2-BP(Japanese)



2-BP(Japanese)

フロン代替物質に生殖毒性



韓国からの情報で労働省が緊急措置

新聞報道(10月23日付け読売新聞夕刊等)されたように、オゾン層を破壊するフロンの代替品として半導体の洗浄などに使用されている有機溶剤に、生殖機能障害等を引き起こす毒性があることが、日本と韓国の共同研究で明らかになった。

特定のフロン等がオゾン層を破壊する恐れがあるということで国際的な調査研究が行われた結果、1985年に「オゾン層保護のためのウィーン条約」が、1987年には「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択され、国際的な規制が進められてきた。モントリオール議定書に基づいて、日本でも1995年末までに、クロロフルオロカーボン(CFC)、1,1,1,-トリクロロエタンなどの生産が全廃された。このため、さまざまなフロン代替品が導入されているが、それらの毒性は必ずしも十分には明らかになっていない。

今回問題となったのは、2-ブロモプロパン(2-BP、別名・イソプロピルブロマイド)。用途としては、医薬品、農薬、感光剤の中間体がこれまで知られていたが、近年になって、フロンの代替品として電子部品工場での洗浄剤等として使われるようになっていた。2-BPの有害性については、従来、刺激性(眼、肺、皮膚等)、麻酔作用、肝臓・腎臓・心臓障害等に関しては知られていたが、生殖毒性・血液毒性等については、まったく知られていなかった。文献的にも生殖毒性の報告はなく、MSDS(化学物質等安全データシート)にも記載されていなかった。

「地球にやさしい」、「安全性が高い」、「有機溶剤中毒予防規則や特定化学物質等障害予防規則等を含めた労働安全衛生法などの法令にも該当しない」と宣伝されていた物質が、実は人体に大きな有害性を持っていた。

「確かに、中間原料として利用されている間は『無害』だったが、電子部品の洗浄剤として使用されるようになって、労働者が気化ガスを大量に吸引する工程が生じ、潜んでいた毒性が急に頭をもたげてきたというわけだ」(読売新聞)。

韓国電子工場での集団中毒発生

昨(1995)年7月、日本から輸入した2-BPを主成分とする洗浄剤を使用していた韓国の電子部品工場で、女子労働者の月経停止・血小板減少、男子労働者の精子減少等の健康障害の集団発生が明るみに出た。同年10月に、韓国産業安全公団産業保健研究院の疫学調査結果がまとめられ、2-BPが原因物質として疑われた。韓国産業安全公団からこれらの情報の提供を受けた日本の労働省は、1995年12月12日付け労働基準局安全衛生部化学物質調査課長名の事務連絡「2-ブロモプロパンによる健康障害予防のための緊急措置について」を発し、日本でも使用されている2-BPについて関係業界等に対して緊急措置を促した。他方で、韓国産業安全公団産業保健研究院と名古屋大学・竹内康浩氏、労働省産業医学総合研究所・久永直見氏らによる共同研究が開始された。

主に労働省事務連絡に添付された「化学物質調査課がは握した2-ブロモポロパンに関連する健康障害に関する情報」によって、韓国における集団健康障害発生の状況を概括してみる。

集団健康障害が発生したのは、韓国慶尚南道ヤンサン郡所在のLG電子部品潟с塔Tン工場である(事務連絡等には企業名は公表されていない)。この工場は1974年の設立で、男子598名、女子788名の合計1,386名の労働者が従事し、スイッチ、ボリュウム、タクトスイッチ、VCR DRUM、VCRモーター等の電子部品を製造している。

この工場のタクトスイッチ部品組立工程(洗浄→加工→組立)では、1994年2月以前まではフロン113を使用していたが、1994年2月以後からは、SPG-6ARとSolvent 5200との混合液(混合比 1:181)を浸漬液として使用するように切り替えられた。主成分はいずれも2-BPであり、その比率は、SPG-6ARで60.7%、Solvent 5200で99.0%、混合浸漬液で97.4%であった。

関連作業に従事していた労働者は、男子8名、女子25名の合わせて33名(別掲翻訳記事にあるように、他に、問題が明るみに出る前に健康をこわして退職した者が2名いるようだ)。

