人権擁護委員制度の改革について
(諮問第2号に対する追加答申)
2001.12.21 人権擁護推進審議会


目    次

はじめに
1  人権擁護委員制度の沿革,現状及び課題
2  人権擁護委員制度の位置付け
 (1) 人権擁護委員制度の今日的意義
 (2) 人権擁護委員の果たすべき役割
3  適任者確保の方策
 (1) 人権擁護委員の選任
  ア  人権擁護委員の資格,選任基準等
  イ  人権擁護委員の選任方法
 (2) 人権擁護委員に対する研修
4  人権擁護委員活動の活性化の方策
 (1) 適性・専門性を活用する方策
 (2) 人権擁護委員の待遇
 (3) 人権擁護委員の組織体の役割
 (4) 地方公共団体等との連携協力
 (5) 人権擁護委員制度の周知
おわりに


〔参考資料〕
1  諮問文
2  審議経過
3  委員名簿
4  人権擁護委員制度の概要



はじめに


 人権擁護推進審議会(以下「本審議会」という。)は,これまでに,人権教育・啓発の在り方に関する答申(平成11年7月)及び人権救済制度の在り方に関する答申(平成13年5月)を行った。
 このうち,前者においては,人権啓発の実施主体の役割に関して,人権擁護委員は,地域において国民の日常生活に接しつつ広く人権尊重思想を普及する機関として,大きな役割を担うべきものとした(同答申第3,1(2))。また,後者においては,政府から独立した人権委員会(仮称。以下同じ。)を中心とする新たな人権救済制度の中での人権擁護委員の役割に関し,積極的に人権相談に従事するほか,市区町村や他の民間ボランティア,被害を受けやすい人々等との日常的な接触を通じて人権侵害の早期発見に努めるなど,人権救済においてアンテナ機能を担うとともに,各人権擁護委員の適性に応じて,あっせん,調停,仲裁等にも関与すべきものとした(同答申第7,3)上で,人権擁護委員が果たすべき役割の重要性にかんがみ,人権擁護委員制度については引き続き検討を行うこととした(同答申第7,4B)。
 人権擁護委員は,現行人権擁護制度の創設以来,50年余にわたってその重要な一翼を担ってきたが,今日その実効性等につき様々な問題点が指摘されていることから,本審議会は,人権擁護委員制度の今日的意義,人権擁護委員の果たすべき役割,適任者確保の方策,人権擁護委員活動の活性化の方策等について改めて総合的な検討を加えることとし,本年9月に人権擁護委員制度の改革に関する論点項目を公表し,これにつき広く一般の方々からも意見を求めて審議を重ね,本答申に至った。
 本答申は,人権救済制度の在り方に関する先の答申の一部をなすものであり,本答申を踏まえて新たな人権擁護制度の一翼を担う人権擁護委員制度の充実強化が図られ,「人権の世紀」と呼ばれる21世紀にふさわしい人権擁護制度が早急に確立されることを切望する。


1  人権擁護委員制度の沿革,現状及び課題

 人権擁護委員制度は,日本国憲法施行から間もない昭和23年,憲法の中核をなす基本的人権の保障をより十全なものとするため,法務省の前身である法務庁に人権擁護局が設置され,我が国の人権擁護行政がスタートした際,同局の活動を補助するものとして創設された(注1)。翌昭和24年に成立した人権擁護委員法1条は,人権擁護が国家の基本的な任務であるとの認識の下に,国民に保障されている基本的人権を擁護し,自由人権思想の普及高揚を図るため,全国に人権擁護委員を置くと,その目的を定めている。
 当初は,人権擁護局に出先機関がなく,人権擁護行政を全国的に展開していくためには,民間の協力に頼らざるを得なかったという事情もあるが,人権擁護の推進は,その性質上,官民が一体となって行うことが望ましいことから,法務局・地方法務局に人権擁護部門が設けられた後も,順次人権擁護委員制度は拡充され,現在では,約1万4,000人の人権擁護委員が全国の市町村(特別区を含む。以下同じ。)にあまねく配置され,人権擁護行政の重要な一翼を担っている。
 これまで人権擁護委員は,人権啓発活動や人権相談を中心にその役割を果たしてきた。その活動状況をみると,子どもの人権専門委員(注2)や常駐委員(注3)等活発な活動を展開し,成果を上げているものがある一方で,活動実績の乏しい委員も存在し,また,人権救済等に必要な専門性や経験を有する人権擁護委員が必ずしも十分に確保されていないため,活動の実効性にも限界がある。これらの点とも相まって,人権擁護委員の存在が国民の間に周知されておらず,人権相談等が十分利用されているとは言い難いといった問題もある(人権擁護委員制度の概要については,別添参考資料4参照)。
 そこで,以下,人権擁護委員が新たな人権擁護制度の中で占めるべき位置を明らかにした上で,適任者の確保及び活動の活性化にかかわる諸点について,改革の方向性を示すこととする。


