人権擁護推進審議会「中間とりまとめ」とインターネット上の差別煽動問題」について


2001.1.19
田畑重志

さて。人権擁護推進侵害の中間とりまとめがだされましたが、この中でインターネット上の差別扇動問題は先送りされほとんどその内容が「他の省庁と検討のうえ」といった消極的な内容で締めくくられてしまうだけにおわりました。これについて私は個人として次のようなパブリックコメントを出しています

<パブコメ本文>

「審議会において、インターネット上の課題はそれ以外のメディアとして位置付けられ、その中で差別が次のように記載されている

イ  その他のメディアによる人権侵害
 インターネットは,個人が不特定多数の人に向けて大量の情報を発信することを可能とし,これを悪用した差別表現の流布や少年被疑者等のプライバシー侵害の問題が顕在化している。これらについては,まず一般の差別表現等としての救済の在り方を検討すべきであるが,インターネットに固有のものとして,通信の秘密で守られた発信者情報の開示等の問題があり,これについては,関係省庁による検討状況も踏まえて,実効的な救済の在り方を引き続き検討することとする。

まずこの中で抜け落ちているのは、差別表現と差別情報(部落地名リストなど)の違いなど具体的な論点整理が未だになされていないことである。またこれらの課題は特に現在の憲法下においても「差別扇動」などの行為において「実質的危険性があるものについて」法的にも合憲であるという考えがあるように法的な規制救済は可能である。すでに「検討課題」とするのではなく現在は具体的な施策をさまざまな具体例の中からケースごとに課題を整理し、マルチメディアの特異性を考慮したマルチメディア人権擁護法などの具体的施策を講じる必要性がある
また同時に被差別部落など社会的弱者の現状を考え、デジタルデバイスの問題を解消するための救済を含めた現在試案されている独立救済機関とは別の救済啓発機関をNGOとともにつくりあげていく必要性がある。

そのためには私個人においても70事例に及ぶ差別事象がインターネット上において報告されているというなかで、あまりにも情報収集がなされておらず具体的事例が乏しい中で、通信の秘密の観点から先送りしただけの内容であり、問題把握がなされていないのではないかと思える
今後具体的事例をきちんと整理され、その中での課題を整理する中でみえる教育啓発上の課題も含め論議整理され、この問題が実効的、実務的に有効な規制救済制度として次回は出されることを望みたい。」

<解説>

以上のように全文1000字前後という制約の中で書けることは大変少ないものですが、まずこの内容を説明しますと、差別扇動行為は「差別表現」と部落地名リストなどの「差別情報」と分けることができます。これらの内容を見ると身元調査に即座にされかねない地名リストなどは実質的にも危険性が大きく悠長に検討課題としている問題ではないのです。こうした社会的弱者抜きの内容であふれた中間まとめの中で、広域性にとみ情報伝達速度の速い差別扇動問題はその特異性やメディアと表現の自由の問題を考慮に入れて、現在思案されている独立した人権救済機関にひとくくりにするのではなく、更に独立した人権救済機関の必要性やマルチメディアのみを対処とした別の人権擁護法を提案したのです
今回の中間まとめは他の省庁との関連のみを気にし、具体的事例やそこから見える具体的事例を無視したものであり到底納得できるものではありません

今後はこの人権フォーラム21においてもこの差別扇動問題と救済制度の役割について、更に発展した論議をするとともに審議会に文書を提出するなどの具体的な行動が望まれます


 

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