事務連絡では、「浸漬液に過多または集団的にばく露された可能性」として、以下の事情をあげている。

@ 浸漬液を使用した浸漬機のうち、1台については、1994年5月30日から6か月、別の1台については1994年8月18日から約3か月半の間、それぞれ、局所排気装置が設置(1994年11月28日に設置)されないままで、簡易式浸漬容器を使用して浸漬液の供給、混合、移動等に際して、労働者が、浸漬液を直接取り扱った。

A 1994年11月28日から1995年7月23日までは、浸漬機に局所排気装置は設置されてあったが、浸漬液自動注入装置が設置されていなかったので、労働者が手で他の容器を利用して浸漬液を供給、混合した。

B 以上のように、一定期間の間、適切な局所排気装置や自動注入装置無しで使用した簡易式浸漬容器で発生した高濃度の浸漬液蒸気成分が、タクトスイッチ部品製造室の空調設備より作業場全体に循環したので、タクトスイッチ部品製造室内で作業する労働者全体が浸漬液成分にばく露されたと判断される。

C また、労働者および管理者が、浸漬液の有害性を認識しておらず、労働者が作業中に浸漬容器内に上体を入れるとか、浸漬液を取り扱う際に保護具(防毒マスク、送気マスク等)を使用しないで取り扱ったので、過多にばく露される機会があったと推定される。

前述のとおり、韓国産業安全公団産業保健研究院により疫学調査が行われたが、面接調査の結果では、タクトスイッチ部品製造チームの女子労働者だけに月経中断症状発生が出ていることが確認された。また、精密健康診断の結果では、タクトスイッチ部品製造チームの労働者33名(男子8名および女子25名)の中で、女子17名(68%)に卵巣機能低下症が、男子6名(75%)に精子形成機能低下症が、それぞれ現われ、さらに、これらの男女労働者の中で7名(男子1名および女子6名)については骨髄機能低下が同時に現われた。一方、対象群として観察したタクトスイッチ樹脂製造チームおよび一般スイッチ製造チーム83名(男子16名、女子67名。浸漬液へのばく露のない群)の中には生殖機能および骨髄機能低下等は、現われなかった。したがって、この電子部品製造工場で働く労働者の中で、タクトスイッチ部品製造チームのみに生殖機能低下、骨髄機能低下等の症状が認められることが明らかとなった。

タクトスイッチ部品組立室の2-BPの濃度は、局所排気装置稼働時には9〜19ppmであったが、労働者が暴露される可能性がある浸漬槽の浸漬液上1mの濃度は2-BP 4,140ppmが検出されている。調査報告書では、これらの結果から、原因物質として2-BPを推定しているが、その生殖毒性等は世界的に知られておらず、正確な原因物質、代謝、発病メカニズムおよび健康障害等の解明の必要性を指摘している。

日韓共同研究で生殖毒性等確認

韓国で健康障害を発生させた溶剤は日本から輸出されたもので、別掲翻訳記事にもあるように、被災者たちは、「日本では問題が起きていない」ということでたいへん苦しめられたようだ。

しかし、日本の労働省では、「(韓国からの)情報に基づき労働省で実施した調査の結果、わが国においても、これらと同種の洗浄剤を製造し、または取り扱っている事業場があることが明らかとなった」。「今後この生殖毒性等に関する調査研究が行われる必要があるが、今回の問題の重要性を踏まえて、2-BPによる健康障害予防のための緊急措置を定めた」、ということである。「なお、本緊急措置は、2-BP等の生殖毒性等に関する有害性が判明するまでの暫定的な措置である」、としている(以上、事務連絡から)。

この緊急措置は、2-BPまたは2-BPを重量で1パーセントを超えて含有する物(2BP等)の製造、取扱事業場および2-BP等を譲渡、提供する者を対象として、別掲(省略)のような措置をとるよう指導している。なお、緊急措置を要請した労働省化学物質調査課長名の事務連絡は、都道府県労働基準局労働衛生主務課長に宛ててと同時に、(社)日本化学工業協会、(社)日本化学工業品輸入協会、化成品工業協会、農薬工業会、日本製薬団体連合会、日本産業洗浄協議会、(社)日本化学物質安全・情報センター宛てにも通知されている。

