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国の“基地負担軽減策”が沖縄の自治体を圧迫(黒島美奈子)

2017/06/17(土) 17:06

沖縄県内に6カ所ある養護老人ホームの一つ「具志川厚生園」(以下、厚生園)内に、沖縄初の視覚障害者用居室ができたと聞いて5月下旬、県視覚障害者福祉協会の視察に同行した。

養護老人ホームは、介護者がいなかったり、経済的困窮にある高齢者の福祉施設。そのうち視覚障害者を対象にした施設を「盲養護老人ホーム」という。戦後、全国で設置が広がり、これまで未設置県は鳥取と沖縄だけだった。離島県の沖縄では早くから必要性が指摘されてきたが、戦後72年たったこのほどようやく、既設ホームを改装する形で実現した。

トイレや浴室への音声案内、居室の点字表示、廊下の誘導テープ、階段の転落防止柵などの整備を確認した「県視力障害者の生活と権利を守る会」事務局長の渡嘉敷綏秀さんは「これで先輩たちに紹介できる」と感慨深げだった。

一方、視察後の金城清安厚生園園長との懇談では気になる話題が出た。養護老人ホームの入所者が年々減少しているという。他県の入所率が80~90%で推移しているのに対し、県内の養護老人ホームの入所率は5割程度で、厚生園では現在40%台まで落ち込んだと心配していた。低所得の高齢者が利用する特別養護老人ホームには毎年、入所待機者が数千人も出る。無届けの低料金有料老人ホーム開設も後を絶たないという状況で、金城園長は「養護老人ホームのニーズはある」と話す。にもかかわらず入所が進まない要因に「自治体が措置しない」ことを挙げた。

養護老人ホームに入所するには自治体の措置が必要だ。措置費は高齢者1人当たり1カ月約20万円。別枠で国の補助対象だったが2005年に一般財源化された。金城園長によると、以降、県内では養護老人ホームへの措置が極端に低迷している。一般財源化後も、高齢者を措置すればその分の補助が自治体に入る仕組みに変わりはない。県内の低迷について金城園長は「一般財源化で補助が目に見えなくなり、自治体の負担分が際立ち、敬遠されているのではないか」とした。

それを聞いて、琉球政府の福祉部に在職していた元県生活福祉部参事・西表孫称さんの話を思い出した。県内では、人口当たりの特別養護老人ホームや認可保育園の設置率も他県に比べ低い。理由を尋ねたら西表さんは「基地問題で有形無形に割かれる自治体の負担が影響しているのだろう」と語っていた。

他県にはない新たな自治体負担がことし5月にも明らかになった。昨年発生した米軍属による暴行殺人事件を受け、国が全額補助する「防犯灯・防犯カメラ等緊急整備事業」。当初国は県内37市町村に13億円の交付を決めたが、整備台数や自治体の数が、国が見込んだ半数程度になる見込みだ(5月14日付『沖縄タイムス』)。維持管理費が自治体負担となることが主な理由。事件後に国が事業化した「沖縄・地域安全パトロール隊」の予算約9億円も昨年、沖縄関係予算に組み込まれ県から反発が出ている。

国が次々と打ち出す基地負担軽減策が、県や自治体の財源負担としてブーメランのように返る構図。それは復帰から45年間、澱のように溜まり続け、県民生活に影響を及ぼしている。そこにいかほどの国税が投入されてきたかも、国民は知るべきだと思う。

(くろしま みなこ・『沖縄タイムス』記者。6月2日)

連合の弱み象徴する神津里季生「同級生交歓」(佐高信)

2017/06/16(金) 17:19

今度、『“同い年”ものがたり』(作品社)という本を出した。「〈世代〉と〈人物〉で語る昭和史」である。大正13年生まれの村山富市を筆頭に、昭和35年生まれの香山リカまで、七つの世代の102人を取り上げた。昭和8年生まれの森村誠一が同い年の現天皇をどう見ているかにも触れている。昭和27年生まれの田中優子と松元ヒロは同時期に同じ法政大学に学んでいた。

これを書く時に注意したのは、本多勝一が1970年5月号の『エイムズ』で批判し、斎藤美奈子も『AERA』の2001年10月22日~11月26日号でバッサリやった『文藝春秋』の「同級生交歓」のような「功成り名遂げて」にならないように、ということである。当時まだ30代だった本多は、いまはなくなった『中央公論』の「遠縁近縁」と並べて「同級生交歓」について、こう書く。

「私の感想を一口にいえば、『ヘドが出そうだ』とは正にこのことだ。ニヤけきった顔といい、ニヤけきった文章といい、ギャーッと叫びたくなる。そんなに不愉快なら見なければいい? 確かに。めったに見ない。しかし旅先の、とくに国外にあるとき、たまたま日本の雑誌が目につくと、ついなつかしくなって丹念に見てしまったりする。

そのようにあまり見ない私でも、ここに登場した人の中には、かなり知っている人(個人的という意味でも少しあるが、名前を知っているという意味が大部分)もいる。それまでに尊敬していた人だとこれでグッと点が低くなるし、軽蔑していた人だと『やっぱり彼奴らしい』と思う。ここに出てくる顔こそ、貧困なる精神の象徴だ。貧困でない精神の人でも、ここに登場するときだけは少なくとも貧困なる瞬間である」

そして本多は自分の小学校時代を振り返り、進学した者はごく少数だったが、しなかった者も「平均的庶民として地域社会の中で地味な仕事についている」と共感を寄せながら、「そういう感覚のない成り上がりの俗物、自分が『出世』し、おたがい『出世』した奴同士といった下劣の心情」があふれている「同級生交歓」を難詰するのである。

「ニヤけきった文章」

それからおよそ30年後、今度は斎藤美奈子が「社会の第一線で活躍するかつての級友がズラッと登場する」このグラビアについて「社会階層の何たるかを、これほど如実に教えてくれる企画もない」とし、「写真に顔をそろえているのは大企業の社長や重役、大学教授、政治家、官僚、マスコミ人等。肩書もイヤミだけれど、彼らが大学ではなく小中高校の同級生であるのがまたイヤミ。登場するのは、国立大学付属小中学校、地方の名門進学校、都市の名門私立校」と続けて、「いい学校を出て出世して、いつかは『同級生交歓』のページに載る。明治以来、脈々と受けつがれてきたこの国の伝統、そして人生の目標をよくあらわしているじゃないですか」と結ぶ。

試みに最新6月号のそこを開けば、昭和46年に東京学芸大学附属小金井中学校を卒業した駐ブルネイ大使の伊岐典子、連合会長の神津里季生、内閣府特命担当大臣の加藤勝信、東京海上日動火災保険顧問(前財務次官)の田中一穂が並んでいる。確かに本多の指摘する「ニヤけきった文章」をここで書いているのは神津だが、もちろん彼は本多や斎藤の批判など夢想だにしなかっただろう。そういう人間がトップであるところに現在の連合の弱みがある。

