【資料4】
同性愛者にかかわる公権力による人権侵害事例


特定非営利活動法人 動くゲイとレズビアンの会
1 集団誹謗的表現または表現規制にかかわるもの

1-1)文部省「生徒の問題行動に関する基礎資料」(1979年刊)
・内容:同性愛について「倒錯型性非行」の一つとして紹介し、「社会的にも健全な社会道徳に反し、性の秩序を乱す行為となりうるもので、現代社会にあっても是認されるものではないであろう」と記述。

・問題点:本書は学校教育に携わる教職員や教育行政に携わる職員らを対象とする手引書。文部省自らが同性愛に関する偏見や差別をあおった事例である。1990年に当会が東京都「府中青年の家」利用を拒否された際、その決定の一つの論拠となった。

1-2)東京都「世界エイズデーイベント」(1992〜94年)
・内容:東京都は、都庁前広場にてエイズ関連NGOの参加のもとに「世界エイズデーイベント」を開催したが、当会はNGOブースにおいて正式名称である「動くゲイとレズビアンの会」の掲示を行わないよう東京都当局から指導され、数年間にわたってそれに従わざるを得ない状況に置かれた。
・問題点:「一般市民が『同性愛』『ゲイ』『レズビアン』の字を見て混乱する」という理由の元に、同性愛者の社会への顕在化を妨げた事例。

2 公共施設の利用権に関わるもの

2-1)東京都「府中青年の家」の同性愛者団体による宿泊利用拒否
・内容:東京都教育委員会は1990年4月、「男女別室ルール」を根拠に同性愛者団体の「青年の家」宿泊利用を拒否する決定を行った。
・問題点:公権力が同性愛者の施設利用権を違法に剥奪した事例。1997年に本書分外方であったことが裁判で確定し、東京都は損害賠償を支払った。

3 警察にかかわるもの

3-1)1993年に札幌市で起こった警察による不当な捜査の事例
・内容:1993年、札幌市で起こった殺人事件に関して、札幌北警察署が数百名の同性愛者に対して、プライバシーの公表をちらつかせながら、強引に交友関係、性生活の具体的内容を聞き出したり、指紋、頭髪、唾液などの採取を強制的に行った。
・問題点:同性愛者が自己の性的指向を明らかにすることができないことを利用し、それを脅迫の材料として、同性愛者の弱みにつけ込んで強制的な捜査を行ったもの。
3-2)「暴力バー」関連の被害者への警察の対応
・内容:1999年末から2000年初頭にかけて、都内で多発した同性愛者対象の「暴力バー」の被害を受け被害届を提出しにいった複数の同性愛者が、捜査員に話し方が女性的であることを嘲笑されたり、「女には興味ないのか」などとはやし立てられる、自分の性的指向について興味本位に聞かれるなどのいやがらせを受けた。
・問題点:警察官が同性愛について正しい理解をもたず、取締りの対象としたり、軽蔑・嘲笑の対象とした事例。
3-3)警察の留置場に於ける不当な対応
・内容:1996年、署内に留置されていた同性愛者の男性に関して、同性愛と類推してエイズ感染を疑い、一人だけ割り箸で食事をさせた。また、留置場の扉にある遮蔽板を撤去したため、男性がさらしものになりかねない状況が発生した。
・問題点:同性愛、エイズそれぞれについて、正しい情報に基づかず、類推によって他の被留置者よりも不利な扱いを行った事例。

4 矯正施設・入管施設に関わるもの

4-1)拘置所における不十分な医療提供
・内容:拘置所に拘置されていた同性愛者の男性の歯(複数)の状態が悪化し、おかゆ状のもの以外食べることが不可能になっているにもかかわらず、公費による入れ歯の作成等を認めず、私費による外部治療の許可もなされなかった。
・問題点:拘置所における医療提供の劣悪さにより、男性は長期間、おかゆとみじん切りにしたおかず以外のものを口にできない状態が続いている。被拘置者が健康な最低限度の生活を送る権利が侵害されている事例。弁護士会による勧告も出されたが、拘置所側はこれを無視した。
4-2)入管施設に於ける不十分な医療提供
・内容:入国者収容所に収容されている外国人同性愛者の男性の歯の状態が悪化しているにもかかわらず、適切な治療が受けられず、また私費による外部治療の許可もなされていない。また、頭・耳の痛みについても検査・医療提供がなされていない。
・問題点:入国者収容所においても、最低限の医療提供すら行われていない。設備、処遇、人員など様々な制限により、被収容者の健康で文化的な最低限度の生活が脅かされている事例。


 

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