前述の日本と韓国の共同研究は、1995年末から行われ、その結果が、本(1996)年9月にスウェーデンのストックホルムで開催された国際労働衛生会議や、10月に仙台で開かれた日本産業衛生学会で発表され、また、「労働の科学」10月号等にも論文が掲載された。

それによると、雄のラットによる2-BP 3,000ppm、1,00ppm、300ppm、1日8時間、9週間暴露実験を行った結果は、体重当たり精巣重量、精子数、活動精子率は、量依存的に著しく減少した。活動精子率については、1,000ppm以上の暴露群ではゼロで、動いている精子はまったく認められなかった。赤血球、白血球数、血小板数も、量依存的に有意に減少した。9〜10日暴露で仮死状態となったため暴露を中止した3,000ppmm群では、著しく減少した体重は一定回復、血液所見でも一定の回復がみられたが、活動精子率の回復はみられなかった、などであった。

「これらの結果は、2-BPが精巣に対して特異的に強い毒性を有すること、造血機能も障害すること(比較的低濃度暴露でも著しい雄の生殖器障害及び造血器障害が観察された)、いったん高濃度暴露を受けて障害されると精巣機能は回復しにくいことを示した。韓国の中毒例では女性労働者の月経停止など生殖機能障害が認められており、動物実験で雌の生殖機能への影響は現在検討中である。」

代替品の代替品へシフト

この研究結果を待たずに、1995年末に労働省事務連絡が出された時点で、日本では、フロン代替洗浄剤等としての2-BPの使用は激減してきているようだが、実態は必ずしも明らかではない。

労働省事務連絡自体は、「労働安全衛生通信」(中災防)等の市販の関係雑誌にも掲載されているが、公表に当たって削除している一文がある。すなわち、「また、既に本省においては握している関係事業場は、別添3(部内限りとすること。)のとおりであるが、これら以外の事業場をは握した場合には、当課まで連絡されたい」という都道府県労働基準局労働衛生主務課長への指示である。

「労働現場にわかりやすいかたちで情報を流したいので、メーカー、末端での製品名を教えてもらいたい。把握しているメーカーからの出荷先リストなり使用事業場のリストを公表してもらいたい」というわれわれの要請に対して、労働省からは今日までのところ、市販の刊行物の「イソプロピルブロマイド(2-BPの別名)」に関する情報のコピーが送られてきただけである。そこには、「製造業者」―東ソー、マナック、「生産量」―平成5年 100トン(推定)、「価格」―平成6年9月 kg当 500〜700円〔ドラム缶(250kg入)〕と記載されている。

2-BPは、フランス、イスラエル、中国、日本で生産されており、日本の原体製造メーカー上記2社の他に、原体輸入会社が3社あり、国内での使用量は新聞報道等のように、平成5年で約1,000トン程度のようだ。地方の労働基準局に個別に問い合わせてみると、大阪局管内は「なし」、神奈川局管内は「ある」などと答えているが(リスト掲載事業場が「ある」のは、神奈川の他、岩手、宮城、埼玉、兵庫)、いずれにしても2-BP含有洗浄剤使用事業場のリストは公表していない。労働省リストに掲載されているのは10数社のようだが、労働省自身も指示しているとおり、リストから漏れている使用事業所もあるようだ。

また、国内での健康被害の報告はないとされているが、使用状況については、緊急措置で示したような措置がとられていなかったところもかなりあるようだ。「万一、韓国からの情報がなかったら、間違いなく日本でも被害が広がっていた」(読売新聞、労働省担当者の弁)。

メーカーの方がはるかに対応がよい。電子関係のフロン・塩素系溶剤代替洗浄剤として2-BPを主成分とした製品(SC-51シリーズ)を製造・販売しているディップソール社では、問い合せに対して、MSDS等の関係資料を即座に提供してくれた。

