→最新版:「人権政策提言」 ver.2.1(2001/01/02)

これからの日本の人権保障システムの整備をめざして
―人権政策提言 ver.2.0―

2001.12.1  人権フォーラム21

<もくじ>

1.【人権政策の基本理念】
 1-1.〔人権政策三原則〕
 1-2.〔市民の主体性〕
 1-3.〔地域、市民、企業・団体の責務〕
2.【新たな人権法体系の整備】
 2-1.〔実質的意味の人権〕
 2-2.〔差別禁止法の制定〕
 2-3.〔差別禁止事由・差別禁止分野の明記〕
 2-4.〔差別禁止法の段階的整備〕
 2-5.〔地域性の原則にもとづく条例の整備〕
3.【人権委員会の組織体制】
 3-1.〔人権委員会の設置の趣旨・目的〕
 3-2.〔人権委員会の活動〕
 3-3.〔人権委員会法の制定〕
 3-4.〔人権委員会法上の「人権」定義〕
 3-5.〔地方及び国における人権委員会の設置〕
 3-6.〔地方人権委員会における人権相談窓口の設置〕
 3-7.〔国際機構、他国の国内人権機関及びNPO/NGOとの協力〕
 3-8.〔委員及び委員数等〕
 3-9.〔地方人権委員会委員の任免と議会の同意〕
 3-10.〔中央人権委員会委員の任免と国会の同意〕
 3-11.〔委員の独立性・多元性の確保〕
 3-12.〔地方人権委員会事務局とその職員の専門性・多元性の確保〕
 3-13.〔中央人権委員会事務局とその職員の専門性・多元性の確保〕
 3-14.〔専門職員の養成〕
 3-15.〔人権委員会の予算〕
 3-16.〔年次報告書の作成・提出〕
4.【人権委員会の救済機能】
 4-1.〔調査・救済に際しての基本原則〕
 4-2.〔申立人の範囲〕
 4-3.〔表現の自由に関わる人権侵害・差別事案にかかる申立の取扱い〕
 4-4.〔マスメディアに関わる人権侵害・差別事案に係る申立の取扱い〕
 4-5.〔国、自治体又は民間団体による人権侵害・差別救済制度との関係〕
 4-6.〔国、自治体又は民間団体による人権侵害・差別救済制度との協力〕
 4-7.〔地方人権委員会への相談〕
 4-8.〔地方人権委員会の所掌〕
 4-9.〔中央人権委員会の所掌〕
 4-10.〔地方人権委員会への申立〕
 4-11.〔他の機関等への付託・捜査機関への告発〕
 4-12.〔人権委員会によるあっせん、調停、仲裁〕
 4-13.〔人権委員会の調査権〕
 4-14.〔人権委員会の強制調査権〕
 4-15.〔人権委員会の勧告権〕
 4-16.〔地方人権委員会の意見表明権〕
 4-17.〔人権委員会による訴訟援助参加〕
 4-18.〔人権委員会の申立人への回答義務〕
5.【人権委員会の政策提言機能】
 5-1.〔中央人権委員会の政策提言機能〕
 5-2.〔地方人権委員会の政策提言機能〕
 5-3.〔中央人権委員会による注意喚起〕
 5-4.〔地方人権委員会による注意喚起〕
6.【人権委員会の人権教育・啓発機能】
 6-1.〔人権委員会の人権教育・啓発活動の方法〕
 6-2.〔人権委員会の人権教育・啓発活動〕
 6-3.〔地方人権委員会が特に担うべき人権教育・啓発活動の分野〕
 6-4.〔中央人権委員会が特に担うべき人権教育・啓発活動の分野〕
7.【人権を所掌する行政機関の新設を】
 7-1.〔内閣府人権庁の設置〕
 7-2.〔法務省による人権擁護行政の原則的終了〕
 7-3.〔法務省法務局人権擁護部及び地方法務局人権擁護課等の廃止〕
 7-4.〔自治体による人権行政の推進と人権部局の整備・新設〕
8.【人権擁護委員制度の改編を】
 8-1.〔委員数の削減の削減と人権ソーシャルワーカーへの移行〕
 8-2.〔人権ソーシャルワーカーの職務と待遇〕
 8-3.〔人権ソーシャルワーカーの配置〕
 8-4.〔人権ソーシャルワーカー研修所〕
 8-5.〔人権促進市民ボランティア制度の新設〕
 8-6.〔人権促進市民ボランティアの配置〕
 8-7.〔人権ソーシャルワーカーの選任方法〕
 8-8.〔人権促進市民ボランティアの選任方法〕
 8-9.〔地方人権委員会への事案付託〕
9.【議会の人権問題審議機能の強化を】
 9-1.〔国会の人権問題審議機能の強化〕
 9-2.〔地方議会の人権問題審議機能の強化〕
10.【人権保障のための実効的な司法制度改革を】
 10-1.〔人権法研修〕
 10-2.〔事案処理の専門化〕
 10-3.〔「法科大学院」における人権法教育〕
11.【国際人権法の国内的実施の強化を】
 11-1.〔個人通報制度の受諾および留保等の撤回〕
 11-2.〔人権委員会による国際人権法の積極的な活用〕
 11-3.〔地域的人権保障システムの確立〕
12.【市民社会との協働と「人権文化」の定着を】
 12-1.〔市民社会との協働〕
 12-2.〔「人権文化」の確立〕