世代論は不毛とも言われるが、大正11年生まれのダイエーの創業者、中内功は「明治生まれの人間が戦争を計画して、大正生まれのわれわれが一銭五厘の旗の下でやらされた」と繰り返し言っていた。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、6月2日号)

獄死した「狼グループ」元メンバー、大道寺将司氏がのこした表現

2017/06/16(金) 14:54

5月24日に東京拘置所で亡くなった、「東アジア反日武装戦線」狼グループ元メンバーの大道寺将司氏(享年68)は、7年前から多発性骨髄腫を病んでいた。身体的な痛みに全身を苛まれる中で彼が遺した句作を通して、42年間にわたって獄中で抱えていたその思いを顧みる。

迫りくる自らの「死」と向き合いながら(「棺一基四顧茫々と霞みけり」)、同時に、さまざまな「死」とも向き合っていたと思う。74年8月、彼らが企図した「侵略企業」三菱重工ビル爆破は、意図せぬ多数の死者と負傷者を生んだ。悔いて余りあるその時の死者の苦しみや口惜しさを実感する日々であった(「いなびかりせんなき悔いのまた溢る」)。この期間はまた、東北大地震を筆頭に自然災害で命を喪う人が多かった(「数知らぬ人呑み込みし春の海」)。さらに、国家が発動する新たな形の戦争=反テロ戦争や、それに抗するテロリズムによる「死」も驚くべき数で累積されつつある日々でもある(「雲厚く戦機いやます春来る」)。

最終句集のあとがきに、彼は書いた。

「死刑囚である私が作句を喚起されるものと言えば加害の記憶と悔悟であり、震災、原発、そして、きな臭い状況などについて、ということになるでしょうか」。

肉体と精神の極限的な苦しみの中から生まれた、その深みのある表現に耳を傾けたい。

(太田昌国・評論家、6月2日号)

元陸自レンジャーなど自衛官OBらが平和願う団体設立 「日本は戦争に不向き」

2017/06/15(木) 13:40

ベテランズ・フォー・ピース・ジャパン代表に就任した井筒高雄氏。(撮影/斉藤円華)

平和を願う元自衛官らで作る団体「ベテランズ・フォー・ピース・ジャパン」が6月に発足する。団体の設立を記念するプレイベントが5月25日に東京都内で開催。同会代表で元陸自レンジャー隊員の井筒高雄氏は「日本は地勢的に戦争に不向きで、レンジャー教育もない自衛官が大半なのに戦場に放り込まれる。日本は専守防衛に徹し、北東アジアの集団安全保障の確立をめざすべきだ」と訴えた。

米国では退役軍人の平和団体「ベテランズ・フォー・ピース(VFP)」が1985年に発足し、全米で活動している。

井筒氏は今回の設立理由について「集団的自衛権が容認される中、勇ましい言葉で自衛隊を実戦に派遣するのは簡単だ。しかし戦費調達や戦場でのPTSDなど、戦争のリアリティと社会負担を巡っては国民の間でほとんど議論されていない。元自衛官の立場から、こうした問題を提起していく」と述べた。団体には井筒氏のほか、5月3日に亡くなった泥憲和氏(名誉会員)など、合計7人の元自衛官が会員に加わる。

昨年6月には、VFP会員で元海兵隊兵士のマイク・ヘインズ氏らが沖縄を訪れ、辺野古の反基地運動に参加している。イベントではヘインズ氏らを取材した琉球朝日放送のドキュメンタリー番組「テロリストは僕だった」を上映。制作した同局元ディレクターの大矢英代氏が登壇し、「米国では退役軍人が毎日22人自殺し、若者が貧困を理由に軍隊に志願している。軍隊が内包する大きな暴力性を伝えたかった」と語った。

日本でも「反戦自衛官」や旧軍人による「不戦兵士」の活動が知られるが、「現職・元自衛官や旧軍人など、さまざまな立場からゆるやかにつながるようにしたい」と井筒氏。6月9日には衆院第一議員会館で、VFP米国本部のサム・コールマン氏らを招き設立記念シンポジウムを開催予定だ。

(斉藤円華・ジャーナリスト、6月2日号)

G7の隠れ孤立男、安倍首相(浜矩子)

2017/06/15(木) 10:09

「6対1だった。」ドイツのメルケル首相の言葉だ。5月26・27日に、イタリアのタオルミナでG7サミット(主要国首脳会議)が開催された。上記のメルケル発言は、この会合について語る中で出てきたものだ。

この「6対1」は、「トランプ米大統領対その他6カ国首脳」を意味している。今回のサミットで、トランプ大統領は少なくとも二つのテーマについて他の国々の首脳たちと衝突した。その1がパリ協定。その2が貿易である。

パリ協定は、地球温暖化対策に関する国際的枠組みだ。2015年にG7各国を含む国々の間で合意を得ている。ところが、トランプ大統領はパリ協定を受け入れるか否かの判断を留保した。何しろ、大統領選を闘う中で「地球温暖化はでっち上げだ」と叫んでいた人だから、スンナリ受け入れられるわけがない。

貿易に関する焦点は保護主義だ。大統領就任演説の中で、トランプ氏は「保護は豊かさをもたらす」と宣言した。これまた、保護主義排除を謳い上げる共同宣言に、素直に合意できるはずがない。

貿易とのかかわりでは、サミット開催直前に、こともあろうにドイツを名指しして、対米貿易黒字が大き過ぎると不平不満をぶちまけた。「ドイツは悪い!」そう叫んでしまった。

こんなトランプ芝居に突き合わされれば、メルケル首相が「6対1だった」と不快感を露わにするのは、とてもよく解る。さぞかし、憤懣やるかたなかったことだろう。

ただ、それはそれとして、今回のG7サミットは、正確にいえば、「6対1」ではなかったと思う。確かに、表面的にはトランプ氏が1人で浮きまくっていた。だが、本当の構図は「5対1対1」だったと思う。もう1人の「1」が、日本の安倍晋三首相である。なぜなら、彼には、このサミットで決して明かすことがなかった大いなる野望がある。

安倍首相の野望とは、「世界の真ん中で輝く国創り」である。これが、今日における彼のメイン・テーマだ。主旋律である。そうだということを、今年の1月20日、通常国会の冒頭における施政方針演説の中で、安倍首相はみずから高らかに宣言している。

