人権擁護法案、国連が問題視 高等弁務官が首相に信書
朝日新聞 2002年7月2日

 国連筋は1日、ロビンソン国連人権高等弁務官が、小泉首相あてに、日本の人権擁護法案に懸念を表明する信書を送ったことを明らかにした。同弁務官事務所は、人権委員会を法務省の外局に置くなどの内容が、人権機関の独立性を求める国連原則に合わない点などを問題視しているとみられる。

 信書は数カ月前と最近の複数回出されたとの情報がある。同筋は「弁務官の仕事は人権委員会を国連の定めた原則や国際的な基準に沿ったものにしてもらうよう手助けすることだ」と述べた。

 「国連の定めた原則」とは、93年に採択された「国内人権機関の地位に関する原則」(通称、パリ原則)を指す。パリ原則は、政府からの人権委員会の独立性を重視、自前の職員、土地・建物を持てるような財源措置が必要としている。

 だが、日本の人権擁護法案では、人権委員会を「法務省の外局に置く」とし、事務局職員についても、主に法務省の役人が就任することが想定されている。

 また、パリ原則は人権委員の選任について、多様な意見を反映できるよう「多元的な代表の確保」を求め、非政府組織(NGO)やジャーナリストなど社会各層の協力を得て行うとしている。しかし、法案では、常勤の人権委員は2人(このほかに非常勤3人)しか任命されず、「多元性の確保」は困難な状況だ。

 98年には国連規約人権委員会の対日勧告が、「警官、入国管理職員の虐待」を例にあげ、公権力による人権侵害への苦情申し立てを扱う独立した人権救済機関の設立を日本政府に求めた経緯がある。その結果作られたはずの法案が、公権力による人権侵害への対処ではなく、報道による人権侵害を主要な規制対象とするなど、「国際基準」から離れた内容となっていることも「懸念」表明につながったとみられる。

 信書には、人権擁護法案(の修正など)について、日本政府から求められれば同弁務官事務所が、「支援」を提供する用意があると書かれているという。(06:07)
出典: < http://www.asahi.com/politics/update/0702/001.html >


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