人権擁護法案に対する共同声明

平成14年3月7日

日本新聞協会
日本民間放送連盟
日本放送協会

 日本新聞協会、日本民間放送連盟、日本放送協会の新聞、通信、放送320社は、政府が国会へ提出する人権擁護法案に対し、共同の見解を表明する。

 人権擁護法案は、人権侵害事件の救済手続きとして、従来の制度と同様の「一般救済」と、踏み込んだ対応を行う「特別救済」の2つを設け、「報道による人権侵害」をこのうち特別救済の対象とした。われわれが再三異議を述べたにもかかわらず、「差別」「虐待」と同列に並べて「報道による人権侵害」を特別救済の対象に加えたことは、極めて遺憾である。

 しかも法案は、「報道による人権侵害」の類型の1つに「過剰な取材」を挙げ、取材を拒む被害者や容疑者の家族らを継続して「待ち伏せし、見張ること」などのほか、繰り返し「電話をかけ、ファクシミリを送信すること」が「過剰な取材」に当たると明文化している。

 「過剰な取材」とみなされれば、政府の機関として新設される人権委員会が取材停止の勧告などを行い、場合によっては勧告内容の公表に踏み切ることになる。

 電話やファクシミリをどの程度繰り返せば「過剰な取材」となるのか、その線引きはもっぱら人権委員会の判断に委ねられ、報道側からの不服申し立ての規定は設けられていない。

 このような制度は、政府機関による報道への不当な干渉につながりかねず、国民の知る権利に応えるための「熱心な取材」「粘り強い報道」にブレーキをかける危険がある。現状の法案を容認することはできないと、われわれは言わざるを得ない。

 近年、われわれは、人権擁護のさまざまな取り組みを自主的に実行してきた。日本新聞協会は一昨年、新聞倫理綱領を改定し、同協会に加盟する新聞・通信各社の間では、社外の第三者によるチェック機関の設置など、各社独自の対応も相次いだ。一方、日本民間放送連盟の放送各局と日本放送協会は5年前に第三者機関の「放送と人権等権利に関する委員会機構」(BRO)を設け、人権救済の勧告や公表を自主的に行ってきた。

 さらに、日本新聞協会、日本民間放送連盟、日本放送協会の3者は現在、連携して、事件や事故の際に見られる集団的過熱取材の弊害を防ぐための協議を進めている。

 われわれは、今後も連携を一層強め、改めるべき点は自らの手で改善していく決意である。

 人権擁護法案の国会審議に当たっては、以上を踏まえ、取材・報道活動が不当に規制されない、報道の自由に十分配慮した制度がつくられることを強く求める。


 

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