これは凄いことである。トランプ大統領の「アメリカ第一」などとは、野望度の高さがまるで違う。「アメリカ第一主義」は、ただ単に、アメリカはアメリカに引きこもりたいと言っているだけだ。アメリカはアメリカのことしか考えない。アメリカはアメリカの外に出ていかない。外からアメリカに入って来てほしくもない。引きこもらせて。ほっといて。そう言っているだけである。

だが、世界の真ん中で輝くとなると、これは、大変だ。要は、自分が太陽になるのだと言っている。その他大勢は、惑星どころか衛星と化して、我が周りを回っておれ。これは、世界一になりたいというのとも、大いに違う。世界一になるというのは、多くの競技者の中で一番になることだ。太陽になるつもりの人は、衛星たちと競ったりする気はない。これぞ、本当の孤立だ。G7の隠れ孤立男こそ、重大要注意人物である。

(はま のりこ・エコノミスト。6月2日号)

共謀罪と松本人志(小室等)

2017/06/14(水) 17:58

前にも書いたと思うけど、僕の伯父は、あの太平洋戦争で中国に連れていかれ、制圧(?)した村で水たまりに引きずり出した村民の男の首を連隊長が日本刀で切り落とすのを目撃したと僕たちに語った。別の叔父は、東南アジアの雨のジャングルで、濁流に足を取られた戦友の手を必死に摑んだが力及ばず手は離れ、戦友は濁流の中に消えていったと語ってくれた。

戦争体験は僕のところまでは語り継がれている。

フジテレビの「ワイドナショー」を見ていたら、共謀罪について、松本人志の「冤罪事件を生むかもしれないリスクが多少あっても、テロなどの事件を未然に防ぐことのプラスの方が多いような気がする」という発言が飛び込んできた。

事件を未然に防ぐためには冤罪の一つや二つの犠牲はかまわない。この理屈に今の世間は頷く。

街中に無数に設置された防犯カメラで四六時中僕らは監視されているというのに、そのことを気持ち悪いと思わない今の世間。

そう言えば、近所の連帯を表す「向こう三軒両隣」という標語は、戦時中には助け合いの裏に監視し合う機能があったらしい。向こう三軒の密告を促し、反戦思想者や共産党員をあぶりだす機能を果たした。向こう三軒両隣という「世間」が、共産党員ならあぶりだされてもしゃーないやろ、と考えるなら、僕は世間じゃない。

本土決戦まで時間を稼ぐ持久戦としての、その名も「捨て石作戦」。その沖縄戦での沖縄人の死亡者、〈沖縄県出身軍人・軍属(現地召集を受けた正規兵のほか、防衛隊・鉄血勤皇隊など)2万8228人。戦闘参加者(日本軍に協力して死亡した準軍属と認定された人数)5万5246人。一般住民3万8754人(推定)。地上戦域外での餓死者・病死者、疎開船の撃沈による被害なども含めると沖縄県民の犠牲者は15万人とする場合もある〉(ウィキペディア)。

沖縄の犠牲が多少あろうとも本土決戦を未然に食い止めることのプラスの方が多い、と言えてしまえる? たかだか共謀罪をすぐに大げさな話にすり替える、って?でもね一九四一年三月、共謀罪と同じ内容の改正治安維持法が可決されたよね。その年の一二月、日本は真珠湾攻撃を仕掛けて太平洋戦争にまっしぐら。結末は沖縄一五万人の死。「未然に防ぐことの方がプラス」なのは共謀罪でしょ。

どんなに嫌な奴でもひたすら旦那をヨイショし、後ろ向きになったときペロッと舌を出すのが芸人、と聞いたことがある。松本人志さんはどんな芸人かな。同じマツモトさんでもいろんなマツモトさんがいるね、ヒロさん。

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、6月2日号)

自民党都議56人を独自調査、「意見交換会」で1100万円超支出の“非常識”

2017/06/14(水) 10:59

政務活動費で「新年会」の参加費を払ったことを示す自民党早坂義弘議員宛ての領収書。(撮影/三宅勝久)

自民党東京都議会議員が自治会や消防団、商業団体などに対して、「意見交換会」と称して政務活動費(月額上限50万円)を支払った例は、2015年度1年だけで約1500回を数え、金額は1100万円を超すことが、都議会事務局が保管・公開する領収書類の調査・集計によってわかった。特に1月に集中して多く、800件を超す。「意見交換会」の実態は新年会などの宴会の類が大半とみられる。

また、1日に何件もの支出を行なっている例が多数あり、事実上の有権者に対する「祝儀」になっている可能性は否定できない。

今回調査した領収書は、自民党会派56人(当時の会派所属議員。うち4人は後に新風自民党、都民ファーストの会、無所属へ移籍)の2015年度分。領収書はざっと1万枚もの大量で、大型ファイル41冊につづられている。そのすべてに目を通して「意見交換会」関連のものを抜き出した。

その結果、懇親会の類に支出した自民党都議は50人とほとんど全員で、うち20万円以上の支出があった議員は26人、うち40万円以上は11人にのぼった。

金額の多い都議は次のとおり(敬称略、カッコ内は選挙区、金額は概算。5000円未満の支出は省略した)。(1)堀宏道(豊島)59万円、(2)来代勝彦(港)54万円、(3)鈴木章浩(大田)50万円、(4)山内晃(品川、都民ファースト)49万円、(5)崎山知尚(荒川)46万円、(6)早坂義弘(杉並)45万円、(7)高木けい(北)45万円、(8)菅野弘一(港)43万円、(9)清水孝治(立川)41万円、(10)柴崎幹男(練馬)40万円、(11)高橋かずみ(練馬)40万円。

1回の支出額は、都議会の使途基準で上限を1万円と定めている。その上限いっぱいの1万円を払っている例が大半だ。堀議員の場合、78件で59万円を支出しており、平均額は8000円近い。

【出納簿を公開しない理由】

この78件の内訳をみてみよう。70件が1月に集中している。毎日1件では足りない、1日で3件~5件の「意見交換会」をはしごしている。精力的な「意見交換」の様子は想像にかたくない。2016年1月26日付で、豊島区米穀小売商組合に払った1万5000円のうち政務活動費で支出した1万円について、堀議員の説明書には「健全な営業の維持・向上について意見交換」ともっともらしいことが書かれている。しかし領収書の但し書きにはこうある。

「平成28年度新年懇親会会費」

どうみてもただの新年会である。顔を出して金を置いてきたというのが本当のところではないか。かりにそうだとすれば公職選挙法に抵触する恐れもある。

堀議員にかぎったことではないが、領収書も、税務署に出したら指摘されそうなあやしげなものがいくらでもある。電話番号が載っていればまだよいほうだ。いっさいの連絡先がない。町内会らしい名前、趣味の会のような任意団体。早坂議員は「杉並区民謡連盟」といったゴム印だけの領収書を提出している。実在するかどうかすら一見しただけではわからない。かりに実在するとしても、そこに払われた政務活動費がどう会計処理されているのかはわからない。小泉やすお杉並区議が「団長」だとの情報もあり、単なる自民党“杉並ムラ”の寄り合いということも考えられる。