(注 1)人権擁護委員令,人権擁護委員法
 人権擁護委員制度は,昭和23年,政令である人権擁護委員令に基づき発足した。同令では,法務総裁(当時の法務庁の長)の管理する人権擁護の事務を補助させるため,都道府県ごとに人権擁護委員を置くこととされていた。翌昭和24年には人権擁護委員法が成立し,全国の市町村に人権擁護委員を置くという現行の人権擁護委員制度がスタートした。
(注 2)子どもの人権専門委員
 人権擁護委員の中から,子どもの人権問題を主体的,重点的に取り扱うものとして指名された委員。児童の権利に関する条約の批准を踏まえ,子どもの人権問題に対する取組を強化する目的で,平成6年度に子どもの人権専門委員制度が導入された。
(注 3)常駐委員
 人権擁護委員の中から,法務局・地方法務局や一定の支局に常駐し,人権相談等に従事するものとして指定された委員。人権相談に対する取組を強化し,併せて委員活動の充実を図る目的で,平成3年度に常駐委員制度が導入された。


2  人権擁護委員制度の位置付け

 (1) 人権擁護委員制度の今日的意義
 制度発足当初に比べ,社会の進展に伴って人権問題が複雑化し,また,新たな人権課題が生起している今日,人権擁護委員制度には次のような,より積極的な意義を認めることができ,人権委員会を中心とする新たな人権擁護制度の中で,人権擁護委員は一層重要な役割を担っていく必要がある。そのためには,専門性を有する人権擁護委員を確保するための方策をも講じつつ,社会貢献の精神に基づき,熱意を持って人権擁護活動に従事する人権擁護委員を市町村単位で配置するという基本的性格を維持すべきである。
○ 個人の尊厳に由来する人権は,国や地方公共団体による保障とともに,国民の不断の努力によって保持されるものであり,人権擁護における民間の活動は極めて重要である。人権擁護行政においても,人権擁護委員の参加により,民間人の視点に立ったより柔軟で身近な人権擁護活動の展開が可能となる。また,民間の活動が活発な分野・地域において,連携協力を円滑にする役割も期待される。
○ 市町村という地域社会の中に配置された委員が,人権啓発,人権相談等に従事することにより,国が全国的・普遍的視野に立って行う人権擁護のための施策を地域社会に広めるとともに,人権救済におけるアンテナ機能を担うことなどにより,地域社会のニーズを把握することが可能となり,これを国の人権擁護のための施策にフィードバックさせることができる。
○ 人権問題が複雑化し,また,新たな人権課題が生起する中で,特定の人権課題や法律,心理等特定の領域に専門性を有する人権擁護委員が,それぞれの分野で専門性を発揮することにより,人権擁護活動の充実強化が図られる。

 (2) 人権擁護委員の果たすべき役割
 人権擁護委員の果たすべき役割については,先の二つの答申において,それぞれ人権啓発及び人権救済との関係で明らかにしたところであるが,以下のとおり整理することができる。
○  人権擁護委員は,従来,人権啓発,人権相談及び人権侵害事案の把握を中心に活動してきたが,今後もこれらを基本的な任務として,一層積極的な役割を果たすべきである。
○  人権擁護委員が,この基本的任務の下で,その適性や専門性に応じて得意とする分野の活動に重点を置くことを可能とするための方策を講ずる必要がある(4(1)参照)。
○  一方,人権救済における調査及び処理に関する人権擁護委員の役割については,従来必ずしも明確でないところがあった。人権救済手続への関与には一定の専門的知識,経験,素養等を必要とすることから,適性を有する人権擁護委員が人権委員会からの個別具体的な要請に応じて行う特別の任務とすべきである。
○  人権擁護委員は,その性格に照らし,過料又は罰金で担保された調査権限を行使することはできないものとすべきである。


