2005年度 JCA-NET 定期総会
第五議案: 活動方針

JCA-NET理事会

2006年3月5日


1 活動方針に至る背景

1.1 2004年度以降の理事会の取り組み

2004年度総会において、理事会は会員制度の変更のための規約改正案を提案した。しかしこの提案は否決された。同時に提出されていた会員制度の変更を前提とした活動方針案は、可決承認された。

こうした状況の中で、市民組織JCA-NETは理事会での討議を重ねてきたが、具体的な活動を企画・実施することはほとんどできないまま現在まで経過した。

1.2 ネットワーク社会の深化にともなう市民運動の変化

市民組織JCA-NETはこの数年間、総会での確認にもとづき、インターネット政策、情報通信政策に対する活動を行ってきた (たとえば、住基ネット、ICANN : Internet Corporation For Assigned Names and Numbers、 WSIS : 世界情報社会サミットなど)。 これらの問題への取り組みを通じて、理事会は、ネットワーク社会の深化にともなう市民運動の変化を認識せざるを得なかった。

1.2.1 「サポートの需要」から「技術−社会的情報の需要」への変化

近年、市民運動、とくに公共政策へのコミットを主要な課題としている市民運動グループの多くは、 ICT(情報通信技術、いわゆるIT)についての情報を求めている。 これは、利便性を向上させ市民社会を豊かにするとともにセキュリティの強化 -- 監視社会の深化をもたらすICTの特性を理解することが、今後の市民運動の展開にとって重要だからである。 とくに、市民組織JCA-NETがこの3年間の市民運動の中で求められたことは、 技術サービスからICTについての社会的側面に関する情報提供に比重が移った。

市民運動は現在、「ICTという技術を利用するための情報」よりも 「ICTという技術を社会的にコントロールする情報」を必要としている。 しかしそのような情報の提供能力 -- 機能は、既存の市民運動の中に存在していなかったため、 市民組織JCA-NETにその役割が期待されているのが現状である。

1.2.2 APCの変化

APCもまた、変化している。その活動内容は、当初からの民衆のためのICT メディアの開拓を越え、 とくに開発途上国においてその環境に大きな影響のある「発展のための情報通信技術」(ICT4D)についての政策への関与を深める形で発展し、 世界情報社会サミット(WSIS)においては参加NGOの中で主要な役割を果たしている。 WSISに関しては、さらに他のNGOのICT政策参画のためのトレーニングパックやガイドブックといった 有用なマテリアルを提供するなどのサポートの面でもその存在感はNGO一般のなかで大きなものとなっており、 現在のAPCではICT政策への関与はその事業の主要な柱のひとつとなっている。

1.2.3 市民運動の要求に応えられないJCA-NETの現在の体制

市民組織JCA-NET内部について振り返ると、このような期待や状況に対応できる人材はほとんどおらず、 あるいは市民組織JCA-NETとして組織化することはできていない。 このような状況に対応するには、 JCA-NETサービスを中心とするネットワークコミュニティのメンバーの運動という枠組はほとんど意味を持たない。

ICT問題へのコミットの中で交流を深めてきた人たちのほとんどは JCA-NETの会員ではなく、 会員になるメリットを現在の 私たちは提供しえない。 現在の市民組織JCA-NETの枠組では、彼らを組織化し得ず、 ネットワーク社会の深化のなかで市民運動のニーズにこたえる組織としての役割を、私たちは果たすことができない。

1.3 JCA-NETサービスを取り巻く状況


1.3.1 JCA-NETサービスとは何か

つぎに、市民組織 JCA-NET の存立の基盤といってよい JCA-NET サービスを取り巻く状況について 述べるにあたって、JCA-NET サービスとはいったい何なのか、ということを確認しておく。

まず、市民組織 JCA-NET は任意団体として存在している。 一方、JCA-NET サービス は、(株)市民電子情報網(POEM)が提供する電気通信事業法に基づく、 市民組織JCA-NETの会員全員をユーザとするネットワークサービスである。

「市民組織 JCA-NET の会員全員をユーザとする」サービスが提供される前提として、 市民組織 JCA-NET と POEM は 委託受託契約 を結んでいる。 委託受託契約では、市民組織 JCA-NET は POEM に会員管理と会費請求を委託している。 その一方で、市民組織 JCA-NET は POEM からサービス料金の代理徴収を受託している。 この委託受託契約によって、

が可能になっている。 その一方、JCA-NET サービス契約それ自体は個々のユーザとPOEM の二者の間で直接結ばれるものであって、 市民組織 JCA-NET はサービス契約上にはあらわれない。

ただし、オプションサービスについては 独自Webサイト開設やメーリングリスト開設は ドメインの利用状況をチェックするという見地から理事会承認を行っており、 理事会が運用に一定の関与を行っている。 さらに、無料公開メーリングリストや、 市民組織JCA-NET の自身の活動や承認プロジェクトなどの形をとって 無料で独自Webサイトやメーリングリストを設置しているものについては、 委託受託契約に基づいて市民組織JCA-NETの事業をPOEMへ委託しているものと解釈されている。