議会の政務活動費には、政党支部あての支出を認めたり、人件費の金額と支払い先を非公開にするなど、大きな問題がある。しかし世論の関心は高くない。理由の一つは、調査が困難だからだろう。

大量の領収書を開示しておきながら、支出の明細を整理した出納簿を出していない。共産党だけは自主的に公開しているが、特に自民党は整理の悪さも加わって調査に膨大な労力を要する。わざとそうしているきらいがある。

都議会事務局によれば、来年度からインターネットで領収書と出納簿を公開する方針だというが、簡単にできるはずの出納簿の即時公開をする予定はないという。7月2日投票の都議選を控え、多くの議員にとっては見られたくないものがあるということか。

(三宅勝久・ジャーナリスト、6月2日号)

まるで共謀罪のような監視強化 精神保健福祉法「改正」案に反対続出

2017/06/13(火) 18:17

要注意の人物とされたら、行政をはじめとする関係機関がかかわり続ける。警察にも個人情報が流れ、動向を把握される。ささいなことで身柄を拘束されないか、いつも気にしながら生活する――。

共謀罪をめぐる話ではない。国会で審議中の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)「改正」案のことだ。

昨年7月に相模原市の障がい者施設で起きた殺傷事件を精神障害によるものと決めつけた政府は、措置入院後の患者のフォローを中心とする法改正案を2月28日に国会へ提出した。参院先行で4月7日から審議が行なわれ、自民・公明・維新などの賛成で5月17日に参院を通過した。民進・共産・社民・自由などは反対した。

措置入院とは、行政権限による強制入院だ。精神障害のために自分を傷つけたり他者に危害を加えたりするおそれがある、と複数の精神保健指定医が判断すれば、知事または政令指定都市の市長が入院を命令できる。年間に7000人以上が措置入院になっている。

法案のポイントは、措置入院患者の入院中から、保健所を中心に医療機関・福祉関係者などが集まって退院後支援計画を作ること。患者が退院すると、継続的な医療や孤立防止のため、計画に沿って支援を行ない、関係者による会議も定期的に開く。本人が引っ越したら転居先の自治体に引き継ぐ。

なぜ、そんな仕組みを作るのか。厚生労働省の当初の説明資料に書かれた法改正の趣旨は、相模原事件を挙げ、「二度と同様の事件が発生しないよう……法整備を行う」と事件再発防止を強調していた。

「支援を名目にした監視の強化だ」と障がい者団体や支援団体から強い反対の声が相次いだ。

参院の厚生労働委員会では、川田龍平・石橋通宏(民進)、倉林明子(共産)、福島みずほ(社民)の各委員を中心に、かなり突っ込んだ質疑・批判が行なわれた。

「本人のために行なうべき医療が治安目的に変質する」と追及され、答弁に窮した厚労省は4月13日、説明資料の趣旨説明の記述を削除した。支援計画の作成や個別ケース検討会議に本人・家族が参加することを指針にも明記した。

審議中に法改正の趣旨を削るのは前代未聞だ。しかし法案本文には変化はない。「立法目的が消えたなら、出し直せ」と野党側が反発して審議は一時ストップ。塩崎恭久・厚労相が4月20日に陳謝して趣旨説明をやり直した。

【警察へ個人情報が流れる】

参院の質疑で浮かんだ最大の疑問点は警察との関係だ。

個別ケース検討会議に警察は原則入らないと政府は言いつつ、「自殺のおそれ、繰り返し応急の救護を要する状態」などは加われると答えた。警察も参加する地域ごとの「代表者会議」は措置入院の運用一般を話し合う場で、個別事例は扱わないとしながらも、「確固たる信念を持って犯罪を企画する者」「入院後に薬物使用が見られた場合」は、関係機関が個別に警察と連携すると説明した。

例外とされたことでも、実際の運用で例外と原則が逆転していきがちなのは、強制入院や隔離・拘束の多さを見れば明らかだ。

参院厚労委の審議は28時間に及び、大もめ法案になった。

可決の際、「施行後3年をめどに見直し」などを附則に加える修正と18項目もの附帯決議が行なわれた。▽精神保健医療が治安維持を担うとの誤解や懸念が生じないよう留意する▽支援は半年以内程度とし、例外的延長は原則1回▽本人が納得しない場合は支援計画を見直す▽本人が拒む場合は個別ケース検討会議に警察を参加させない――と、少しは歯止めになる内容も入った。

だが、精神障がい者を危険視し、警察も加わって見張ろうとする法案の本質は変わっていない。

監視ではなく支援だと政府が強調するなら、措置入院患者全員に弁護士を付けてはどうか。個別ケース検討会議には本人の希望する支援者、代表者会議には弁護士会の代表を加えるべきだろう。

会期末までの日程はきわどい。衆院での徹底審議を期待したい。

(逆巻さとる・ジャーナリスト、6月2日号)

加計学園問題、地元今治市の公式文書にも「『総理・内閣主導』と明記」

2017/06/12(月) 18:04

会見で経過を説明する中村時広愛媛県知事。5月24日、愛媛県庁。(撮影/横田一)

5月25日、「総理のご意向」と書かれた文書について、前川喜平・前文科省事務次官が会見で「文科省専門教育課で作成され、幹部の間で共有された文書」と断言し、「安倍晋三首相の天の声での加計学園の獣医学部新設が決まったのでは」という“官製談合”事件の様相が強まってきた同じ頃、愛媛県今治市では菅良二市長が海運関連の展示会「バリシップ2017」の歓迎会で挨拶をしていた。

乾杯後、関係者との談笑を一通り終えた菅市長に「加計学園疑惑についてどう思うか」と声をかけたが、一言もなく、主催者からは退出を命じられた。翌26日、“前川会見”の受け止めを菅市長に聞こうと市役所を訪ねたが、「取材には応じていない。会見の予定もない」(秘書課)と拒否された。

前事務次官会見で首相主導を物語る文書の信憑性が高まる一方、地元・今治市では去年秋の菅市長の発言が注目されている。「安倍総理の強いリーダーシップをもってやるから安心してほしい」と周囲に語っていたというのだ(26日のテレビ朝日の「報道ステーション」も紹介)。

市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦・共同代表は、「『総理が動いている』という市長発言は市内で広まっていますし、市の文書にも『総理・内閣主導』と明記されています」と、市企画財政部が去年11月10日に作成した議員協議会資料「国家戦略特区の制度を活用した取組の進捗状況について」を示した。確かに、国家戦略特区を説明するページに「『総理・内閣主導』の枠組み」と太文字で書かれていた。