1. 人権政策の基本理念について

これまでの日本の人権政策は、国が裁量によって、上から下に施す処分であり措置である。そのため、人権侵害・差別を受けた当事者は、地域、草の根の生活現場で苦悩や抗議の声を挙げてきたにもかかわらず、国は中央集権的かつ省庁割拠的な対応に終始し、当事者の声を聞いて総合的な解決を図るための効果的な方策を実行していない。こうした現実を直視すれば、今後の人権問題においては、市民主体性、すわなち、人権政策を日本社会に生活するすべての市民が主体的に形成していくことが大前提になる。

 1-1.〔人権政策三原則〕
日本の人権政策の基本理念を実現するにあたっては、(1)当事者性、すなわち「当事者自らによる事案解決に対する適切な支援」、(2)地域性、すなわち「地域において人権侵害・差別事案を自ら解決する取り組みの支援」、(3)総合性、すなわち「省庁の縦割り行政によって人権侵害被害者がたらい回しにされることのない総合的取り組み」の三原則を柱にした積極的な取り組みが必要である。

 1-2.〔市民の主体性〕
 日本国憲法前文が宣言するように、民主主義は「人類普遍の原理」であり、人権のみならず、すべての政策の担い手が市民であることは言うまでもない。実際、人権侵害や差別事象の多くは地域社会で生起するため、地域に根ざした様々な人権運動が、第二次大戦以後活発に展開され、日本社会における人権規範の定着と実質化を促してきた。こうした実績を踏まえ、ひとりひとりの市民が、地域レベル、国レベル、企業・団体レベルにおいて意思決定に主体的に参加し、人権が尊重される共生社会を実現していかなければならない。

 1-3.〔地域、市民、企業・団体の責務〕
 実際の人権侵害や差別事象の多くは、地域社会で生起する。そのため、地域に根ざした様々な人権運動がこれまで活発に展開され、日本社会における人権規範の定着と実質化を促してきた。こうした実績を踏まえ、市民、地域社会、NGO、企業その他の団体は、今後も引き続き、国や自治体等と協働し、人権が尊重される社会を実現していかなければならない。


2. 新たな人権法体系の整備を

 人権が尊重される社会を構築するための基本は、人権に関する教育及び啓発を充実化させることにある。そのための根拠法として、2000年12月に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(人権教育・啓発推進法)」(平成12年法律第147号)が制定されたが、その実効性を確保するためにも、上記三原則をふまえた見直しを早期に実施する必要がある。さらに、実効的に人権が尊重され、確保される社会を実現するためには、これまでの行財政的措置のみでは不十分であり、新たな人権法体系の整備が不可欠である。

 2-1.〔実質的意味の人権〕
 人権法体系の整備にあたっては、法律上の狭義の「人権」、すなわち国家によって「人権」と認められた権利だけではなく、人権侵害を受けた当事者に対して実効性ある救済をなしうる普遍的価値概念としての「人権」を広く扱うこととし、人間の尊厳が真に尊重され、個人の人格と自律的な生存が保障される日本社会をめざさなければならない。

 2-2.〔差別禁止法の制定〕
 日本国憲法第14条第1項が定める平等原則を具体化するため、社会的差別禁止法又は人種差別禁止法(部落差別・アイヌ民族差別・外国人差別の禁止など)、性差別禁止法、障害者差別禁止法等の事由別差別禁止法、及び雇用差別禁止法(ILO111号条約の批准及び国内法の整備)等の分野別差別禁止法を順次制定する。これら諸法の整備は緊急の課題であり、また国際社会に対する責務でもある。

 2-3.〔差別禁止事由・差別禁止分野の明記〕
 上記差別禁止諸法の整備にあたっては、諸外国の取り組み及び「国連・反人種差別モデル国内法」を参照し、差別禁止事由と差別禁止分野を明示し、差別行為の予防ならびに規制、及び差別を受けた者の救済を図るものとする。主な差別禁止事由及び差別禁止分野には以下のものが含まれる。
【差別禁止事由】人種、皮膚の色、性別、性的指向・性的自己認識、婚姻上の地位、家族構成、言語、宗教、政治的意見、門地、社会的出身、民族的又は国民的出身、年齢、身体的・知的障害、精神的疾患、病原体の存在、等。
【差別禁止分野】雇用・職場、教育、居住、医療、物品及びサービス提供、施設利用、等。

