人権擁護推進審議会『中間取りまとめ』への意見


前川 実(人権教育国際交流委員会事務局長)

「中間取りまとめ」は人権侵害類型として、「差別」、「虐待」、「公権力による人権侵害」、「メディアによる人権侵害」の4類型を提示し、類型別に救済の措置と手法を列挙する(第4−1)。
 しかし、「差別」と「虐待」は人権侵害事象の現れ方であり、他方「公権力」と「メディア」は人権侵害主体である。この類型化は、異質なものの列挙であり、妥当でない。

 国際社会で広く承認された差別および人権侵害の定義としては、人種差別撤廃条約がよくしられている。現在、国連は、2001年9月の反人種主義・差別撤廃世界会議(南アフリカ)の成功に向けた取り組みの一環として、「反人種差別モデル国内法」の制定を各国政府に提唱し、人種差別撤廃条約の定義をさらに発展させている。

 すなわち、この反人種差別モデル国内法の第2項では、「この法律において人種差別とは、人種、皮膚の色、門地または国籍若しくはエスニック的出身にもとづくあらゆる区別、排除、制限、優先または不作為であって、国際法上認められた人権及び基本的自由を承認し、平等にこれを享受し又は行使することを、直接又は間接に妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう」としている。

 これとの対比で「中間取りまとめ」の人権侵害の4類型をみると、その特異性は際立っており、恣意的な分類のそしりは免れない。私の考える分類試案を<参考>として示す。

 人権侵害の行為主体別に人権侵害の類型化を進めるなら、「公権力による人権侵害」と「私人による人権侵害」の2分類となる。なお、民間については、企業・団体と個人に区分することも可能である。
 また人権侵害の形態別に類型化を試みると、「区別」、「排除」、「制限」、「優先」または「不作為」、「虐待(暴行・殺戮)」である。また「直接的差別」と「間接的差別」という説明もよく使われている。


 したがって望ましい類型化は、人権侵害行為の主体別類型化、及び人権侵害行為の携帯別類型化の2つの側面を網羅したものとすべきである。
 、「公権力による人権侵害」と「民間(私人)による人権侵害」のそれぞれにおいて、、「区別」、「排除」、「制限」、「優先」または「不作為」、「虐待(暴行・殺戮)」について明示すべきである。


<参考> 私案・人権侵害の類型

[a 主体別類型]

1 公権力による人権侵害
 1-1 法執行職員による人権侵害
    ・警察(警察官)
    ・刑務所(刑務官)
    ・入管(入管職員)
    ・矯正施設
 1-2 その他の公務員による人権侵害
    ・自衛隊
    ・医療・福祉施設
    ・学校
    ・その他の公務員

2 私人による人権侵害
 2-1 企業・法人による人権侵害
 2-2 


[b 形態別類型]

1 直接的差別・人権侵害
    区別
    排除
    制限
    優先
    不作為
    虐待(暴行・殺戮)

2 間接的差別・人権侵害
    区別
    排除
    制限
    優先
    不作為
    虐待(暴行・殺戮)


 

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