「これは、今治市が『総理・内閣主導』と認識していたことを示すもので、菅市長発言(『安倍総理の強いリーダーシップ』)とも一致します。『今後のスケジュール』のページには『平成28年10月31日 事業者によるボーリング調査の申出を受理、承諾』や『平成30年4月開学』と具体的日程が明記されています。安倍首相主導で加計学園ありきのタイトな日程で進んでいたことを物語っています」

半年程度で姿勢一転の謎

首相主導を示唆する文書は他にもある。「総理のご意向」と発言したとされる藤原豊審議官(内閣府国家戦略特区担当)が、当初は獣医学部新設に慎重な姿勢であったことが、昨年2月、今治市議会に提出された資料に明記されていたのだ。藤原氏と市の関係者の面会内容を紹介した部分には、「(藤原氏より)新設大学への財政支援による今後の財政悪化や人口減少により学生が本当に集まるのか危惧されていた」と記載。昨年2月には消極的姿勢だった内閣府が昨年秋に積極的姿勢に転じたのは、地元で広まる菅市長発言の通り、安倍首相の主導(直接指示)としか考えられない。

加計学園疑惑の構図が明らかになってきた。「国家戦略特区諮問会議トップ(議長)の安倍首相が天の声を発し、加計学園が選ばれるような条件を加えることで競合相手を排除した」というものだ。

談合(受注調整)担当をしてきたゼネコン関係者は「発注者の意向で本命業者を入札前に選ぶ官製談合事件に等しい」と話す。

「公共事業の発注者は、どういう入札条件を加えれば、どの業者が選ばれるかのデータベースを持っています。そのため官製談合では、発注者の意向で入札前に本命業者(チャンピオン)を選ぶことが可能。今回は、安倍首相の発注者意向で『広域的に獣医学部がない』という条件が付加され、加計学園が選ばれたのでしょう」

一方、中村時広・愛媛県知事は24日の会見で内閣府から国家戦略特区申請の助言があったことを改めて認め、決定プロセスをクリアにすることも国に求めた。会見後、「安倍総理の天の声で決まったのではないか」「違法性があったのではないか」と聞くと、中村知事は「僕は分からない。過去の経緯から説明。県はあれ以上でもあれ以下でもありません」と答えた。

しかし前川会見で首相主導の可能性はさらに高まり、愛媛県や今治市は官製談合事件の共犯者となる恐れも出てきた。地方と中央の両面からの真相解明が期待される。

(横田一・ジャーナリスト、6月2日号)

「文科省メールは公開可能な公文書」、情報公開クリアリングハウスが声明

2017/06/09(金) 16:30

特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス(東京、三木由希子理事長)は6月9日、松野博一文部科学相が加計学園問題に関する文書の再調査を実施することを表明したことを受け、〈加計学園問題は、文書の有無が核心的な問題というより、獣医学部の新設に当たって何があったのかが問題の核心〉とする声明を発表した。同時に〈政府運営のあり方、それに対する政治的介入問題としては、その事実が記録され行政文書として存在するのか否かは、きわめて重要な核心的問題〉としている。

声明はまず、〈報道や国会で明らかにされた文部科学省メールや文書は、これまでの情報を総合すると公文書管理法及び情報公開法に規定する「行政文書」に該当します。また、該当しないとするには、従来の法解釈を大幅にゆがめる必要が〉あると指摘した。

その上で〈加計学園問題の文書は情報公開法の規定からしても公開可能な行政文書〉であり、〈この間の文科省及び官邸の言説を踏まえるならば、総理大臣の指示を受けて調査を行った文科省の調査結果の信頼性は、たいへん低いものになると言わざるを得ません。したがって、中立的・第三者的で、特定の職員に不利益が及ばないような調査を実施するべき〉〈少なくとも、文科省も官邸もこの問題の当事者であり、文書の存否や新獣医学部の経緯についての当事者の調査を信頼することできません。前述のとおり、中立的、第三者的調査を通じて、真偽が問われるべきです。それなしには、政府の信頼性の回復にはつながりません〉としている。

さらに、国会と国会議員に求められる態度についてこう指摘した。
〈加計学園問題だけでなく森友学園問題も同様ですが、行政に対する政治的介入や関与があった場合、政権や政治家がそれは良くも悪くも当然であるということが言えるのかどうかが、今、問われています。政治的介入を行うが記録に残されると困る、などということがまかり通ることが、公益を大きく損なう政治介入を招き、不公正な政府の原因となります。今、総理大臣をはじめ政権としてこのことに対してどのような考えを持っているのか、そして、国会及び国会議員としてこのことに対してどのような考えを持っているのか、説明し表明すべきです〉

声明の全文はこちら

(伊田浩之・編集部)

文科相による再調査に対するクリアリングハウスの声明全文

2017/06/09(金) 16:21

加計学園問題に関する文書の再調査をうけ、情報公開クリアリングハウスが出した声明は次の通り。

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2017 年6 月9 日

加計学園問題で文部科学省による再調査の実施に対する声明

                                    特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス
理事長 三木由希子

 当法人は、市民の知る権利の擁護と確立を目指して活動する特定非営利活動法人です。

本日、文部科学大臣が加計学園問題に関する文書の再調査を実施することを表明したこと自体は、歓迎しています。加計学園問題は、文書の有無が核心的な問題というより、獣医学部の新設に当たって何があったのかが問題の核心です。一方、政府運営のあり方、それに対する政治的介入問題としては、その事実が記録され行政文書として存在するのか否かは、きわめて重要な核心的問題です。

このような視点から、以下の通り見解を述べます。

1 文科省メールや文書は「行政文書」である

報道や国会で明らかにされた文部科学省メールや文書は、これまでの情報を総合すると公文書管理法及び情報公開法に規定する「行政文書」に該当します。また、該当しないとするには、従来の法解釈を大幅にゆがめる必要があります。

行政文書に該当する根拠は、第一に行政文書の要件である「組織的に用いるもの」との要件を満たしているにほかないからです。これまでの情報を総合すると、(1)メールは十数人に送信されており、明らかに利用状況は組織的に用いられた状態にある、(2)メールに添付されている文書はメールと同様に組織的に用いられた状態にある、(3)そのほかの文書も前川前事務次官ら幹部職員に示されあるいはその内容が共有されており組織的に用いられている状態にある、ということになります。

行政文書の定義には「実施機関が保有しているもの」との要件もあります。メールが職員の個人貸与のパソコンに保存されているものであっても、パソコンは文部科学省の備品であって物理的な支配をしている状態にあり、その中にある行政文書は「実施機関が保有」している状態にあります。また、職員が個人的に庁舎内で管理している文書についても、物理的な支配は及んでおり、いずれも組織共用性のある文書であれば、行政文書としての要件を満たすものになります。