 2-4.〔差別禁止法の段階的整備〕
 当初は事由別及び分野別の差別禁止法を順次制定し、後日包括的な差別禁止法の制定を検討する。

 2-5.〔地域性の原則にもとづく条例の整備〕
 地域において人権侵害・差別事案を自ら解決するという地域性の原則にもとづき、地域社会における人権の尊重と確保を実現するため、自治体は積極的に条例制定に取り組む。その一環として、自治体は引き続き人権のまちづくり条例や差別禁止条例の制定を積極的に進めるべきである。


3. 人権委員会の組織体制について

 現行の法務省による人権擁護行政及び人権擁護委員制度は十全に機能していない。また、裁判所による司法的救済も時間と費用がかかり、かつ手続も煩雑である。加えて、これまでの裁判所は、人権侵害を受けた者の実効的な救済に役立ってきたとは言い難い。そこで、人権侵害・差別を受けた者に対する救済施策の実施主体として、政府から独立した国内人権機関を創設し、当事者の経済的な負担が軽く、手続が簡易で、かつ早期の実効的救済が期待できる体制を整備する。国内人権機関は、(1)当事者性、(2)地域性、及び(3)綜合性の重視という人権政策三原則(上記1-1.参照)を活動指針とする。

 3-1.〔人権委員会の設置の趣旨・目的〕
 人権委員会は、個別の人権侵害事案を総合的に解決することを通じて基本的人権を保障し、あわせて事案処理の経験から得た知見を基に、人権に関する法制度や人権状況一般の改善に努め、社会正義と平等の実現を図ることを目的とする。

 3-2.〔人権委員会の活動〕
 人権委員会は、(1)人権侵害・差別を受けた者の救済、(2)人権に関する政策提言、ならびに(3)人権教育・啓発推進にかかる連絡調整の活動を行う。これらの活動にあたっては、年次報告書の公表等により公開性と透明性を確保し、説明責任を果たさなければならない。

 3-3.〔人権委員会法の制定〕
 人権委員会の根拠法として人権委員会法を制定し、(1)当事者性、地域性、総合性を原則として、人権侵害・差別事案の解決にあたること、(2)事案の処理を通じて明らかになる社会構造上の問題に関して意見を表明し、人権状況の改善を図ること等の人権委員会の責務を明らかにするとともに、(3)人権委員会の組織及び権限を定める。

 3-4.〔人権委員会法上の「人権」定義〕
 人権委員会法上の「人権」とは、日本国憲法第3章に規定された人権及び日本が締約国となっている人権諸条約が規定する人権をいう。

 3-5.〔地方及び国における人権委員会の設置〕
 政府から独立した国内人権機関として、各都道府県及び政令市ならびに国に人権委員会を設置する。(以下、前者を「地方人権委員会」、後者を「中央人権委員会」という。)中央人権委員会は国家行政組織法第3条にもとづく独立行政委員会とし、これを内閣府に置くものとする。

 3-6.〔地方人権委員会における人権相談窓口の設置〕
 地方人権委員会は、地域住民が容易に利用できる体制を整えるため、各市区町村に少なくとも1箇所人権相談窓口を設置する。人口規模の大きい自治体にあっては、人口30万人に1箇所を目途に人権相談窓口を追加設置する。広大な面積を抱える地域については、人口規模にかかわらず適宜人権相談窓口を追加設置する。

 3-7.〔国際機構、他国の国内人権機関及びNPO/NGOとの協力〕
 中央人権委員会は上記の活動を実施するにあたり、国際連合等の国際機構、他国の国内人権機関及び人権の促進と保護にあたっている国際・国内NPO/NGOとの連携協力をはかる。地方及び中央人権委員会は、市民社会との協働を確保するため、国内NPO/NGOとの恒常的な協議の場を設けるものとする。

 3-8.〔委員及び委員数等〕
 地方及び中央人権委員会には、人権問題に関する経験と高い識見を有した常勤の委員5?7名を置く。人権委員会の委員には、一定数の法曹有資格者を加えなければならないものとする。委員の任期は6年とし、3年ごとに半数を選び直す。再任は1期のみ認めるものとする。

 3-9.〔地方人権委員会委員の任免と議会の同意〕
 地方人権委員会の委員は、その委員会が置かれる都道府県又は政令市の議会の同意を得た上で、都道府県知事又は政令市の市長が任命する。地方人権委員会の委員を罷免するには、その委員会が置かれている都道府県又は政令市の議会の罷免要求決議を経なければならない。

 3-10.〔中央人権委員会委員の任免と国会の同意〕
 中央人権委員会の委員は、国会の両議院の同意を得た上で、内閣総理大臣が任命する。中央人権委員会の委員を罷免するには、両議院の罷免要求決議を経なければならない。

 3-11.〔委員の独立性・多元性の確保〕
 地方及び中央人権委員会委員の選定については、「国内人権機関の地位に関する原則」(パリ原則)を強く念頭に置き、ジェンダー・バランスやマイノリティ出身者の確保等に留意するとともに、NPO/NGO、労働組合、弁護士、ジャーナリストなど市民社会の多元的な代表を加えることによって、委員の独立性と委員構成の多元性を実現しなければならない。また、委員の平均年齢は、55歳を超えないものとする。

