公聴会レポートNO.1(2001.1.24)


1.22大阪公聴会のもよう(会場:ホテルアウィーナ大阪)

○ さる22日に大阪(会場:ホテルアウィーナ大阪)で開かれた公聴会は、午後1時に開会し、まず佐久間調査課長(法務省人権擁護局)が司会進行し、開会あいさつ、出席委員の紹介、意見発表者の紹介、会長あいさつの後、7名がそれぞれ10分間で意見発表しました。その後、委員から意見発表者に質問がなされ、若干のやり取りが行なわれ、4時まえに閉会しました。

○ まず武村二三夫(弁護士)さんは、日弁連の「中間とりまとめへの意見書」を紹介しながら公権力の人権侵害をもっと重視すること、地方自治体に通報や調査協力の義務を課すべきこと、法執行職員への人権教育強化に向けた制度改正の提言を、「人権救済機関」の独立性の確保を、などを主張。またメディアによる人権侵害については、当事者の自主的努力を尊重すべき、とした。

○ 2人目の堀江有里(花園大学非常勤講師)さんは、学校でのいじめ、職場での人権侵害、住居差別、同性愛者に対する暴力的迫害、同性愛者であることを理由とした公権力の不適切な取扱い、同性愛者に対する社会制度の欠如、メディアによる人権侵害の実態、など同性愛者への人権侵害の実態を具体的に提起。「性的指向等を理由とする人権侵害」を積極的救済の対象にすべき、と主張。

○ 3人目の上田藤兵衛(全国自由同和会副会長)さんは、自らの運動団体の取組みを紹介しつつ、部落差別にもとづく結婚差別なども対象とすること、メディアによる人権侵害は当然その対象とすべきこと、国家行政組織法第3条にもとづく独立した行政委員会を、加害者には何らかの処罰規定を、人権救済機関の所管は法務省でなく内閣府で、など5点を要望。

○ 4人目の友永健三(社団法人部落解放・人権研究所所長)さんは、なぜ今人権救済のあり方を議論するのかを振り返ると、35年前の内閣同対審答申の指摘(差別に対する法的措置、差別から保護するための必要な立法措置を講じるべき)を、国が実行しなかったあるとし、差別が社会悪として禁止されるべき旨を明記した「規制」の措置(差別禁止法制定)を要望。また人権救済機関は、中央レベルだけでなく都道府県・政令指定都市にも地方人権委員会を設置し重視すること、委員の人選にはジェンダーバランスとマイノリティ当事者の選任を要望。

○ 5人目の村下博(大阪経済法科大学教授)さんは、「中間とりまとめ」は人権の捉え方に問題があり、お上(公権力)が国民に対し「人権問題の理解が不充分だから教育する」との発想で、私人間の人権侵害ばかりを取り上げ、公権力の人権侵害を軽視。法務所は入管行政ではなはだしい人権侵害をしており、この点の改善策を示すべき。新たな人権救済機関の設置は、国民の裁判を受ける権利をないがしろにするもので、反対。まず裁判を受ける権利の保障を充実すべき、と主張。

○ 6人目の島尾恵理さん(弁護士)は、DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者の相談などの経験から、人権侵害類型の問題点を指摘。人権〈人権侵害〉の定義があいまいで、しかも「差別」と「虐待」の2つにのみ積極的救済の対象と限定するのは問題。また調査権限については、法律で規定を明確にして強制力のある調査権限を付与すべき、と主張。また現行の行政救済制度(例えば男女雇用機会均等調停委員会など)は余り有効に機能しておらず、新たな人権救済機関が積極的に関与することにより、それらも活性化する、と主張。

○ 最後の7人目の窪 誠さん(大阪産業大学助教授)は、「中間とりまとめ」は人権の捉え方があいまいだが、これからの人権概念は、国家裁量型の人権ビジョン(上からの人権保障)ではなく、共生社会が多の人権ビジョン(下からの人権保障)であるべき。そのためには、政府から独立した人権救済機関が必要であり、地域に密着し、人権侵害当事者重視の姿勢で、委員の人選や運営にあたるべき。人権救済機関の提言機能は、パリ原則でも指摘されている通り極めて重要であり、人権政策の確立に向けた積極的な提言ができるよう充実・強化すべき、と主張。

○ 大阪公聴会の人権擁護推進審議会の出席委員は次の方々。
      塩野宏会長(東亜大学通信制大学院教授)
      安藤仁介委員(同志社大学教授)
      立石信雄委員(オムロン株式会社会長)
      長谷部由起子委員(学習院大学教授)


1.23福岡公聴会のもよう(会場:ホテルKKR福岡)