1.3.2 POEMとの関係

2001年の日本消費者連盟からの公開質問を直接の契機として、 JCA-NETサービスおよび市民組織運営に関わる業務をめぐる市民組織JCA-NET とPOEMの位置づけ・関係の整備が行われた。

その結果、委託受託契約にもとづいて市民組織運営に関わる業務はPOEMに委託され、、 市民組織 JCA-NET の規約にもとづいて市民組織会員にJCA-NETサービスの利用が義務づけられ、 JCA-NET サービス自体はPOEMと会員との契約によって提供されることが確認・整備された。

これに従い、いわゆる「JCA-NETへの入会」が市民組織JCA-NETとの契約およびPOEMとの契約からなることが確認され、 また、市民組織会費/JCA-NETサービス利用料請求書、およびWeb上の料金表などの形式も、これに応じて変更された。

この結果、JCA-NETサービスの内容や質、サービス提供の信頼性・継続性などについて、 市民組織JCA-NETは管理や決定に直接関わらないことも確認されることになった。

1.3.3 会員の費用負担の限界

市民組織JCA-NETは、JCA-NETサービスが提供される前提として、設立当初、会員数1000人程度を目標とした経緯がある。 しかし、現実には設立以来それをはるかに下回る人数で推移してきた。現在はさらに減少する傾向にある。 このため、市民組織JCA-NETの会員総体は、JCA-NETサービスを受けるための十分な金銭的負担をしているとは言いがたい。 この状況は今後も改善される見込みがない。 従って、会員総体がこのままJCA-NETサービスを利用し続けることは、社会的に見て、公正な市民運動のあり方とは言いがたい。

1.3.4 商業サービスに流れる市民運動のインターネット利用

JCA-NETサービスの質は、長期にわたって従来レベルが維持されてきた。 いくつかのサービス分野 -- たとえばスパムメールの排除、 ウイルスメールの発信抑止などの機能について一定の質的向上がPOEMによって図られたことは評価すべきである。

しかしながら、JCA-NETサービスの積極的な展開は前節に述べた費用負担の不均衡があるためPOEMに求められる状況ではない。 この結果、JCA-NETサービス品目は、他のインターネットサービスが拡充、革新していく中で、 8年前のサービス開始時とほとんど変化がないまま今日に至っている。 blogをはじめとする現在広く普及しているインターネット上の新サービスは、サービス提供が話題になることはあったが、 実現されなかったか試験的な運用にとどまっている。このため平均的なNPO/NGOが容易に利用できる環境は整備されていない。

商業プロバイダーの広告収入などを基礎とする無料サービス、あるいは大規模なユーザー数を基礎とした廉価なサービスに対して、 JCA-NETサービスは割高に感じられるものになってしまった。 また、十分な資金が投入されないため、ビギナーユーザー向けのインターフェイス開発や、 それを支えるサーバーアプリの開発・整備・構築などがされず、実質的な新サービス不在となっている。 このため市民運動が商業プロバイダーに流れ、会員の維持・新規獲得につなぐことができていない。

1.3.5 市民組織JCA-NETの資金基盤と人的基盤の拡大は企画不能になっている

数年前から指摘されてきた以上のような環境下、サービスの優位性を失い、これを打開する資金力強化の展望がない環境下において、 JCA-NET 理事会は市民運動としての会員規模を拡大し新しい市民組織 JCA-NETのあり方を探るべく、 2004年度総会に規約改正を提案した。しかし、会員制度の変更提案が否決された結果、 会員の拡大 -- 資金基盤と人的基盤の拡大 -- は企画不能になっている。

2 活動方針


2.1 市民組織JCA-NETの既存の活動の終了

市民組織 JCA-NETの既存の活動は、2007年3月末までにすべて終了する。 JCA-NET サービスに関連する業務の扱いについては後で述べる。 それ以外の個別の活動については、関与する個々の会員の判断にゆだね、 理事会はそれについての必要な措置を行う。

なお、既存の活動終了後の市民組織JCA-NETの存続については、当該時期の総会にゆだねる。 理事会は必要と思われる準備を行う。


2.2 JCA-NETサービスの見直し

市民組織 JCA-NETの活動終了のためには、JCA-NETサービスのあり方を見直す必要がある。 具体的には、POEMと市民組織JCA-NETの間で交わされている委託受託契約を解消し、 JCA-NETサービス提供の根拠を、ユーザとPOEMとの2者間契約だけに整理する。