一般的には、「行政文書」に該当するか否かは最終的には司法判断に委ねられており、個人メモに該当するものであっても、その利用形態等の実情や評価によって行政文書に該当する可能性は常にあります。したがって、情報公開請求があった場合は個人メモも含めて存否を確認されていなければならず、本来であれば文科省は同様に今回問題になっている文書も特定をする必要があったものです。

2 審議検討過程情報に該当して不開示とは言えない

2017 年6 月7 日付の朝日新聞によると、文科省幹部が「真偽は言及しないが、内容を見ると、政策調整過程のもので不開示が妥当」と、6 日の民進党の加計学園疑惑調査チームの会合で述べたとされています。公文書管理法は意思決定過程の記録の作成を義務付けていますが、その作成された行政文書の開示・不開示の判断は情報公開法の規定に委ねられています。そのため、仮に行政文書として存在したとしても、情報公開法の規定する不開示理由に該当することを文科省は説明をしているようであります。

文科省の主張する不開示理由は、2 つの規定を念頭に置いているものと考えられます。一つは、審議検討過程情報(5 条5 号)、もう一つは事務事業情報(5 条6 号)です。この二つの規定は、適用に当たって「不当」「適正な遂行」を要件としています。審議検討過程情報は「不当」を要件とし、その趣旨は、開示することの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保への支障が看過し得ないときに不開示とできるというものです。公開することの公益と、不開示とすることにより保護される利益の比較衡量を求めるものです。加計学園問題の文書は、開示することによる公益性が高く、不開示とすることにより守られる利益は、もはや特定の利害や利益に帰するものと言えます。

事務事業情報は「適正な遂行」と「おそれ」を要件としています。「適正な遂行」とは、公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量してそう言えるものであることを求める趣旨です。したがって、開示することによる公益性と不開示により保護すべき利益の比較衡量が求められています。加えて支障の「おそれ」とは、確率的な可能性ではなく法的保護に値する蓋然性を要求しています。加計学園問題の文書は、内閣府と文科省の間の今後の協議といった事務事業への支障という主張が文科省などからされる可能性もありますが、審議検討情報と同様に、開示することによる公益性が極めて高く、不開示とすることにより守られる利益は特定の利害や利益に帰するものと言えます。

さらに、情報公開法7 条は、公益上の裁量的開示を規定しています。不開示情報に該当するものであっても、公益上特に必要な場合は開示ができるというものです。高度な政治的な判断に基づく公益上の開示規定ですので、加計学園問題はまさにこの高度な政治的判断を総理大臣、内閣官房長官、文部科学大臣が行えばよいものです。言い換えると、政治的判断がなされるか否かが最大のポイントとなり、開示しなければそれは情報公開法の規定上できるにもかかわらずそれを行わないという意思表示を総理大臣以下が行ったことの証左となります。

以上のことから、加計学園問題の文書は情報公開法の規定からしても公開可能な行政文書です。

3 文科省が独自に調査をしても信頼できないので、中立的・第三者的調査が必要

加計学園問題の文書をだれが文科省内で持っているのかの調査は、情報提供元を探索する調査活動にもなります。この間、「出所や入手経路が不明」などとして調査を拒み、情報源である出所や入手経路を明らかにすることを暗に求める言説が政権から繰り返されています。今回、再調査に踏み切ることになったのは、問題の文書があるか否かが主たる目的ではなく、誰がリークをしたのかを調査することが主たる目的であることも疑わざるを得ません。

すでに情報公開法の規定との関係で述べた通り、加計学園問題の経緯が明らかになることは公益に資するものであり、そのことを文書を提供することで明らかにした職員を特定し、不利益を与えるような調査を行うことは看過できません。公益通報者保護法が存在し公務員も適用されていますが、刑事罰を伴う違法行為を通報した場合のみ対象としており、法的保護の範囲は極めて狭いものです。加計学園問題に関する通報が、この法的保護の対象となるのかは疑わしいところです。

また、この間の文科省及び官邸の言説を踏まえるならば、総理大臣の指示を受けて調査を行った文科省の調査結果の信頼性は、たいへん低いものになると言わざるを得ません。したがって、中立的・第三者的で、特定の職員に不利益が及ばないような調査を実施するべきです。

4 文書が実在しても真偽は別というのは今いうべきことではない

この間、一貫して政府は総理の意向はなかったとし、政治的介入を否定しています。一方で、文科省文書により明らかにされた事実や文書の存在が問題となっても、一向にその文書の存否すら調査をしようとしなかったという事実があります。この段階で、文書の内容の真偽について述べても、説得力がないばかりか、これまでの言説はその逆のことを指し示していると言わざるを得ません。

少なくとも、文科省も官邸もこの問題の当事者であり、文書の存否や新獣医学部の経緯についての当事者の調査を信頼することできません。前述のとおり、中立的、第三者的調査を通じて、真偽が問われるべきです。それなしには、政府の信頼性の回復にはつながりません。

5 問われているのは政治的介入・関与の記録が残されるのが当たり前といえるか否か

加計学園問題だけでなく森友学園問題も同様ですが、行政に対する政治的介入や関与があった場合、政権や政治家がそれは良くも悪くも当然であるということが言えるのかどうかが、今、問われています。政治的介入を行うが記録に残されると困る、などということがまかり通ることが、公益を大きく損なう政治介入を招き、不公正な政府の原因となります。今、総理大臣をはじめ政権としてこのことに対してどのような考えを持っているのか、そして、国会及び国会議員としてこのことに対してどのような考えを持っているのか、説明し表明すべきです。

6 中途半端な再調査になるなら当法人は訴訟で争う

当法人はすでに、加計学園問題に関する文科省、内閣府、内閣官房における協議記録等の情報公開請求を行い、その後、追加でこの間明らかになったメール等を具体的に特定した情報公開請求も行っています。どのような決定になるのかはしばらく待たなければわかりませんが、不存在および不開示となった場合、あるいは文書が具体的に特定されなかった場合は、ただちに情報公開訴訟を提起し、徹底的に司法の場で争うことをここに表明します。

以上

【参考】情報公開法
(行政文書の開示義務)
6 条 五 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
六 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
ホ 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

(公益上の理由による裁量的開示)
第七条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政文書を開示することができる。

(編注:丸数字は、(1)などカッコ内数字表記にあらためました)

私たちも彼らも同じ人間──ニューギニア高地人1(本多勝一)

2017/06/09(金) 15:25

交易のためにザシガからナッソウ山脈を越えてやってきたアヤニ族の男たち(藤木高嶺うつす)。彼らがザシガへ帰るとき、藤木氏と私とは、彼らに従って山を越えていった。護衛の兵隊はもちろん、武器の類など一切もたなかった。