同社では、今年早々に、顧客に対して、韓国での問題を知らせると同時に、「上記浸漬液は弊社の製品ではありませんが、SC-51タイプの洗浄液はイソプロピルブロマイド(2-BPの別名)を主成分とする洗浄剤ですので同様の生殖毒性、血液毒性等を有するおそれがあります。より安全性の高いSC-52タイプ(主成分は n-プロピルブロマイド(1-ブロモプロパンの別名)のご使用をお薦めします」という案内を発送したという。なお、2-BPについては、製品の販売を開始して間もない1994年3月に、変異原性試験(復帰突然変異試験)でも「陽性」との結果を得ているという。

有害性調査と情報公開にメスを

同社の話によると、「2-BPは現在は出ていない。溶剤としては完全に1-BPに移行している」という。

この1-BPの方は、変異原性については、復帰突然変異試験で「陰性」、染色体変異試験で「弱い陽性」、小核試験で「陰性」という結果だったというが、「@SC-51(2-BP主成分の商品名)とSC-52(1-BP主成分の商品名)の変異原性(復帰突然変異試験)は、突然変異コロニー数がSC-52ではほとんど増加しないのに対し、SC-51では条件によって30倍に増加することもあり、SC-52の方がSC-51より安全と判断される。A有害性については、生殖毒性、血液毒性等を含めより充実させるために試験、データ作成を継続して行っている。」、と紹介(宣伝)されている。

1-BP製品としては、ディップソール社のSC-52シリーズの他に、東ソーのNFSシリーズ、アルベール社(アメリカ、輸入代理店極東物産)のアブゾールVG等の商品があるという。 少なくとも日本においては、2-BPから1-BPという流れができているようだが、この1-BPについても、生殖毒性、血液毒性等の有害性はいまだ未知であるということだろう。 この間の労働省の化学物質等の有害性調査は、発がん性に重点が置かれてきた。今回のケースがきっかけとなって、労働省では、従来のがん原性試験に加えて、来年度から新たに、生殖毒性、神経毒性試験も実施していくなどの方針を固めた。

フロン代替物質だけでも2-BP、1-BP以外にも様々な物質が市場に出回っており、潜在した有害性を持っている物質もまだ存在すると考えられる。有害性調査のあり方と同時に、国内および海外に対する企業や行政の情報公開のあり方が今後一層問われることになろう。

片岡明彦(関西労働者安全センター事務局次長
古谷杉郎(全国労働安全衛生センター連絡会議事務局長
「安全センター情報」1996年12月号10〜14頁




韓国の被害者の証言

苦痛を訴え入院にもかかわらず会社は「仕事だけしっかりしろ」

韓国・LG電子部品蒲L機溶剤中毒事件被害労働者チャ・ミジャンさんの証言



従前のフロン溶液は少し青みを帯びた無臭の溶剤だったが、変更されたソルベント浸漬液は赤い色を帯び、揮発悪臭がひどかった。近くでは目が痛くて開けておられず、呼吸が苦しく、頭痛、めまいなどの自覚症状があった。とくに、作業場内に設置された洗浄組内の作業が一日に何回も反復される場合、頭痛とめまいで勤務中ひどく苦しかった。

同僚が、自分たちが感じる苦痛に愚痴をこぼし、1994年3月頃には管理者に建議し、訴えようという意見があり、面談を要求したが拒否されたので、しかたがなく昼間労働者が勤務中に作業を中断して管理室に押しかけた。

現在もいるある管理者は、「日本でも何の問題もなく使ってきたから心配するな」、「溶剤が変わったから気分的なものだろう」、「もし何か問題があったら私がすべて責任をもってやる」と言い、また、別の管理者は、「それはそれだ。いまは勤務時間なんだからデモすることもないだろう。どうしたものか」と言い、必ず主導者がいるはずだからと、主導者を探せと指示を出した。みんな主導者というレッテルを貼られるのが怖くて、その後はちゃんとした建議や訴えることさえもできない雰囲気だった。

