ナージャの村(写真集)
どこへ行けというのか。人間が汚した大地だろう。
本橋成一
原発事故で同じように汚染されたベトカ地区のパーブジェ村で移住を拒否してひとり住んでいた83歳のアルカジイ・ナボーキンさんに出会ったのはそんなときだった。「この牛たちにミルクをもらって、自分で収穫したじゃがいもを食べているよ。」
事故前2頭だった牛は汚染のため買い手のないまま増え続け、今や27頭になってその世話が大変になった以外、事故前と何も変わっていないだろう彼の暮らしに引き付けられてしまった。それにしても、なぜあんなに汚染された大地に当たり前に住みつづけられるのだろう。何度か彼のところに通ううちに、ある日どうして移住しないのかと聞いたのだった。
その時、老人はどうしてそんなことを聞くのかという顔をして「どこへ行けというのか。人間が汚した大地だろう。」と答えたのだった。それはぼくにとって強烈なひとことだった。まるで他人ごとのようなその問いをし、そしていつの間にか、地球にやさしくとか、傲慢な言葉を平気で言っている自分が恥ずかしかった。(あとがきより)
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