諮問第2号に関する法務省人権擁護局長の補足説明
(1999年9月17日 人権擁護推進審議会第31回会議)


それでは,これから諮問第2号に関する本格的な審議を始めたいと思います。
 諮問第2号につきましては,前回会議においても簡単に振り返ったところでございます。改めて私から確認させていただきますと,「人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項について」ということでございます。これについての人権擁護局長の発足当初のときの補足説明については既に聴取したところでございます。ただ,大分たちますし,また,その後情勢もいろいろ変わっておりまして,特に中央省庁等の改革というようなものもございますので,こういった点も含めまして,リマインドするという意味も含めまして,改めて補足説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○ それでは,私から補足説明をさせていただきます。
 法務大臣からの諮問事項であります諮問第2号の「人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項について」に関し,具体的に検討をお願いしたい事項につきましては,ただいまお話がありましたとおり,平成9年5月の第1回会議において人権擁護局長から補足説明を行ったところでありますが,あれから既に2年余が経過しました。この間には,マスメディアによる人権侵害の問題がこれまで以上に顕在化し,また,昨年11月には,いわゆる国際人権B規約に基づく人権委員会から,人権侵害の申立てに対する調査のための独立した仕組みの設立を勧告され,さらに本年6月に成立した男女共同参画社会基本法17条において,性差別等による人権侵害の被害救済を図るために必要な措置を講ずべき国の責務が定められ,法務省の人権擁護機関がその任に当たることが期待されることとなるなど,人権侵害救済制度を取り巻く情勢にも変化が見られますし,また,このたび4名の方が新たに委員に加わられましたので,諮問第2号に関する本格的な調査審議を開始いただくに当たりまして,諮問第2号のもとで検討をお願いしたい事項に関しまして,改めて私から補足説明をさせていただきたいと思います。
 平成8年5月に地域改善対策協議会が行った意見具申におきましては,諸外国における取組等国際的な潮流をも視野に入れつつ,「人権の世紀」と呼ばれる21世紀にふさわしい人権侵害救済制度を確立すべきことが提言されており,これが本審議会設置の一つの契機となったところでありますが,諮問第2号に対しましては,まさにこのような観点に立った御意見をいただきたいと考えております。法務省の人権擁護機関が戦後50年余にわたって行ってまいりました人権侵犯事件の調査処理等につきましては,本日この後で改めて説明させていただきますが,これまでの取組に対する評価を踏まえつつも,必ずしもこれにとらわれることなく,真に21世紀にふさわしい人権侵害救済制度の在り方について調査審議をお願いしたいと思います。
 そこで,現在,諮問第2号のもとで検討をお願いしたいと考えている事項を,以下,列挙させていただきます。
 第1点は,この制度の下で救済すべき人権侵害とは何か,そのような人権侵害について,なぜこの制度の下で積極的に救済を図るべきなのかという救済の基本的理念と救済の対象についてであります。現行の人権侵犯事件の調査処理制度の下におきましては,作用法等がないこともありまして,何らかの人権侵害に該当すると考えられる案件を比較的広く取り上げているところでありますが,この点を整理していただく必要があるのではないかと考えております。
 第2点は,実効的な救済を図るためには,どの分野にどのような救済手段・手法が必要かという救済の措置についてであります。現行制度の下におきましては,人権擁護機関は加害者に任意の是正措置を促すことしかできないのでありますが,果たしてこれで十分と言えるか,十分でないとすれば具体的にどの分野にどのような措置を導入する必要があるのかを検討願いたいのであります。なお,この点に関しましては,司法的救済及びその他の行政上の救済との間でどのような役割分担を行うべきかという視点も必要になるのではないかと考えております。
 第3点は,効果的に救済措置を発動していくためにはどのような調査手続・権限が必要かについてであります。現行の制度の下におきましては,人権擁護機関は何ら強制力を伴う調査手段を有していないわけでありますが,救済措置の発動にはきちんとした事実認定が必要であることは申すまでもありませんので,実効的な救済を実現していくためにはどのような調査手続・権限が必要かについて調査審議をお願いしたいのであります。
 第4点は,救済措置や調査手続の充実強化に対応して,救済機関の組織・体制をどのように整備すべきかについてであります。救済機関にはどの程度の独立性が必要か,救済機関の人的構成はどうあるべきか,人権擁護委員の果たすべき役割は何か,救済機関は他にどのような所掌事務を担うべきかといった救済機関に関する諸問題について調査審議願いたいと考えております。
 当面検討をお願いしたいと考えている事項は以上のとおりであります。なお,平成9年5月の第1回会議における補足説明では,人権擁護委員の適任者確保や活動活性化の方策についても調査審議をお願いしたところでありますが,これらの問題につきましては,人権侵害救済制度の在り方について方向性が定まってから改めて御検討いただくのが相当ではないかと考えております。また,人権相談の窓口整備の方策についても検討をお願いしたところでありますが,この点につきましては先ほどの第3点,第4点等との関連で御検討願えればと考えております。
 以上をもちまして私の補足説明を終わりたいと思いますが,本審議会も約2年半を残すのみとなり,ただいま御説明申し上げました事項について十分に御検討いただくためには,かなりタイトな開催スケジュールとならざるを得ない状況となっております。何とぞ,事情を御賢察の上,活発な調査審議をお願い申し上げます。


 

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