国連における「発展の権利」の動向
(文:横国大院修士課程 川島聡)


○はじめに
1.「発展の権利」(Right to Development)の具体的内容はいまだに生成途上にある。
2.だが、1986年には「発展の権利に関する宣言」(A/RES/41/128)が国連総会で採択され、今日においても、「発展の権利」の明確化が着実に進められている。
3.そこで、「発展の権利」の今日的動向について、「発展の権利」に関する各作業部会の活動を中心に、歴史的展開を踏まえつつ簡単に紹介する。
4.なお、本文では、次のような「各作業部会の活動時期による時代区分」に基づいて、「発展の権利」の動向が概観される。


○各作業部会の活動時期による時代区分
1.第1次作業部会(1981-1989)
   :発展の権利に関する宣言の起草
2.第2次作業部会(1993-1996)
   :発展の権利に関する宣言における障壁の明確化
3.政府間専門家作業部会(1996-1997)
   :発展の権利に関する宣言を実施するための戦略の練り上げ
4.参加自由の作業部会(1998-)
   :進歩状況の監視とレビュー


○本文:作業部会の歴史的展開と今日的動向

1.発展の権利に関する第1次作業部会(1981―1989年)

(1)1981年3月11日の人権委員会決議36(XXXVII)により「発展の権利に関する第1次作業部会」(First Working Group on the Right to Development)が設置された。そして、この第1次作業部会は、衡平な地理的配分を考慮して、人権委員会議長によって任命された15人の政府代表から構成された。

(2)第1次作業部会の主な任務は、@とりわけ途上国における人権保障を妨げる障壁に注意を払いつつ、発展の権利の範囲および内容を研究すること、Aあらゆる国家が種々の国際文書に定められている経済的、社会的および文化的権利を実現するための最も実効的な手段を研究すること、ならびに、B発展の権利の実施および宣言起草のために、具体的な提案を含む報告書を提出すること、であった。

(3)1981年から1989年までに、第1次作業部会は計12回の会期を開いた。そして、1984年に開催された第8会期および第9会期において、報告書(E/CN.4/1985/11)が採択された。その報告書は、経済社会理事会を通じて、総会に提出され、1986年12月4日に国連総会は「発展の権利に関する宣言」(A/RES/41/128)を採択することになった。

(4)1986年3月10日の人権委員会決議1986/16の要請に従って、1987年に、第1次作業部会は発展の権利を促進するための具体的措置に関する報告書および提案を準備するために第10会期を開催した。

(5)1989年に開催された第12会期において、第1次作業部会は、政府、国連機関、専門機関、他の政府間機関および非政府機関から受け取った作業部会報告書(E/CN.4/1987/10)に関する回答を分析しかつ研究するよう指示された。そして、同会期において、発展の権利を実施する際には、傷つきやすいグループ(vulnerable groups)に特別の注意が払われるべきであり、また、とりわけ地方、地域および国内レベルにおける女性の参加について発展の権利の内容を充実させるために、緊急かつ精力的な努力がなされるべきである、と第1次作業部会は勧告した。


2.発展の権利に関する第2次作業部会(1993―1996年)

(1)1993年3月4日の人権委員会決議1993/22により「発展の権利に関する第2次作業部会」(Second Working Group on the Right to Development)が設置された。この第2次作業部会は、発展の権利の実現および実施を妨げる障壁を明確化し、かつ、発展の権利の実現に向けた手段と方法を勧告するという任務をおった。

(2)第2次作業部会は3年の任期において計5回の会期を開催した。これらの会期において、第2次作業部会は、国内的および国際的レベルにおいて発展の権利の実現を妨げている障壁のリストを明確化した。第2次作業部会は、その第5会期において、当該作業部会が会期内にその任務の全ての側面を分析することが不可能であったことを指摘した。また、第2次作業部会は、発展に関する統合的かつ多元的な概念を実施するための政策および計画を開発する際に、政府を支援するための勧告の形成に向けて、作業過程は継続されるべきであるという所信を表明した。


