グローバルコンパクトに消極的な日本企業(3月7日付東京新聞)


 3月7日付東京新聞は、企業の人権行動指針として、国際的な関心を呼んでいる国連提唱のグローバルコンパクト(GC)に対し、日本の企業が消極的な姿勢にあることを批判し、取組強化を訴える記事を掲載した。以下に記事全文を紹介する。



「人権や環境に配慮するグローバル運動」
-日本の企業 関心低く/参加は実質1社だけ、世界では既に500社/法的な問題を危ぐ-

 「グローバルコンパクト」という言葉を聞いたことがありますか?企業が「人権や環境に配慮し、良き地球市民として活動します」という誓いで、国連のアナン事務総長が提案した運動だ。2000年からすでに始まっており、世界の主要企業が参加している。ところが、日本企業は、実質一社だけという状態。この運動でも“グローバルスタンダード”とはいかないようで・・・。(亀岡秀人)

 アナン事務総長が一九九九年に「経済のグローバリゼーションが進むなか、途上国などで人権侵害や、児童労働など労働基準違反をせず、環境を破壊しない行動を企業が守る。グローバル化で負の問題を生まないように」と運動を提唱した。
 企業が誓いを国連に送り、それぞれのやり方で、誓約を守り、国連の活動に協力、活動状況を国連に報告するというもの。誓約を破ったからといって罰則などはない。企業の自主性が求められている。
 当初、シスコシステムズ、デュポン、ドイツ銀行、それにかつて児童労働の問題が問われていたナイキなど世界の主要五十社が参加して二〇〇〇年七月から開始。その後、次々に国際企業が参加を表明し、現在までの参加企業は約五百社。
 日本からはキッコーマンが二〇〇〇年末に参加した。同社では「世界でしょうゆを販売しており、この誓約は当然、守るべきものと、すぐに賛同しました」という。
 ところが、国連広報センターの高島肇久所長は「世界規模で活躍する企業が多いにもかかわらず日本からの参加は実質一社だけです」と話す。
 その理由について「環境問題には熱心に取り組まれますが、いざ人権や労働基準というと、何かと法的問題が出てくるのではと危ぐされています。日本の企業なら九原則など、すでに達成しているはずなんですが・・・」と言って残念がる。
 こうした事態に労働組合も経営者に働き掛けを強めている。今年、連合の笹森清会長は那須翔・二〇〇二年ワールドカップ日本組織委員会長に、日韓ワールドカップのオフィシャルスポンサーや運動で、人権、環境など九原則を守る企業の選定などを申し入れた。
 連合の中島滋・総合国際局長は「欧州では運動に参加する企業は高く評価され、その製品を消費者が積極的に購入している。一方、日本企業はほとんど参加せず、不祥事ばかりが相次いでいる。経営者だけでなく、従業員も再度、倫理の原点を考え直し、運動に参加する必要があります」と訴えている。

 「拝啓 アナン事務総長。私たちは良き地球市民として行動するため、以下の九原則(別項参照)を守ります・・・」。こうした手紙を企業が国連の事務総長あてに送ることで運動に参加する。グローバルコンパクトは訳すと「地球規模の誓約」。

拝啓 アナン事務総長

私たちは良き地球市民として行動するため以下の9原則を守ります。

・人権
 ・企業は、国際的な人権の保護を支持し、尊重する
 ・人権侵害に関与しない
・労働基準
 ・組合結成の自由と団体交渉権を認める
 ・あらゆる形態の強制労働の禁止を支持する
 ・児童労働の廃止を支持する
 ・雇用、職業での差別を排除する
・環境
 ・環境問題の予防的措置を支持する
 ・地球に対する一層の責任を促進する
 ・環境にやさしい技術の開発と普及を奨励する



<参考>
グローバル・コンパクト(国連と国際社会の最近の動向)
グローバル・コンパクトの9原則仮訳


 

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