1963年の12月17日。『朝日新聞』の藤木高嶺記者と私は、インドネシアの西イリアン島北海岸から内陸高地のエナロタリへ、現地のカトリック教会専属の小型セスナ機で飛んだ。

そのとき小飛行場の滑走路でセスナ機をとりかこんだのは、この写真のような人々だった。日本人とは、共通点の少なすぎる形相と挙動。何を考えているのか――歓迎しているのか、何かたくらんで(?)いるのか、心中を読みとり難い表情……。

この7カ月ほど前、カナダの北極圏でエスキモーたちと初めて対面したとき、私は何の不安も感じなかった。日本人とよく似た彼らの顔が笑うとき、それは笑顔以外の何ものでもなかった。彼らの感情が、そのままこちらに伝わってくるように思われた。が、ここでは逆だ。暗色の顔が白い歯をみせて笑うとき、笑顔には違いなくとも、私たちの不安をむしろ募らせる。

「ニューギニア」と言えば、すぐに「ヒト食い人種」とこだまが返る。その彼らと共にジャングルを歩き、彼らと共に岩かげでゴロ寝しては夜を明かした。それでも私たちは“殺されずに”帰ってきた。

私たちの肉がマズイと思われたわけでもなければ、文明の波が山奥まで浸透したわけでもない。理由はひとつだけ。――私たちが人間であるのと同じ程度に、彼らも人間だったからである。
(ほんだ かついち・『週刊金曜日』編集委員)

※この記事は、本多編集委員がかつての取材をもとに『週刊金曜日』で連載しているものです。ニューギニア高地人は1964年に『朝日新聞』夕刊で連載され、後に単行本や文庫本にまとめられています。連載当時の社会状況を反映しているため、いまの時代にそぐわない表現があることをお断りします。

都内で「共謀罪を考える」シンポ “政府は考える国民が育つのを恐れている”

2017/06/09(金) 12:14

5月16日夜、立憲デモクラシーの会主催のシンポジウム「『共謀罪』を考える」が東京都文京区で行なわれ、約250人が会場に駆け付けた。

高山佳奈子京都大学教授(刑事法学)は、政府が国連国際組織犯罪防止条約の締結には共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)の法制化が不可欠と主張することに対し、「現行法の下でも十分に対応可能だ」と語った。

また「テロ対策のため」とする安倍内閣の説明に対し、「日本はテロ対策の主要国際条約13本をすべて国内立法化しているし、国連安保理決議などによるテロ対策の国内法化もすでに終わっている」「2014年に大改正されたテロ資金提供処罰法によって、未遂犯や幇助犯までカバーしている」とし、「共謀罪のような新たな立法は必要ない」と語った。

梅森直之早稲田大学教授(日本政治思想史)は、1925年に制定された治安維持法の運用の実態を語った。同法の本来の目的は「共産主義者や無政府主義者を取り締まる」ことであり、当初は「一般の人には何の危険も及びません」とされたが、そのうち「取り締まられた人が共産主義者や無政府主義者だ」といった転倒した“理屈”に変わっていったという。

梅森氏は、「人は『テロ対策』など口当たりのいいスローガンに接すると、それを受け入れてしまいがちだ」と警鐘を鳴らした。

長谷部恭男同大教授(憲法学)は共謀罪法案について、「法の基本原則を動かそうとしている。国民に『自分でものを考えるな』ということだ。(安倍政治は)自律的市民が育ってくるのが怖くて仕方がないのだろう」と語った。

司会を務めた山口二郎法政大学教授(政治学)は最後に、「私たちにとって、政府の言っていることは本当なのか自分で調べる、ステレオタイプを自ら壊す、ということが重要な時代だ」と語った。

(星徹・ルポライター、5月26日号)

さようなら、花田春兆さん(佐高信)

2017/06/08(木) 19:30

5月19日、花田さんの通夜に行ってきました。91歳だったんですね。

「存命なのか、と気になっている俳人が二人いる。一人はホームレスの大石太であり、もう一人は脳性マヒの花田春兆(はなだしゅんちょう)である」

2005年11月18日号の本誌「風速計」欄に私はこう書いてしまいました。するとまもなく、花田さんから「生きてますよ」というメールが寄せられたのですね。恐縮して返事を送りましたが、私は花田さんが53歳の時に出した『折れたクレヨン――私の身障歳時記』(ぶどう社)を繰り返し読みました。

題名は「就学猶予クレヨンポキポキ折りて泣きし」という句から採られています。学校に行きたいのに「就学猶予願い」を出さなければならない無念を詠んだ句でした。2回目にそれを出す時には、隣家の年下の子の入学を横目に見ていただけに「どうにも我慢しきれないものが湧いて」きたのですね。

東風つのるな松籟にふと兵馬の声

この句を花田さんは次のように解説しています。
「なにかにつけて、そこに戦争への予兆を見てしまうのは、私たちの世代の特徴なのかもしれない。前後の世代なり他の人々から見れば、それは極端なアレルギー症状と映るかもしれない。ましてや、障害者なのだから兵役の心配もないのだから、関係など無いではないか、と言われるかもしれない。だが、それは違う。非常の事態になればなるほど、人間は動物的能力だけが問題になるのだ。動物的能力に欠ける障害者が、惨めな存在になるのは、あまりにも明らかである」

     「ぼくの場合、ボケの上にトがつく」

光る夏雲健ならば夙く戦死の身

花田さんは1944年春に徴兵検査を受けていますね。健かならば「南海の雲を墓標にしていた可能性は濃かった」のです。

春立つや身に副うは春兆の号ひとつ

花田さんの句の中で私はこの句が一番好きです。「学歴・職歴・家庭歴とすべてにわたって、これが自分のものだと言えるものがない。飾りとなり、重みとなるものが何一つ無い」当時の花田さんにとって、結局、わが身に付いているものは俳号だけでした。

その花田さんと2006年春に『俳句界』で対談しましたが、顔の色艶のよさと若々しさに圧倒されました。

電動車椅子で出かけた喫茶店で話している間も、二人でとにかくよく笑いましたが、私は不謹慎だとは思いませんでした。そんな形式ばった礼儀を吹きとばすようなエネルギーが花田さんにはあふれていたからです。

「花田さんと話していると、油断できませんね。私も去年還暦を迎えましたが、ボケてはおられません」
と私が言うと、花田さんは、
「ぼくの場合、ボケの上にトがつく」
とかわすので、私は、
「なるほど、トボケね。そうやって人生を煙に巻いて生きているんでしょう、参った!」
と言わざるをえませんでした。