3.政府間専門家作業部会(1996−1997年)

(1)1996年4月11日の人権委員会決議1996/15により「政府間専門家作業部会」(Intergovernmental working group of experts)が設置された。この政府間専門家作業部会は、第2次作業部会の成果を想起し、また、ウィーン世界人権会議、国連環境開発会議、国連人口開発会議、社会開発世界サミットおよび第4回世界女性会議の成果も想起して、発展の権利の統合的かつ多元的側面(its integrated and multidimentional aspects)を考慮しつつ、発展の権利の実施および促進のための戦略を練り上げるという任務をおった。

(2)政府間専門家作業部会は、1996年11月4日から15日に第1回会期を開き、また、1997年9月29日から10月10日に第2回会期を開いた。政府間専門家作業部会のメンバーは次のとおりである。

1. Mr. Gudmunder Alfredsson (アイスランド)
2. Mr. Krzysztof Drzewicki (ポーランド):議長
3. Ms. Margarita Escobar Lopez (エル・サルバドル)
4. Mr. Antonio Garcia Revilla (ペルー)
5. Mr. Martin Khor Kok Peng (マレーシア)
6. Mrs. Therese Pujolle (フランス)
7. Mr. Shaheed M. Rajie (南アフリカ)
8. Mr. Vladlen Stefanov (ブルガリア)
9. Mr. Cheikh Tidiane Thiam (セネガル)
10. Mr. Bozorgmehr Ziaran (イラン・イスラム共和国)


4.発展の権利に関する参加自由の作業部会(1998年―)

(1)1998年4月22日の人権委員会決議1998/72により「発展の権利に関する参加自由の作業部会」(Open-Ended Working Group on the Right to Development)が設置された。そして、この参加自由の作業部会の第1会期は、2000年9月18日から22日までジュネーブで開催された。

(2)同作業部会は、その第1会期において、発展の権利の実施的側面(operational aspects)について検討した。そこで検討された内容には、発展の権利の実施における国家の役割と責任、市民社会の役割、開発における女性の役割、ならびに国際環境および国際協力についての関連活動などが含まれた。

(3)また、同作業部会は、発展の権利に関する独立専門家(Independent Expert on the Right to Development)であるMr Arjun Senguptaにより提出された、発展の権利の実施における進歩状況に関する第1次報告書および第2次報告書を検討した。

(4)さらに、同作業部会は、世界銀行(WB)、国際通貨基金(IMF)および国連開発計画(UNDP)といった主要な国際開発組織(international development organizations)からの活動報告書を検討した。

(5)同作業部会の構成員は、第1会期を通じて行われた審議の「覚書」(aide-memoire)をレビューした。この「覚書」は、2000年12月中頃に最終的に確定した形で利用可能となる。

(6)同作業部会の第2会期は、2001年1月29日から2月2日に開催される予定である。そして、同作業部会の第1会期および第2会期の審議を経て作成される最終報告書は、2001年4月に開かれる人権委員会第57会期に提出される。


○おわりに
1.以上概観してきたように、国連の各作業部会を中心として、「発展の権利」の具体的内容は徐々に明確化されてきている。
2.目下のところ、参加自由の作業部会第2会期(2001年1月29日から2月2日)、および最終報告書が提出される人権委員会第57会期(2001年4月)に注目が集まるだろう。
3.我が国においても、@人権と開発援助との関係、A人権と社会開発との関係、B人権の不可分性、あるいはB開発NGOと人権NGOとの協力等といった観点から、学問レベルの「発展の権利」に留まらず、市民レベルおよび実践的レベルにおいて「発展の権利」の認識をより一層向上させていくことが望まれる。


(注記:本文は以下の国連ホームページに基づいて作成された。)


本文が依拠した発展の権利に関する各作業部会の情報は次の国連ホームページを参照。また、作業部会の報告書などは同ホームページ上で入手可能。
http://www.unhchr.ch/html/menu2/10/e/wgrtd.htm


 

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