 3-12.〔地方人権委員会事務局とその職員の専門性・多元性の確保〕
 地方人権委員会には、その事務を処理するために事務局を置く。事務局職員は、職務の遂行に必要な専門的識見又は経験を有する弁護士、自治体の職員、NPO/NGO職員等から採用する。また、職員のジェンダー・バランスを確保し、多様なマイノリティ出身者からひろく職員を採用するなど、社会の多元性を反映した職員構成となるよう配慮する。加えて、国の行政機関等から地方人権委員会事務局に移行ないし出向する職員は、常に定数の半数以下にとどめ、その他は自治体の職員、弁護士、NPO/NGO等の人権活動経験者等から採用しなければならない。

 3-13.〔中央人権委員会事務局とその職員の専門性・多元性の確保〕
 中央人権委員会には、その事務を処理するために事務局を置く。事務局職員は、職務の遂行に必要な専門的識見又は経験を有する弁護士、国及び自治体の職員、NPO/NGO職員等から採用する。また、職員のジェンダー・バランスを確保し、多様なマイノリティ出身者からひろく職員を採用するなど、社会の多元性を反映した職員構成となるよう配慮する。加えて、委員会設置時に法務省等の国の行政省庁から中央人権委員会事務局に移行する職員は、原則として元の所属省庁に戻ってはならない。さらに、国の行政省庁等から委員会に移行ないし出向する職員は、常に定数の半数以下にとどめ、その他は自治体の職員、弁護士、NPO/NGO等の人権活動経験者等から採用するものとする。

 3-14.〔専門職員の養成〕
 地方及び中央人権委員会の事務局職員の中に、調査を担当する調査官、調停・仲裁を担当する調停官、訴訟援助を担当するリーガル・アドバイザーなどの専門職員を置く。人権委員会はこれら専門職員を養成するための研修プログラムを整備し、そのプログラムを修了したもの者の中から専門職員を選任する。

 3-15.〔人権委員会の予算〕
 地方及び中央人権委員会の予算は独立してこれを計上し、かつ予算の編成にあたっては、人権委員会の自主性・独立性を尊重しなければならない。

 3-16.〔年次報告書の作成・提出〕
 地方及び中央人権委員会は年次報告書を作成し、地方人権委員会は委員会が置かれている都道府県又は政令市の議会に、中央人権委員会は国会に提出しなければならない。年次報告書には、過去一年間の委員会の活動内容、委員会および委員会事務局の構成、申立の処理状況、予算及び決算、代表的なあるいは特記すべき事案の具体例等を盛り込むものとする。
 年次報告書は、報道発表、冊子、インターネットなどを通じて、広く一般にも公開されなければならない。


4. 人権委員会に求められる救済機能について

 人権委員会は人権侵害・差別事案に関する申立を受理し、あっせん、調停、仲裁等を通じて人権侵害の救済を図る。また、正確な事実関係の把握を期するために、必要に応じて当該事案に関する調査を行う。

 4-1.〔調査・救済に際しての基本原則〕
 人権委員会による人権侵害・差別事案の調査・救済に際しては、非権力的・任意的な手法をもってこれを行うことを旨として、説得と理解によって事案の解決を図ることを基本原則とする。
 ただし、公務員又は行政機関による公権力の行使に伴う人権侵害・差別事案、ならびに法律上明確に禁止された人権侵害・差別事案の調査・救済に関し、人権委員会は一定の強制権限を持つものとする。

 4-2.〔申立人の範囲〕
 人権委員会に対する申立は、人権侵害・差別を受けた当事者(代用監獄・拘置所・刑務所・入管施設等に収容されている被拘禁者を含む)はもちろんのこと、その支援者及びNPO/NGO等の第三者でも行えるものとする。ただし、第三者による申立は、可能な限り当事者本人の同意を得ることを原則とする。
 当事者が何らかの理由で判断能力や意思表示能力に欠ける場合には、人権委員会は当事者の意思表示を可能にするための適切なサポートを講じなければならない。

 4-3.〔表現の自由に関わる人権侵害・差別事案にかかる申立の取扱い〕
 人権委員会は、表現行為による人権侵害・差別事案に関する申立を受けた場合には、表現の自由を制限することがないよう最大限の配慮をしつつ申立人の実効的な救済の確保に努める。

 4-4.〔マスメディアに関わる人権侵害・差別事案に係る申立の取扱い〕
 人権委員会は、報道・放送・出版などマスメディアの報道・表現活動に起因する人権侵害・差別事案に関する申立を受けた場合には、マスメディアの表現の自由・報道の自由・取材の自由を制限することがないよう最大限の配慮をしつつ、申立人の実効的な救済の確保に努める。そのため、「放送と人権等権利に関する委員会(BRC)」のような独自の救済システムが機能している分野にかかる申立については、原則としてこれを受理せず、申立人に当該救済システムを利用するよう促すものとする。また独自の救済システムが機能していない分野にかかる申立についても、人権委員会は新聞倫理綱領(2000年6月21日制定)のような業界団体の倫理綱領等を尊重し、当該団体と協議し、申立人の実効的な救済と言論・報道の自由との両立に努める。関連する業界団体ならびに倫理綱領や行動綱領等の自主的なルールが存在しない場合においても、人権委員会は申立人の実効的な救済と表現の自由との両立に最大限努める。

