チェルノブイリからの風
....いのちというのはなんて不思議で、いとおしいのだろう
本橋成一
はじめて「石棺」の前にたったとき、「ここにはもう二度とくることはない、きたくはない」とおもったのです。けれどもぼくは、もう一度やってきてしまいました。なぜ、またきたのか、游と楽にぜひきいてほしいとおもうのです。
父さんがうつしてきたチェルノブイリの写真を仕事部屋でながめていたときのことです。現像からあがってきたばかりの写真です。
ルーペでのぞいていると、「石棺」の肩のあたりに何か......。
「まさか......」
でも、それはたしかに植物で、小さく風にゆれているようでした。
ぼくは、その植物をこの目でたしかめたいとおもってしまった......。
こうして今日、「石棺」と二度目の対面をしました。ファインダーをのぞいた瞬間、やっぱり植物だ! すごくうれしくなりました。しかもそれは育っていたのです。その上、まわりにも小さな草が二、三本風にゆれています。
游、楽、なんていうことだろうね。放射性物質をふくんだ、いってみれば病んだ塵の中で根をはった植物たち。
......いのちというのはなんて不思議でいとおしいのだろう。
写真機をかまえたぼくのほほをかすめて、やわらかいものがとびました。タンポポの種が「石棺」の前でたくさん舞っていたのです。(「游と楽へ(あとがきにかえて)」より)。
■定価:1500円(税込)
■発行:ポレポレタイムス社 発行:影書房
申し訳ありませんが、この写真集は在庫がありません。御了承ください。
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