○ さる23日に福岡(会場:ホテルKKR福岡)で開かれた公聴会は、午後1時に開会し、まず佐久間調査課長(法務省人権擁護局)が司会進行し、開会あいさつ、出席委員の紹介、意見発表者の紹介、会長あいさつの後、7名がそれぞれ10分間で意見発表しました。その後、委員から意見発表者に質問がなされ、若干のやり取りが行なわれ、4時すぎに閉会しました。

○ まず最初の意見発表者の稲積謙次郎さん(元西日本新聞編集局長)は、「部落差別、マスメディアによる人権侵害」をテーマに7点を要望。@法律(委員会設置法)に国と自治体の責務を明記すること、A地方人権委員会の機能があいまいだが、ぜひ自治体の人権相談窓口と有機的連携を、B現行の人権擁護機関が機能不全なのは、職員と人権擁護委員の資質に問題があるから、C部落差別事件で開き直りのケースが増えており、確信犯には処罰を、D公権力の人権侵害についてもっと重視すべき、Eマスメディアの人権侵害には、慎重な対応を、F加害者の変革のためには、カウンセリングをはじめきめ細かい対応が必要、と発言。

○ 次に川向秀武さん(福岡教育大学教授)が『差別表現』をテーマに5点に着いて発言。@「中間取りまとめ」は、当事者の立場を重視する視点が弱い、A福岡で起きた大蔵住宅差別事件では、差別を規制する現行法と人権擁護機関の不備が明らかとなり抜本改革が必要、Bインターネット上の差別扇動へ的確に逮捕すべき、C公権力の人権侵害についてもっと重視すべき、D人権委員会はパリ原則にもとづき設置されるべきで、また総合調整機能を持つ内閣府に設置するとともに、自治体との連携を強化すべき、と発言。

○ 次に西尾紀臣さん(ジャーナリスト)が「マスメディアによる人権侵害、差別表現」について発言。1/6に西日本新聞が「差別発言したものを刑事告訴」と報じたが、差別撤廃に奮闘するメディアの努力を支援すべき。その上でマスメディアの人権侵害には、まず各社の自主的努力を求め、次に業界としての自主規制を求め、慎重な対応をすべき。また公権力の人権侵害についてもっと重視すべき、と発言。

○ 続いて増岡広宣さん(学生)が「性的指向等を理由とする人権侵害」をテーマに発言。これまで同性愛者の人権問題が日本で大きく扱われなかった理由として、@日本の同性愛者差別の特徴に起因する点、A日本の人権救済機関の制度的欠陥に起因する点を提起。同性愛者問題を解決できる人権救済機関のあり方として、地理的・時間的に身近なエリアに相談窓口の設置、相談。調査に携わる職員が同性愛について最低限の知識を持つこと、ピア・カウンセリング能力のある同性愛者の相談員の配置、NPO/NGOとの連携重視、そして法務省から完全に独立した準司法的機関とすること、を要求。

○ 次に平塚新吾さん(全国部落解放運動連合会中央執行副委員長)が「『公権力による人権侵害』をテーマに発言。人権の救済は原則として司法制度によるべきであり、新たな人権救済制度は裁判を受ける権利の形骸化につながりやすい。結婚差別はなくなりつつあり、結婚差別にかかわる法規制は導入すべきでない。また特定の団体による確認・糾弾へ公的機関が参加することを改めるよう法務省は指導すべき、とした。

○ 続いて新谷一幸さん(広島修道大学助教授)は「人権救済のための調査権限」をテーマに発言。まず「中間取りまとめ」は教育・啓発と救済は車の両輪とするが、教育・啓発では解決できない問題への取り組み姿勢として不十分。特に積極的救済の対象を「差別」「虐待」に事実上限定しており、狭すぎる。公権力の人権侵害、特に拘禁施設などの密室の中を外から監視するシステムを構想すべき。強制調査権限への懸念として、質問調査権を罰金で担保し回答拒否罪を想定しているが、犯罪構成要件が曖昧で、乱用の恐れがある。結婚差別を積極的救済の対象とするのは、内心の自由強制的に踏み込むことになり反対、などと主張。

○ 最後に副 直子さん(僧侶)が「部落差別」をテーマに発言。この1年で数件の結婚差別事件に出会っており、差別は深刻。結婚や交際による差別も積極的救済の対象とすべき。差別は社会悪であり、特に興信所による身元調査を禁止するなどの内容をもつ差別禁止法を制定すべき、などと主張。

○ 出席委員は、次のとおり。
      塩野宏会長(東亜大学通信制大学院教授)
      大谷 實委員(同志社大学教授)
      清原慶子委員(東京工科大学教授)
      宮崎繁樹委員(明治大学名誉教授)
      寺澤亮一委員(奈良県同和問題関係史料センター専門研究員)


 

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