 4-5.〔国、自治体又は民間団体による人権侵害・差別救済制度との関係〕
 国、自治体又は民間団体がすでに救済制度を運用している特定人権分野に関連する申立があった場合には、人権委員会は当該制度の運用主体と十分に協議し、申立人の実効的な救済の確保に努める。ただし、人権委員会は他の救済制度が存在していることを理由として、申立の受理を拒んではならない。

 4-6.〔国、自治体又は民間団体による人権侵害・差別救済制度との協力〕
 人権委員会は、人権侵害・差別にかかる救済制度を運用している国、自治体又は民間団体と恒常的かつ密接に協力し、人権侵害・差別にかかる申立人の実効的な救済の確保に努める。

 4-7.〔地方人権委員会への相談〕
 地方人権委員会は、有給の専門職である人権ソーシャルワーカー及び人権促進市民ボランティア(後記8参照)と協力して、人権侵害や差別に関する相談を受け付ける。地方人権委員会は、必要に応じて、相談者がケースワーカーや心理カウンセラーなどによるケアーを無料で受けられるよう配慮する。

 4-8.〔地方人権委員会の所掌〕
  地方人権委員会は、(1)中央人権委員会の所掌する事案以外のすべての人権侵害・差別事案、(2)当該都道府県又は政令市住民のかかわる事案、及び(3)当該地方で生じた事案を扱う。

 4-9.〔中央人権委員会の所掌〕
 中央人権委員会は、(1)複数の都道府県・政令市にまたがる人権侵害・差別事案、(2)国家公務員又は国の行政機関による公権力の行使に伴う人権侵害・差別事案(3)深刻で重大な人権侵害・差別事案等を扱う。

 4-10.〔地方人権委員会への申立〕
 人権侵害・差別に関する申立は、原則として地方人権委員会が受理し、これを処理する。地方人権委員会が受理した申立が、中央人権委員会が処理すべき事案であった場合には、地方人権委員会は中央人権委員会にその処理を委ねる。
 人権委員会が自ら人権侵害・差別事案を探知した場合は、人権侵害・差別を受けた者に申立を促すことができるものとする。

 4-11.〔他の機関等への付託・捜査機関への告発〕
 相談又は申立を受けた人権侵害・差別事案の内容が、他の機関又は団体等による救済に適しており、かつ当該機関又は団体等に事案の処理を委ねた方が、相談者又は申立人の利益に適うと判断される場合には、人権委員会は当該事案の処理を他の機関又は団体等に付託することができる。
 相談又は申立を受けた人権侵害・差別事案の内容が、刑事事件を構成すると判断される場合には、人権委員会は当該事案を捜査機関に通報又は告発する。ただし、捜査機関に対する通報又は告発が、相談者又は申立人の不利益になる場合には、原則としてこれを行ってはならない。

 4-12.〔人権委員会によるあっせん、調停、仲裁〕
 地方及び中央人権委員会は、申立を受けた人権侵害事案の内容にしたがって、その解決のために必要なあっせん、調停又は仲裁を行う。あっせん、調停、仲裁に際して地方及び中央人権委員会は、必要な資料・情報を収集して正確な事実関係の把握に努めるとともに、当事者に十分な弁明の機会を与えなければならない。
 地方人権委員会は、あっせん、調停によって事案の解決が図れなかった場合には、当該事案を中央人権委員会に付託することができる。

 4-13.〔人権委員会の調査権〕
 地方又は中央人権委員会によるあっせん、調停等によっても解決が見られなかった事案については、地方又は中央人権委員会がこれを調査する。そのために、地方及び中央人権委員会には適切な調査権限を付与し、当事者又は関係者に対する出頭要求、釈明要求又は資料提出要求等を通じて、的確な事実認定が行えるようにする。

 4-14.〔人権委員会の強制調査権〕
 地方及び中央人権委員会は、公務員又は行政機関による公権力の公使に伴う人権侵害・差別事案の調査にあたって、当事者たる公務員、関係者、又は関係行政機関の協力が得られず、かつ当該事案の解決にとって必要であると認められる場合には、当事者又は関係者に対する出頭命令、質問、関係場所への立入、資料提出命令などの強制調査を行えるものとする。
 調査の対象となった個人又は行政機関は、正当な理由なく調査を拒否できず、調査の拒否、虚偽の報告・陳述、調査の妨害等に対しては、罰金を科すことができるものとする。ただし、調査の対象が私人である場合には、事前に告知と聴聞の手続を踏まなければならない。