3  適任者確保の方策

 (1) 人権擁護委員の選任
 研修等により人権擁護委員の資質向上を図ることにはおのずと限界があることから,適任者確保のためには,まず人権擁護委員にふさわしい人物を選任することが重要である。そのためには,以下のとおり,委員の資格,選任基準及び選任方法を見直す必要がある。
  ア  人権擁護委員の資格,選任基準等
  ○  人権擁護委員は,それぞれの地域社会において各種の人権擁護活動に積極的に従事することが求められることから,人権擁護委員としての熱意,人権に対する理解に加え,地域社会で信頼されるに足る人格識見や中立公正さを兼ね備えていることが必要である。また,特定の人権課題や法律,心理等特定の領域に専門性を有する人権擁護委員の確保も必要である。
  ○  現在の一般的なライフスタイルを勘案すると,時間的余裕のある定年退職後の年齢層が一定割合を占め,人権擁護委員の平均年齢がある程度高くなることはやむを得ないが,人権擁護委員も,社会の構成を反映して様々な年齢層の者で構成されることが望ましい。若年者の確保を図るためには,職場の理解も得つつ,在職中の者からの選任を進めることも一つの方策であり,また,女性や各種人権関係団体のメンバーの選任を進めることもそれにつながる。なお,人権擁護委員の年齢や再任の回数について画一的な上限を設けることは妥当でないが,積極的な活動が期待できる委員を確保する必要から,新任時65歳,再任時75歳を一応の上限とする現行の運用は維持すべきである。
  ○  男女共同参画社会の実現が重要な人権課題となっていることからも,これに寄与すべき人権擁護委員としては,その半数が女性であることが望ましく,女性の選任を一層進めるべきである。
  ○  人権擁護委員法も,人格識見高く,広く社会の実情に通じ,人権擁護について理解のある者と並んで,人権擁護にかかわる団体の構成員の中から人権擁護委員を選任すべきことを明記している(同法6条3項)ところであり,様々な分野で人権擁護に取り組んでいる各種団体のメンバーからも適任者の選任を図るべきである。そのためには,人権委員会は,弁護士会その他の団体に協力を要請するなどして,専門性を有する委員を全国的に十分確保することができるよう努める必要がある。
  ○  我が国に定住する外国人が増加していることなどを踏まえ,市町村の実情に応じ, 外国人の中からも適任者を人権擁護委員に選任することを可能とする方策を検討すべきである。
  イ  人権擁護委員の選任方法
  ○  地域社会に根ざした活動が期待される人権擁護委員の性格に照らし,市町村長の推薦に基づく現行の選任方法を基本的に維持するのが妥当である。
しかし,市町村長が候補者を推薦するに当たっては,現在,あらかじめ一定の地区,団体等に推薦定員を割り振った上で,人選を依頼している例が少なくないが,硬直化して適任者の人選に支障を来している面もみられる。そこで,市町村当局に対し,前記アの選任基準や選任に関する留意点の周知を図った上で,適任者を推薦し得るよう従来の人選の方法を再検討することを要請すべきである。
  ○  各市町村においては,上記の再検討の中で,様々な工夫を重ねながら,適任者確保に資する人選の方法を確立することが期待される(注4)。人権委員会も,情報の提供等を通じてこれに協力すべきである。
  ○  人権委員会は適任者に関する情報の提供等を通じて適任者の推薦に協力すべきであるが,専門性を有する委員の確保などの観点からは,市町村長が推薦した者に加え,市町村長の意見も聴きながら,必要に応じて,人権委員会が把握するその他の適任者をも選任することを可能にするための補充的なルートを設けることが適当である。