2.2.1 前提

1.3.1節で述べたように、JCA-NET サービス契約それ自体は 各ユーザとPOEMとの間の契約であり、市民組織がその契約に直接かかわることはない。

しかし、サービス料金の代理徴収、オプションサービスの承認業務、サービスの無料利用・提供は 市民組織 JCA-NET の活動があることを前提としたものである。


2.2.2 JCA-NETサービスに係わる市民組織JCA-NETとPOEMとの関係の整理

現在のJCA-NETサービス利用料などの代理徴収は終了し、 これらはPOEMの口座に直接支払うなどの方法とする。 また、オプションサービスの承認手続きは廃止する。

これらの変更を前提として、POEMと交渉を行う。


2.2.3 無料サービス利用者との関係の整理

無料公開メーリングリストや、そのほかのリソースの無料提供は、 市民組織JCA-NETの事業であり、委託受託契約によってPOEMに委託されている業務に含まれる。 委託受託契約の終了とともに、これらの無料提供は、市民組織の事業としては廃止する。

これらの内、市民組織JCA-NET の純粋な内部利用のための無料利用については活動終了なのでそのまま廃止とする。 一方、プロジェクトなどの形で無料提供が行われきたものや無料公開メーリングリストなど、 市民組織JCA-NET の活動終了とは直接関係のないものについては、 当該ユーザに対して、有料サービスへの移行が必要となることを説明し、交渉を行っていく。


2.2.4 JCA-NETサービス継続が見込めない場合の措置

市民組織 JCA-NET の活動が終了するとJCA-NET サービスの継続が見込めないと予見される場合、 会員利益のために必要な措置を検討し、可能であれば実施する。

3 議案

第五議案その1

総会は、第1章の内容を確認する。

第五議案その2

総会は、第五議案その1の可決を前提として、 第2.1節の活動方針を承認する。

第五議案その3

総会は、第五議案その1およびその2の可決を前提として、 第2.2節の活動方針を承認する。

A. 補足(議決の範囲外)

A..1 少数意見

 本活動方針をまとめるにあたっては、理事会内に以下のような少数意見があったことを付記しておく。

A..1.1 統合案

JCA-NETの将来構想は、多岐にわたりありますが、細かいことは後の検討課題として、ここでは、基本的なことのみを申し上げます。 将来構想の基本は、現体制となっている、poemとJCA-NETの二組織を統合することと思います。 何故、このような二組織体制にしたのかは、私なりに理解しています。私はその基本に賛同してJCA-NET参加しました。 当初は適切な方法であったと思います。 しかし、現在はインターネットの状況が変化してくると、当初に計画した機能は活用することは少なくなり、 他方、二組織ゆえの欠陥があらわとなってきたのではないでしょうか。 一組織にする方法は様々に考えられます。例えば、JCA-NETをpoemに吸収することもありましょうし、 NPO法人として別組織を発足させることも出来ましょう。具体的にどうするかは、今後の検討課題です。

A..1.2 意識改革

サービスレベルを下げたとしても、出来る限り基本的なサービスは継続したいと考えているが、 しかし現状ではたとえサービスレベルを下げたとしても、それもさほど長期にわたって維持できるという期待が持てない。 理事をはじめとして、運営にかかわりを持とうという会員の意識の変革がない限り、何をしても無駄なのではないかという気がしてならない。

JCA-NET は、運動体であると同時に、経済的な存在であり、経済的な基盤を確保しない限り継続しての運営は難しい。 しかしながら正直なところ、「経済的な基盤の確保」の優先順位を高くし、継続性が保障できるようにしようという動きはきわめて乏しい。

もちろん出費を削減することなどで多少の延命は可能だろうが、その途上で、 労働条件の悪化や一部役員の個人負担など、さまざまな犠牲といった好ましくない状況が更に加速するのではないかという懸念も強い。

JCA-NET を「それぞれの運動のためのツール」として見るような視点が強すぎ、 たいへん残念なことではあるが、JCA-NET そのものは一段低く見られているような気配すら感じる。 余裕があるのならばそれでも十分にやっていけるはずだが、 余裕がなくかつかつの状態で低い優先順位を割り当てられている以上、現状のような組織体としては存続が困難だと判断せざるを得ない。

解決策としては、「理事および運営にかかわりを持とうとする会員の意識の変革を行い、具体的な維持の方策を模索する」というものと、 「撤収に向けての準備を始める」というものと、二通りのものが考えられる。

前者なら前者でもかまわないが、これは精神論でどうなるというものではないわけで、 前者を選択するのならばそう主張するひとりひとりが「結果を出す」覚悟と、 結果が出せなかったときにはいかなる批判・負担をも甘受するという覚悟を固める必要があろう。

(猫が好き♪)

A..1.3 会員の要望、ニーズに応えるサービス、活動の模索

会員の要望、ニーズをアンケート、ヒアリング等により、JCA-NET としてどのようなサービス、活動が求められているかを詳細に調査する。 それを踏まえて、特にサービスについては POEM と調整、交渉し、会員の要望に最大限応えるよう努力する。
(浜田)