 4-15.〔人権委員会の勧告権〕
 調査の結果、人権侵害行為が認められた場合には、地方又は中央人権委員会は当該行為の停止、侵害された権利の回復・補償、損害賠償、人権侵害を受けた者に対する謝罪、反差別プログラムの策定・実施等を勧告することができる。
 勧告の相手方が勧告を応諾しない場合には、地方又は中央人権委員会は勧告を受けた者の氏名及び勧告の内容を公表することができる。

 4-16.〔地方人権委員会の意見表明権〕
 地方人権委員会は、自らが中央人権委員会に付託した事案、所掌地域内で発生した事案又は所掌地域内の住民が関与した事案を中央人権委員会が処理するに際して、随時意見を述べることができる。地方人権委員会から意見が表明された場合には、中央人権委員会は地方人権委員会と協議し、その意見を十分に尊重しなければならない。

 4-17.〔人権委員会による訴訟援助参加〕
 申立のあった事案が訴訟になった場合には、地方及び中央人権委員会は人権侵害・差別を受けた者に対して、訴訟費用の扶助、弁護士(代理人)のあっせん、法律上の助言、資料提供等、適切な援助を行い、また必要に応じて当該訴訟に参加することができるものとする。

 4-18.〔人権委員会の申立人への回答義務〕
 地方及び中央人権委員会は、申立人の求めに応じて、申立処理の経過及び結果について回答する義務を負う。


5. 人権委員会に求められる政策提言機能について

人権委員会は、人権に関する市民の要請に応えるため、さらに、人権侵害・差別に関する救済事案の解決に関し蓄積された経験を生かすため、国会、内閣、ならびに都道府県又は政令市の議会及び首長に対して、人権政策に関する提言を行う。

 5-1.〔中央人権委員会の政策提言機能〕
 中央人権委員会は、国会および内閣に対し、(1)国の人権政策および施策全般、(2)人権問題にかかる法令の制定又は改廃、(3)人権施策の実施にかかる行政慣行の変更、(4)人権諸条約の批准又はこれへの加入、(5)国際連合の人権保障機関や他国の国内人権機関との協力、(6)日本が締約国となっている人権諸条約上提出が義務づけられている政府報告書の作成等、について提言を行うことができる。その際、日本が締約国となっている人権諸条約機関の最終所見を考慮する。
 国会又は内閣は、中央人権委員会から受けた提言の内容及び提言に対する対応について、市民に説明しなければならない。

 5-2.〔地方人権委員会の政策提言機能〕
 地方人権委員会は、都道府県または政令市の首長ならびに議会に対し、(1)当該地方自治体の人権政策および施策全般、(2)人権問題にかかる条例の制定又は改廃、(3)人権試作の実施にかかる行政慣行の変更等、について提言を行うことができる。
 首長又は議会は、地方人権委員会から受けた提言の内容及び提言に対する対応について、市民に説明しなければならない。

 5-3.〔中央人権委員会による注意喚起〕
 中央人権委員会は、日本における人権状況一般ならびに特定分野の人権問題について、国会及び内閣に対し注意を喚起し、対策を講ずるよう促すことができる。

 5-4.〔地方人権委員会による注意喚起〕
 地方人権委員会は、当該地方における人権状況一般ならびに特定分野の人権問題について、当該地方の議会及び首長に対し注意を喚起し、対策を講ずるよう促すことができる。


6. 人権委員会に求められる人権教育・啓発機能について

 人権委員会は、人権侵害・差別に関する救済事案の解決に関し、蓄積された経験を生かし、人権侵害や差別を行なった者を説得し、人権侵害・差別を受けた者を支援するなどの人権教育・啓発活動を行う。

 6-1.〔人権委員会の人権教育・啓発活動〕
 地方及び中央人権委員会は、「『人権教育のための国連10年』に関する国内行動計画」(1997年7月4日)及び人権教育・啓発推進法にもとづき策定される基本計画を踏まえ、人権尊重の意識を高め、人権という普遍的文化を普及発展させるため、特定職業従事者を対象とする人権教育・啓発活動を積極的に推進する。

 6-2.〔地方人権委員会が特に担うべき人権教育・啓発活動の分野〕
 地方人権委員会は、特定職業従事者を対象とする人権教育・啓発活動の中でも、立法関係者(議会議員を含む)や法執行機関職員(矯正施設・更正保護官、消防職員、警察官など)の人権教育・啓発・研修を充実強化するため、情報提供ならびに助言、協力及び援助を積極的に行う。

 6-3.〔中央人権委員会が特に担うべき人権教育・啓発活動の分野〕
 中央人権委員会は、特定職業従事者を対象とする人権教育・啓発活動の中でも、立法関係者(国会議員ふくむ)、司法関係者ならびに医療関係者(医師、歯科医師、薬剤師、看護婦等)の人権教育・啓発・研修を充実強化するため、情報提供や助言、協力および援助を積極的に行う。また、司法研修所の講義内容に「人権法」及び「国際人権法」が含まれるよう特に配慮する。さらに、法執行機関職員(検察事務官、矯正施設・更正保護官、入国管理関係職員、海上保安官、消防職員、警察官など)や自衛官への人権教育・啓発・研修を充実強化するため、情報提供ならびに助言、協力及び援助を積極的に行う。