 (2) 人権擁護委員に対する研修
  ○  人権擁護委員は常に自己研さんに努めることが求められている(人権擁護委員法12条1項参照)が,これを補う研修は,職務遂行上必要な基礎的知識や技術の修得に重点を置くべきである。一部の委員に求められる高度の専門性を研修を通じて養うことは一般に困難であり,これは主として適任者の選任により確保される必要がある。
  ○  具体的な研修課題としては,人権擁護委員の使命・職務とこれに関する規律,人権保障に関する基本的法令・条約・計画,各種人権課題の状況,関係機関・団体等に関する基礎的知識や,啓発,相談,人権侵害事案の把握に関するノウハウ等が挙げられる。
 このうち,各種人権課題の状況に関しては,各地域の実情に応じた人権課題の選択が行われると同時に,男女共同参画社会の実現等の重要課題に配慮した研修内容とする必要がある。委員すべてが個別人権課題について専門家としての知識を修得することは期待できないが,委員に対する研修は,その内容が委員を通じて地域社会に広められるという意味において間接的な啓発活動であり,このような観点からも,各種人権課題に関する実践的な研修を積極的に実施すべきである。
 人権擁護委員の活動の中で大きな比重を占める人権相談は,極めて有効な人権救済の手法であるが,他方で一定の面談技術が要求されることから,カウンセリングにおける専門的知識・技術等も参考にしつつ,人権相談に関する留意点等について十分な研修を実施する必要がある。
  ○  研修を効果的に実施するためには,講義形式によるもののほか,事例研究等の参加型研修を取り入れるなどの工夫が必要である。研修の講師については,特定の人権課題や法律,心理等の特定の領域に専門性を有する人権擁護委員を積極的に活用することが望まれる。オン・ザ・ジョブ・トレーニング(実際の仕事を通じての訓練)の発想も取り入れる必要がある。
 人権擁護委員協議会や都道府県人権擁護委員連合会(注6参照)が自主的に企画実施する研修は,人権委員会が行うこととなる研修を単に補うだけでなく,委員の視点から必要な研修を選び出し,適宜自らの研究成果等も踏まえつつ実施される有効な活動であり,今後も積極的に実施されることが期待される。また,近時,地方公共団体等において,人権問題にかかわる様々な講演,研修等が企画されていることから,これらも有効に活用すべきである。


(注 4)市町村における候補者の人選の在り方
 市町村における候補者の人選の在り方については,意見募集においても,推薦委員会の設置や公募制の採用等様々な意見が寄せられたが,本審議会としては,全国一律に一定の手続を定めるよりも,むしろ各市町村がこれらのアイデアを参照しながら,各地の実情に応じた実効的な人選の在り方を追求していくことが適当であると考える。
(注 6)人権擁護委員の組織体
 人権擁護委員の組織体として,原則法務局・地方法務局の本・支局単位で設置されている人権擁護委員協議会,都道府県単位で設置されている都道府県人権擁護委員連合会及び全国人権擁護員連合会がある(人権擁護委員法16条)。このほか,法律上の組織ではないが,全国8ブロックにブロック人権擁護委員連合会が設けられている。


4  人権擁護委員活動の活性化の方策

 (1) 適性・専門性を活用する方策
  ○  子どもの人権専門委員(注2参照)に代表される専門委員制度は,広範な人権問題の中から当該委員が重点的に活動する分野を特定することにより専門性の涵養に役立つとともに,積極的な活動の動機付けにもなるなど,委員活動を活性化するための有効な方策であり,今後とも積極的な展開を図る必要がある。人権調整専門委員(注5)は,先の答申で提言した新たな人権救済制度の中で,救済手続に積極的に寄与するものとして発展的に位置付けられるべきである。
 常駐委員制度(注3参照)は,人権相談を中心に委員活動の活性化に寄与しており,今後もその充実を図る必要がある。
  ○  地域社会に根ざした活動が期待される人権擁護委員の基本的性格からすると,その職務執行区域は委員が置かれている市町村の区域を中心とすることとなるが,他方で,例えば子どもの人権専門委員のように,複数の市町村を包含する人権擁護委員協議会(注6参照)単位で活動を行うことを原則としているものもあり,また,専門性を有する委員の職務執行区域を市町村の区域に限定する理由もないことから,当該市町村の区域外においても,必要に応じ柔軟に職務を行うことができるものとすべきである。

 (2) 人権擁護委員の待遇
  ○  社会貢献の精神に基づき人権擁護活動に従事するという人権擁護委員の基本的性格や,民生委員,保護司等の待遇との均衡からは,職務の対価としての報酬は支給しない取扱いを維持することが適当であるが,その職務遂行に要する費用については十分補われる必要がある。
  ○  災害補償については,人権擁護委員には国家公務員災害補償法の適用がなく,専ら委任者の受任者に対する損害賠償義務を定めた民法650条3項の適用により賄われているが,人権擁護委員の職務は公務に位置付けられるものであり,人権委員会の職員等と一体となって遂行されるものであることに照らし,国家公務員と同等の補償を行うものとすべきである。
  ○  人権擁護委員に対する表彰等の制度については,その適正な運用に留意する必要がある。
  ○  人権委員会の行う調停,仲裁についても,専門性を有する人権擁護委員の参加が予定されている(人権救済制度の在り方に関する先の答申第7,3)が,これらの手続を担う者の待遇は別途整備される必要がある。

