急がれる人権保障システムの確立


人権フォーラム21事務局長 山 崎 公 士
(新潟大学法学部教授)

  人権擁護推進審議会での救済施策の審議が加速しつつあり、今年の暮れには中間まとめが、また来年夏頃には最終最終答申が出される情勢にある。人権フォーラム21の規制・救済部会は昨年1月以降毎月のように会合し、21世紀のあるべき人権保障システム(人権法制・行政・施策等)について総合的に政策提言するため、精力的に調査・研究活動を展開してきた。今年1月には、規制・救済部会に8名からなる作業部会を設け、政策提言の原案づくりに向けて実務的・集中的な検討を始めた。作業部会での検討経過は規制・救済部会で逐次報告し、多様な人びとによる討議を経て、人権フォーラム21の政策提言に結びつける予定である。

  作業部会は3月18日の大阪での規制・救済部会後の第1回会合で今後の検討手順を決め、4月7〜9日にはまだ雪深い奥只見郷で第1回作業部会合宿を行なった。これまでの集中的討議の結果、I.日本の人権状況の現状と問題点(現状)、II.日本の人権政策を考えるさいの原則(原則)、III.日本の人権政策に関する具体的提言(提言)、を提言骨子(案)とするととした。原則に関しては、(1)人権を多元的な共生社会の生活ルールと位置づけ、(2)人権侵害・差別は社会的ルールからの逸脱(社会悪)であり、法律によって規制されなければならず、(3)国家権力の私人に対する侵害ならびに私人間の侵害を含む、あらゆる生活領域をカバーする人権保障システムを確立する必要性を確認した。このため、人権保障システムは、(1)社会的弱者を実質的に保護し、社会正義を実現するものでなければならず、(2)人権侵害・差別を受けた者(当事者)が安価で、簡単かつ迅速に救済を受けるしくみが必要であり、(3)こうしたしくみは、当事者本人やこれを支援する者の視点を尊重する当事者加型であるべきこと、などが指摘された。4月9日の石原都知事の「三国人」発言は、日本が加入している人種差別撤廃条約第4条(c)項の「国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は煽動することを認めない」締約国の義務に明らかに抵触する、地方政府の長による人種差別発言である。しかし、この発言を支持する市民がいることも事実である。あらゆる人権侵害・差別は社会悪であることを法律で明確に規定されていれば、公人によるこうした発言は一掃されるであろう。この意味でも、上記の原則を踏まえた人権保障システムを早急に確立しなければならない。

(4月15日)


 

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