 6-4.〔人権委員会の存在と役割の広報〕
 地方及び中央人権委員会は、人権委員会の存在と役割を積極的に広報し、広く市民が人権委員会を活用できるよう努めなければならない。


7. 人権を所掌する行政機関の新設を

 上記「人権政策三原則」の「総合性の原則」をふまえ、人権政策の立案及び実施にあたる総合調整機能をもつ行政機関を内閣府及び各自治体に新設する。

 7-1.〔内閣府人権庁の設置〕
 国の人権施策の実施主体として早急に内閣府に人権庁を設置し、人権政策・施策にかかる総合調整機能をこれに持たせる。人権庁設置までの移行的措置として、内閣府に「人権政策省庁間連絡会議」を設置する。

 7-2.〔法務省による人権擁護行政の原則的終了〕
 法務省人権擁護局の人権擁護行政は、原則として終了し、これを中央人権委員会に移行させる。

 7-3.〔法務省法務局人権擁護部及び地方法務局人権擁護課等の廃止〕
 法務省の法務局人権擁護部及び地方法務局人権擁護課等を直ちに廃止し、その所掌事務を地方人権委員会事務局に移管する。

 7-4.〔自治体による人権行政の推進と人権部局の整備・新設〕
 都道府県及び市区町村における人権施策の実施機能を強化するため、人権問題に関する政策立案機能及び総合調整機能を有する人権問題担当部局を整備又は新設する。


8. 人権擁護委員制度の抜本的改編を

 現行の人権擁護委員制度を抜本的に改編し、人権問題に関する有給の専門職である人権ソーシャルワーカーを新設する。

 8-1.〔委員数の削減の削減と人権ソーシャルワーカーへの移行〕
 現行の人権擁護委員数約14,000名を6,000名に縮小する。その上で、各年度2,000名づつに3か月間の人権研修を実施し、人権研修を受けた人権擁護委員を「人権ソーシャルワーカー」とする。

 8-2.〔人権ソーシャルワーカーの職務と待遇〕
 人権ソーシャルワーカーは、地域における様々な人権侵害・差別に関する相談を受け、必要な援助を行う。また、人権ソーシャルワーカーは、地方又は中央人権委員会の指揮監督の下、人権侵害・差別事案に関するあっせん、調停、仲裁、調査を行う。人権ソーシャルワーカーは有給とし、少なくとも週に数日は職務に専念させ、専門職化する。

 8-3.〔人権ソーシャルワーカーの配置〕
 人権ソーシャルワーカーは、各地方人権委員会に所属し、その地方人権委員会が置かれている都道府県又は政令市で発生した事案を取り扱う。人権ソーシャルワーカーは、都道府県又は政令市の人口2万人に対し1人置くものとする。人権ソーシャルワーカーに関する事務は、地方人権委員会事務局が担当する。

 8-4.〔人権ソーシャルワーカー研修所〕
 人権ソーシャルワーカーを対象に、国家公務員初任者研修に準じて、3か月間の研修を実施する。このため人権ソーシャルワーカー研修所を設ける。人権ソーシャルワーカー研修所の事務は、中央人権委員会事務局が担当する。

 8-5.〔人権促進市民ボランティア制度の新設〕
 人権ソーシャルワーカーに協力し、地域における人権問題を発掘するボランティアとして、新たに「人権促進市民ボランティア」制度を創設する。人権促進市民ボランティアは、地域における様々な人権侵害・差別に関する相談を受け、必要な援助を行う。人権促進市民ボランティアの活動にかかる事務は、地方人権委員会が担当する。

 8-6.〔人権促進市民ボランティアの配置〕
 人権促進市民ボランティアは、各小学校区又は中学校区に最低1人置く。人権促進市民ボランティアの氏名・住所・電話番号等は、市区報等を通じて広く公開し、人権侵害や差別を受けた者が、気兼ねなく相談に訪れることができるようにする。

 8-7.〔人権ソーシャルワーカーの選任方法〕
 人権ソーシャルワーカーは、3か月間の人権研修を受けた旧人権擁護委員、又は人権問題に関する識見・活動実績・意欲を有する者の中から地方人権委員会が選任する。人権ソーシャルワーカーの選任にあたっては、選考基準を明確にし、かつ選考過程の透明化を図るとともに、外国人を含め人権侵害・差別を受けやすい当事者を積極的に選任する。人権ソーシャルワーカーの平均年齢は五〇歳未満とし、一方の性が六割を越えないものとする。

 8-8.〔人権促進市民ボランティアの選任方法〕
 人権促進市民ボランティアは、地域において人権相談活動、人権問題関連のケースワーカー、シェルター活動、人権救済活動等の活動実績がある者の中から地方人権委員会が選任する。人権促進市民ボランティアは原則として公募とし、選考に当たっては選考基準を明確にし、かつ選考過程の透明化を図らなければならない。選任に際しては、年齢構成、ジェンダー・バランスに留意するとともに、外国人を含め人権侵害・差別を受けやすい当事者を積極的に選任する。

