1.29東京公聴会のもよう(オリンピック記念青少年総合センター)


○ さる1月29日、東京・オリンピック記念総合青少年センターで行なわれた東京公聴会は、佐久間調査課長(法務省人権擁護局)の司会進行で開会され、塩野宏会長の挨拶の後、7名の意見発表者が意見を表明。その後、委員による質問が行なわれ、午後4時過ぎに閉会しました。

○ まず最初に野沢和弘さん(全日本手をつなぐ育成会理箏、毎日新聞記者)が「知的障害者に対する人権侵害」をテーマに発言。欧米では大規模施設を解体し知的障害者が地域でともに生活する取り組みが広がっているが、日本ではいまだに施設入所が増え構造的差別・虐待が続いている。また知的障害者への差別・虐待では、警察、検察、行政機関などがまったく機能せず、妨害者になるケースもある。新しい人権救済機関は独立性を確保し、公権力の人権侵害を重視し、障害当事者やその理解者から委員やスタッフを選び、同時に施設や人権救済機関の業務内容をチェックするオンブスマン制度の設立も進めるべき、などと主張。

○ 次に高橋正人さん(部落解放同盟中本部書記長)が「部落差別.人権救済機関の組織体制」をテーマに発言。現行の人権擁護機関はまったく機能せず新たな人権救済機関の設置はだが、設置法だけでなく、差別が社会悪であることを明示した差別禁止法などの規制措置も必要。特に業者による身元調査を規制するとともにILO111号条約の早期批准も必要。差別の解決には民間運動団体や自治体との連携を重視すべき。また部落地名総鑑の出版やインターネット上の差別煽動に対しては、法的規制が必要であり、公権力の人権侵害には強制力のある調査、是正命令などの措置が必要。なお、新しい人権救済機関は、国家行政組織法の3条委員会とし、内閣府に所属すべきであり、中央だけでなく地方(都道府県・政令市)にも設置し、地方自治体や民間との連携を重視して運営すべき、と発言。

○ 次に畑 衆さん(日本新聞労働組合中央執行委員長、朝日新聞記者)は、「マスメディアによる人権侵害」をテーマに発言。報道被害の現実があることは事実で、新聞各社はそれぞれ自主的努力を進めており、これらの自主規制の取り組みを尊重すべき。イギリスでは、1999年の人権法の制定にあたって、メディアによる人権侵害の救済は自主的機関によることを政府と報道機関が合意した。日本でも同様に、メディアによる人権侵害の救済は自主的機関によることとすべき、と発言。

○ 続いて石井修平さん(社団法人日本民間放送連盟)も「マスメディアによる人権侵害」をテーマに畑氏と同様の発言。メディアを人権侵害の救済対象とすることは、メディアの持つ公権力の監視機能を制約することにつながり、報道の自由に対する重大な侵害。差別表現の問題については、人権救済機関が直接介入すべきでなく、民間同士で解決すべき。また「中間とりまとめ」は、公権力による人権侵害に対して著しく消極的で問題がある、がどと発言。

○ 続いて奥山峰夫さん(社団法人部落問題研究所役員)は「救済の対象」をテーマに発言し、「中間とりまとめ」が結婚差別を強制的な権限を伴う救済の対象とすることは困難とする点は妥当。部落差別にもとづく結婚差別は減少しつつあり、また内心の自由にかかわる問題であり、積極的救済の対象とすべきでない。また差別表現や差別落書きについても、何が差別かが明示されておらず、あいまいな要件で救済対象とするのは問題がある。人権救済機関の委員の選出は公正に行われるべきで、NGO等で人権活動を行っているからといって適格者であるとは限らない、などと発言。

○ 次に村上重俊さん(弁護士) は「人権救済機関の組織体制」をテーマに発言。新しい人権救済機関は、政府からの独立性が生命線であるが、このことの認識が「中間とりまとめ」には欠如。独立性確保のためには、公正取引委員会や国家公安委員会のテツを踏まないためにも、組織改革、制度改革を提言する姿勢が肝要で、人権擁護局の横滑りによる救済機関設置は論外。まず透明性ある委員の選出手続きを定め、独立の採用試験による職員登用を行い、検察審査会のような市民参加のチェック機能を確保し、タテ割り行政の枠を超えた準司法機関としての位置付けを行うべき。また新しい人権救済機関は、地方にも支部を設置して委員を配置すべきであり、人権擁護委員はこの機関に関与させるべきでない、と発言。

○ 最後に山崎公士さん(新潟大学教授)は、「人権救済機関の組織体制」をテーマに発言。人権救済機関は、国連パリ原則にもとづき人権救済、人権教育、人権政策提言の3つの機能を持つべきで、独立性、多元性、多様性の確保を重視すべき。この人権救済機関は、市民との協働で運営されるべきで、委員や職員の選出方法、地方機関(委員会)の設置と活動重視をはかるべき。また公権力の人権侵害にかかわり抜き打ち的な立ち入り調査権限を持つべき、などと発言。

○ 出席委員は次のとおり。
塩野 宏会長(東亜大学通信制大学院教授)
野中俊彦会長代理(法政大学教授)
河嶋 昭委員(全国人権擁護委員連合会会長)
庄司洋子委員(立教大学教授)


 

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