肺がん認定基準の見直し

* 職業がんの労災認定件数の内訳で最も数の多い「その他のがん」は、じん肺被災者に合併した肺がんが中心だと言われている。現在、労働省は、通達(昭和53年11月2日付け基発第608号)によって、「じん肺管理区分4(相当)のじん肺被災者」に合併した肺がんについてのみ労災認定の対象としている。じん肺被災者に肺がんが多発することは疫学的にも立証されており、「管理4」に限定する根拠は全くないことから、管理3以下のじん肺に合併した肺がんの労災認定が、最高裁に係属中の1件を含め行政訴訟が各地で提起されている。最近では、「医療実践上の不利益」を理由に被災者側を救済する判決が広島地裁(1996.3.26)、札幌地裁(1997.7.3)と続いている。

* じん肺は様々な種類の粉じんによって発生するが、被災者数が多い珪肺の原因物質は結晶質シリカ(二酸化珪素)である(金属鉱山、隧道、石工、窯業、鋳造、ガラス工等々)。この結晶質シリカについて、国際がん研究機関(IARC)が昨年10月、グループ1=ヒトに対して発がん性があると認定した(それまではグループ2A=ヒトに対して「おそらく」発がん性あり、と区分していた)。裁判で国・労働省側が主張してきた「発がん性は確定していない」という主張は崩れ去ったわけである。イギリスでは、1992年の時点ですでに、「結晶質シリカに曝露し、珪肺の所見のある労働者に発生した原発肺がん」を労災認定の対象として職業病リストに掲載していることも判明した。

* 労働省は、早急に係争中の事件の解決を図るとともに、イギリスと同様の職業病リストの改正、結晶質シリカをアスベスト等と同様発がん物質として、健康管理手帳の交付対象にするなど安衛法―特化則上の措置を講じるべきであり、さらに肺がんをじん肺の合併症に含めることが必要である。これまで労災認定の対象にならないとあきらめてきた管理3以下のじん肺に合併した肺がん事例の掘り起こしを進めたい。

● その他の問題

自殺に関する相談は増えてきている。公務員の認定事例はいくつか出てきているものの、民間労働者の労災認定は少ない。1984年の上野地下駅設計業務に従事していた労働者の反応性うつ病と自殺未遂の労災認定以降、「心因性精神障害」(昭和59年2月14日付け事務連絡第5号)としての労災認定はごくわずかである。労働省が自殺の認定基準の検討を行っているという話もある。ポジティブ・メンタルヘルスを含めた職場での実効性のあるストレス対策も求められている。

化学物質に関しては、新たに変異原性や発がん性が確認される物質が毎年増えてきている。さらに、フロン代替物質として日本から輸入した2-ブルモプロパンによって韓国で集団被害が発生したり、あらためてダイオキシンが問題になっているように、これまで重視されてこなかった生殖毒性、神経毒性等々が問題になってきている。職場での対策確立と新たな事例のフォローが重要である。

感染症等に関しては、発生するときは局地的に大量に発生することがあることが知られている。職場でのO-157やC型肝炎、MRSA、エイズ等の問題にも関心を払っていく必要がある。

* 労働省は、今年3月31日付けで(基発第215号)、症状固定(労災保険給付打ち切り)後のアフターケアの対象に、サリン中毒、外傷による末梢神経損傷等を追加した。対象となる後遺症状は各々、心的外傷後ストレス障害、RSD(反射性交感神経委縮症。カウザルギーを含む)等であるが、本来保険給付として支給されるべきものが、この措置によってアフターケアの対象とされ、不当な労災打ち切りが横行しないように監視していく必要がある。

振動障害は、労働省の「長期療養者の適正給付管理」=労災保険の早期打ち切り対策の焦点となってきた。昨年1月25日付けで適正給付管理対策通達が見直され(基発第35号)、同年5月11日付けで社会復帰援護制度の拡充(基発第311号)が行われたが、その運用状況についての監視が必要。また、振動障害は、事業主届出件数の10数倍〜20倍以上もの労災認定件数があり、1990年以降再び増加傾向をみせており、振動障害がけっして過去の職業病ではないことを示している。

じん肺も1993年から3年連続増加傾向を見せている。じん肺に関しては、前述の合併肺がん問題以外にも、労働省が専門家による「じん肺診査ハンドブック」、「標準エックス線写真フィルム」の改訂作業等を進めている最中である。その内容はいまだ明らかにされていないが、検討経過を公開させていく必要がある。

国民の意識と乖離していないか

* 労働省は、1995年度の労働基準行政運営方針において、「労災補償制度の運用面をみると、国民の意識との間に乖離が生じているもの、社会生活環境の変化に対応しきれていないもの等の問題もみられる一方で、近年、ますますこれらに対する行政の対応が社会的に大きく注目されるようになってきており、このような状況を放置すれば、本制度に対する国民の信頼を損なうことも懸念される」として、「幅広く労災補償制度の運用等について問題点の整理、検討を行い、必要な見直しを行う」としてきた。具体的事例では、例えば、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件、新幹線のぞみ号車内刺殺事件、エスビー食品陸上部事件等々の社会的に注目された事件についての救済事例が積み重ねられてきているものの、認定基準自体を改正したのは、「非災害性の脳・心臓疾患」(2回の改正)、「単身赴任者の土帰月来型通勤途上災害」と「上肢障害」についてだけといってよい。認定事例数だけは増えても、かえって基準がわかりにくくなっているという側面も否めない。

* 14年ぶりに不当な一律最長1年間の期間制限を撤廃した「労災保険におけるはり・きゅう施術の取り扱い」見直しも肝心なことは通達(平成8年2月23日付け基発第79号)ではなく「部内限」の事務連絡で指示し、画期的な労災保険の時効の取り扱いの見直し(後続請求の取り扱い)に関しても「部内限」の事務連絡(平成8年11月19日付け)を発出しただけで公表も拒んでいる。認定基準の改正等でも細部事項は通達本文には書かず、「部内限」通達、事務連絡で示すというやり方である。これらの「部内限」事務連絡等も、1994年10月1日に施行された行政手続法上、「公にしておかなければならない」とされる「審査基準」に該当するというべきである。このような体質の改善は、国民とマスコミの不断のチェックなしには期待できない。

* 1996年5月に労災保険法が改正され、同年7月1日から施行された(平成8年6月26日付け基発第467号等)。今回の改正内容は、@審査請求から3か月を経過しても決定がなされない場合には再審査請求をできるようにする、A審査期間を短縮するために労働保険審査会の審査体制を拡充する、というものであり、審査請求の処理期間は平均して1年以上、再審査請求の場合は2年9か月もかかっていた。改正法施行後、たしかに審査官段階での手続は迅速化されているものの、逆に審査の内容が形式的になり、かえって2段階の審査制度の形骸化を促進するのではないという懸念もあるのため、実情の把握が必要である。



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