臭覚の麻痺のせいで、どうやらこうやら勤務していたが、個人的に管理者に苦痛を訴えたのは1〜2回ではなかったが、会社は、「日本ではそのまま使っていた」という反応と、大切に使えとしか言わなかった。工場長の指示ということで、ソルベント溶液が、同じ量の輸入洋酒よりもはるかに値が高いだけでなく、揮発性が高いので大切に使えということだった。 1994年の夏は、連日、気象庁が最高の記録を更新する蒸し暑い日が続いた。その中、生産性を上げるといって、密閉した空間で働いた。換気施設とエアコンは故障して稼働せず、蒸し風呂のような室内温度だったから、今日の集団中毒事態は火を見るより明らかなことだった。

1994年の秋と冬に、2名の労働者が、プサンにあるテドン病院の貧血専門医で治療を受けた結果、重症の再生不良性貧血と類似した症状で会社を辞めた。しかし、この時はまだ全部署の労働者に該当する集団発病という事実がわからず、個人の疾病としていたため、1日平均11〜13時間の勤務に加え、徹夜特勤をこなしていた。

このように勤務しながら1年4か月が過ぎた1995年7月7日、5名の同僚が偶然に始まった生理中断の問題が全体的な性格を帯びてきたことが明らかになり、労働組合と会社に報告された。

調べてみると、1994年の夏以降、ほとんどの同僚が大なり小なり何らかの疾病に悩んでいることが明らかになった。生理中断と頭痛、めまい、持続的な風邪、腰痛と神経痛、末梢神経の麻痺などに加え、全身に痣ができる。はなはだしくは鼓膜が破れるなど、ひとつやふたつの症状ではなかった。

それでも病院では、過労だろうかとか、異常はないとか、原因はわからないと繰り返すだけで、ひとりで悩み苦しむしかなく、そうこうするうちに体は弱り、日常生活にも多くの支障をきたすようになった。

1995年8月1日には、2名の労働者が生命の危篤という重症再生不良性貧血の症状で入院するという渦中においても、会社は、「すべてまかせろ。何の心配もするな。仕事だけしっかりやれ」と叱責し、相変わらず特勤と残業、徹夜を強制された。

私たち35名の被害労働者のうち、相対的に症状が軽く回復に向かっている被害者に、生計と雇用の安定などを祟りに、会社は様々な粗末な懐柔と脅迫などをしかけ、22名が合意をした。残る13名の被害者が会社と厳しい闘争の道を歩んでいる。

私たち被害者の発病事項は、「史上初有」という特徴があり、どんな臨床経験や動物実験を通じてみても、その結果と原因はわからなかったが、数回にわたるすべての検査の中心も血液と生殖器の疾病に限定されてきた。

それだけでなく、長期間の生理中断による閉経期疾患である骨多孔症も発見されたにもかかわらず、会社は、正常に回復しているなどの報道資料とともに、中央病院担当博士の所見である不妊に関しては、信ずるに値しないという反応を一貫していた。

はなはだしくは、問い合わせに来た保護者に全治2週間の傷を負わせ、某被害労働者は在職社員であるのに、会社は彼の出入りを統制し、悪口を浴びせるなど、盗人猛々しい態度に終始している。前代未聞のソルベント集団中毒事件の被害を、血液と生殖器疾患としてのみ限定してきた会社の断定は、どんな根拠に基づいているものなのかもはなはだ疑問だ。

現在、私たち被害者の自覚症状は実に広範囲で深刻だ。退行性関節炎、脳機能の減退、記憶力の減退、眼疾患、頭痛、めまい、皮膚異常疾患、抹消神経炎、骨多孔症、手足のしびれ、筋肉痛などの症状に対し、検診さえもちゃんと受けられない状態で、実に苦しく悔しく、心の病ばかり深まっている。

死にそうな頭痛と呼吸混乱、めまいなどの訴えに、ただの1回でも耳を傾けてくれたなら、安全教育と保護具でもちゃんと具備されていたら、年1回の検診でもちゃんと行われていたなら、今日のような不幸で恥ずかしいソルベント集団中毒事件は発生しなかっただろう。

翻訳・平田淳子
1996年3月19日付け週刊労働者新聞(韓国)



ホームページトピックス「安全センター情報」目次賛助会員・定期購読のお願い住所・連絡先
このページに関する関するお問い合わせは joshrc@jca.ax.apc.org またはココ