 8-9.〔地方人権委員会への事案付託〕
 人権ソーシャルワーカー及び人権促進市民ボランティアは、自らが受けた相談の内容が、人権委員会が処理すべき人権侵害・差別構成すると思料される場合には、地方人権委員会に事案を委ねる。


9. 議会の人権問題審議機能の強化を

 人権問題に関する国会及び地方議会の審議機能を強化し、人権問題を広範かつ総合的に審議する慣行を確立する。

 9-1.〔国会の人権問題審議機能の強化〕
人権問題に関する国会の審議機能を強化し、国政調査権を有効に機能させるため、衆議院及び参議院の予算委員会又は行政監察委員会において、人権問題を広範かつ総合的に審議する慣行を確立する。そのために、通常国会において人権問題を集中審議する期間(「人権国会」)を設けることを検討すべきである。あわせて、人権問題にかかる立法能力・国政調査能力を高めるために、両院の事務局ならびに国立国会図書館調査及び立法考査局に人権問題調査室を新設する。

 9-2.〔地方議会の人権問題審議機能の強化〕
 人権問題に関する地方議会の審議機能を強化するため、各会期において議会内で人権問題を集中審議する期間を設ける。


10. 人権保障のための実効的な司法制度改革を

 現在進められている司法制度改革においては、本来、その根本的な目的の一つとして位置づけられるべき実効的な人権保障の確保に関する議論が皆無に等しい。何のための司法制度改革であるのかという基本的な制度改革の立脚点を再確認する必要がある。こうした点については、2001年11月に制定された「司法制度改革推進法」の実施においても、十分考慮する必要がある。

 10-1.〔人権法研修〕
 法曹に対する人権法教育を充実・徹底させるため、国際人権法を含む人権法を司法修習プログラムに採り入れる。現職裁判官、書記官および家庭裁判所調査官等に対しても、同様の人権法研修を実施する。

 10-2.〔事案処理の専門化〕
 高等裁判所及び地方裁判所に人権侵害・差別事件を審理するための専門部を新設することを含め、人権侵害・差別事案の専門的審理のあり方を検討する。

 10-3.〔「法科大学院」における人権法教育〕
 司法制度改革の中心的なテーマの一つである「法科大学院」制度の検討にあたっては、上記の趣旨からも、同制度において国際人権法を含む人権法教育を充実させるためのカリキュラムの整備等を積極的に推進する。


11. 国際人権法の国内的実施の強化を

 日本におけるより良い人権保障制度の実現において、国際人権法の国内的実施の強化は不可避の課題である。特に各人権条約上の個人通報制度については、日本社会が、その受諾の「検討」ではなく「実行」の段階を迎えていることを誠実に認識すべきである。

 11-1.〔個人通報制度の受諾および留保等の撤回〕
 自由権規約第一選択議定書及び女性差別撤廃条約選択議定書を早期に批准し、同時に人種差別撤廃条約第14条及び拷問等禁止条約第22条にもとづく宣言をすることにより、各人権条約の実施機関に日本における人権侵害・差別事案にかかる苦情を個人通報できる体制を整備する。あわせて、人種差別撤廃条約第4条を含む各人権条約に対する留保等を撤回する。こうした措置により国際人権法の国内的な実施体制を強化する。

 11-2.〔人権委員会による国際人権法の積極的な活用〕
 「3-4.人権委員会法上の『人権』の定義」においても述べたように、新たに設置する地方および中央人権委員会の諸活動においては、より実効的な救済、政策提言等の実施のために国際人権法を積極的に活用する。その際には、諸外国の取り組みおよび各人権条約機関による一般的意見、最終所見等を参考とする。

 11-3.〔地域的人権保障システムの確立〕
 アジア・太平洋地域における地域的人権保障システムの確立へ向け、各国ならびに関連する国際機構・NGOとの連携協力を促進する。また、人権委員会の新設後は、「アジア・太平洋国内人権機関フォーラム」へ積極的に参加する。


12. 市民社会との協働と「人権文化」の定着を

 人権政策のさまざまなプロセスへの地域住民やNGOなどの市民社会の主体的な参加や関与を通じた、いわゆる「協働」の実現は、合意されたルールにより運営され、開かれた社会づくりが必要とされる今日において、日本社会の不可欠の課題である。また、日本社会の根底に真の「人権文化」が確立した時にこそ、より実効的な人権保障が可能となる。

 12-1.〔市民社会との協働〕
 人権政策の立案及び実施にあたっては、市民社会との積極的かつ恒常的な協働によりこれを推進する。また、そのための具体的な協働のあり方を早期に検討する。

 12-2.〔「人権文化」の確立〕
 以上の人権政策及び施策の立案及び実施によって、日本国内に「人権文化」を定着させ、同時にアジア・太平洋地域及び世界に向けて「人権文化」を発信し、21世紀を人権の世紀とする国際的な取り組みに積極的に貢献する。


 

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