 (3) 人権擁護委員の組織体(注6)の役割
 人権擁護委員活動の一層の活性化を図るためには,個々の人権擁護委員の活動だけでなく,その組織体の積極的な活動の推進を図る必要がある。今日のように人権問題が複雑・多様化している状況の中では,個々の人権擁護委員による対応には限界があり,組織体が中心となって,自主的に各種の人権擁護活動や研修を企画・立案し,実施することにより,初めて個々の人権擁護委員の適性・専門性を有効に活用し,その積極的な活動を促すことが可能となる。組織体が人権委員会に対し適切に意見を述べることにより,人権擁護委員活動を通じて得た経験や成果を人権擁護のための施策に反映させていくことも重要である。また,地方公共団体や人権擁護にかかわる団体等との有効な連携協力を図る上でも,組織体の役割は不可欠である。
 人権擁護委員の組織体がこのような役割を果たすためには,人権擁護委員による積極的な自主運営を含め,組織体事務局や人権課題に応じた専門部会等の体制整備が図られる必要があり,人権委員会は,組織体の活動環境の整備に努めるべきである。

 (4) 地方公共団体等との連携協力
 関係機関・団体等との連携協力の重要性については,先の二つの答申においても指摘したところであり,人権擁護委員及びその組織体も関係機関・団体等との間で積極的に連携協力を図っていくべきである。
 特に人権擁護委員及びその組織体は,地域社会に根ざした人権擁護活動を通じて地域住民の福祉に寄与すべき立場にあり,これまでも市町村と共同で人権相談を実施し,あるいは,人権啓発活動ネットワーク事業やその他の場面で市町村や都道府県と連携を図ってきたところであるが,引き続き,その職務全般にわたり,地方公共団体の担当部署との日常的な接触等を通じ,緊密な連携協力体制を構築すべきである。地方公共団体の側においても,人権擁護委員の活動に必要な協力を行うことが期待される。

 (5) 人権擁護委員制度の周知
 人権擁護委員制度の周知を図るためには,人権擁護委員自身が人権委員会を中心とする新たな人権擁護体制の重要な一翼を担っていくことを十分に認識し,地域社会におけるより積極的な活動を通じて人権擁護委員の存在・活動を地道にアピールしていくことが肝要である。それとともに,人権委員会としても様々な媒体を利用して,この制度の広報に努めることも重要である。


(注 2)子どもの人権専門委員
 人権擁護委員の中から,子どもの人権問題を主体的,重点的に取り扱うものとして指名された委員。児童の権利に関する条約の批准を踏まえ,子どもの人権問題に対する取組を強化する目的で,平成6年度に子どもの人権専門委員制度が導入された。
(注 3)常駐委員
 人権擁護委員の中から,法務局・地方法務局や一定の支局に常駐し,人権相談等に従事するものとして指定された委員。人権相談に対する取組を強化し,併せて委員活動の充実を図る目的で,平成3年度に常駐委員制度が導入された。
(注 5)人権調整専門委員
 人権擁護委員の中から,人権侵犯事件のうち当事者間の利害を調整する必要がある事件について,中立公正な立場から当事者の言い分を聴き,調整を行うものとして指名された委員。人権救済に関する取組を強化する目的で,平成8年度に人権調整専門委員制度が導入された。
(注 6)人権擁護委員の組織体
 人権擁護委員の組織体として,原則法務局・地方法務局の本・支局単位で設置されている人権擁護委員協議会,都道府県単位で設置されている都道府県人権擁護委員連合会及び全国人権擁護委員連合会がある(人権擁護委員法16条)。このほか,法律上の組織ではないが,全国8ブロックにブロック人権擁護委員連合会が設けられている。


おわりに

 人権教育・啓発及び人権救済の推進・充実について調査審議を行うため,平成9年3月,人権擁護施策推進法に基づいて設置された本審議会は,本答申をもって,諮問を受けた事項について,すべての審議を完了する。この間,本審議会の調査審議に対してなされた各位の御協力に心から感謝の意を表するとともに,本審議会の提言が人権尊重社会の実現に寄与することを祈念するものである。


 

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