そんな花田さんは「人を喰って生きている」と言われることもあったとか。

生まれたころの医学水準では12歳で死ぬと言われていたという重度の脳性マヒの花田さんは、それに抗うように91歳まで生きました。

花田さんに会った人はみんな、その明るさに元気づけられたと思います。

そう言ったら花田さんは、
「入った学校の名前は“光明”でした」
と茶化していましたが、花田さんが亡くなって、この世の明るさが確実に減りました。花田さん、あの世からこの世を照らし続けて下さい。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、5月26日号)

人骨収集は「アイヌのため」とうそぶく学者にアイヌ被害者が苦言

2017/06/08(木) 15:22

アイヌ遺骨を所蔵する札幌医科大学を訪れた木村二三夫エカシ(左から2人目)ら。(撮影/平田剛士)

「大学関係者、人類学、考古学の連中は、もっと深く歴史を勉強してもらいたい」

北海道平取町在住の木村二三夫エカシ(アイヌ語で年長男性の尊称)は5月16日午後、北海道公立大学法人札幌医科大学を訪問した後に開いた記者会見でこう語った。これは研究者に対する研究「被害」者からのレッドカードだ。

全国の大学・博物館などに大量のアイヌ遺骨が長らく留め置かれたままになっている。2012年以降、各地アイヌの提訴が相次ぎ、昨年から少しずつ地域返還が実現し始めたばかりだ。

平取も被害地。木村エカシは、副会長を務める平取アイヌ協会を通じて、遺骨を地元に戻すよう各大学に働きかけている。相手のひとつが札幌医科大学で、保管する全294人分の中には平取町内から移送された10体が含まれる。

そのさなか、国立科学博物館(東京)などの研究チームが、同大学が保管するうち約100体を利用して、骨(歯)の部分的破壊をともなう遺伝子抽出を行なっていたことが明らかになり、木村エカシはこの日、同様に地元への遺骨返還を進める「コタンの会」などとともに、経緯の説明を求めて所蔵管理担当者らと面談した。

非公開の会合には、同大学OBで、約40年にわたって収集アイヌ人骨を研究利用してきた百々幸雄・東北大学名誉教授(日本人類学会元会長)も同席。じかに痛みを訴えにきた目の前のアイヌたちに対し、百々氏は「人類学者はアイヌのためにこの研究をしている」「われわれの研究がアイヌの先住性を証明する」と自己正当化に終始したという。

明治─昭和期の人類学者・解剖学者たちも「アイヌのため」とうそぶいてアイヌ墓地を掘りまくった。盗掘容疑のケースもある。

性懲りなくそれを踏襲し続ける研究者は即刻退場せよ、と木村エカシは言っているのだ。

(平田剛士・フリーランス記者、5月26日号)

「のれん」に押しつぶされた東芝(佐々木実)

2017/06/07(水) 16:31

日本郵政が初めて赤字に転落した。2017年3月期連結決算の純損失は289億円。15年5月に買収した豪州の物流会社トール・ホールディングスの業績不振に伴い、4003億円もの特別損失を計上したことが原因である。

買収に失敗すると、なぜ損失が発生するのか。「のれん」という名の資産を減損処理しなければならないからだ。通常、企業を買収する際、買収額は買収される企業の純資産より大きい。買収した企業はこの差額を「のれん代」として、バランスシート(貸借対照表)の資産の部に計上する。買収の失敗が明らかになると、「のれん代」を減額しなければならず、損失が発生するわけである。

「のれん」は「ブランド力」とか「超過収益力」などと説明されることも多いが、買収の失敗は「のれん」の過大な評価から生じる。日本郵政はトールを約6200億円で買収したが、あとで巨額損失を被ったのは「のれん代」が巨額だったからにほかならない。

日本郵政の長門正貢社長は4月下旬の会見で、巨額買収劇の背景について「株式上場前に成長ストーリーを示したいという意図もあったのでは、と思う」と語った。買収当時、日本郵政は株式の上場を控えていた。トールの買収は弱点と見られていた郵便事業で「海外展開で成長」の「成長物語」を投資家にアピールするねらいがあった。法外な「のれん代」には、バラ色の成功物語の値段が上乗せされていたわけだ。

「シッポが犬を振り回す」というが、「のれん」はときに企業を振り回す。最悪の例が、東芝である。

東芝は2006年に米国の原子力会社ウェスティングハウス・エレクトリック(WH)を約6400億円で買収した。WHの純資産は約2400億円で、およそ4000億円を「のれん」に相当する無形資産として計上することになった(「のれん代」の3507億円とは別に「ブランド代(非償却無形資産)」として502億円を計上)。

現在、東芝は上場廃止さえ懸念されているが、迷走の原点はWHの買収だ。福島原発の事故後、巨額にのぼるのれん代の減損処理が必至だったにもかかわらず、東芝は「のれん代の償却は必要ない」と強弁し続けた。のちの不正な会計や不自然な企業買収を誘発する土壌をつくってしまった。「原子力ビジネスで成長」の夢から醒めたとたん、「のれん」に押しつぶされたのである。

「のれん」は不思議だ。企業の将来にわたる総合的な評価を、現時点で現金に換算するのだから、必ず不確実性が伴う。未来を正確に予測できないように、「のれん」を正確に算定することなどできない。

しかし一方で、「のれん」は企業を膨張させる。ソフトバンクは16年に英国のアーム・ホールディングスを約3兆3000億円で買収した際、約3兆500億円もの「のれん」という見えない資産を手に入れた。まるで魔法の杖だ。

結果的に買収が成功するか失敗するかにかかわらず、「のれん」には「物語」が潜む。資本主義の主役たる「企業」が商品として売り買いされるとき、資本主義に内在する幻想性が「のれん」となって姿を現す。そう解釈することもできるのではなかろうか。

(ささき みのる・ジャーナリスト。5月26日号)

医療と介護報酬めぐり財政規律派の財務省が自民党に揺さぶり

2017/06/07(水) 13:45

2018年度は診療報酬と介護報酬が同時に改定される6年に一度の年に当たる。主要テーマは「医療と介護の連携強化」。必要財源が固まる年末の政府予算案編成をにらみ、関係者の間では早くも前哨戦が始まっている。

診療報酬は2年ごとに見直される、手術、入院料などの医療サービスや薬剤の公定価格。一方、介護報酬はヘルパーの派遣など介護サービスを提供した事業者が受け取るお金で、改定は3年ごと。医療、介護双方に目を配れる同時改定は6年に一度となり、18年度の次は24年度までない。

同時改定に向け、厚生労働省が本格的に議論を始めたのは3月22日。改定内容を決める審議会の委員を集め、「医療と介護の連携に関する意見交換会」を開いた。冒頭、同省の迫井正深医療課長は「2025年までに大きく舵を切る
ことができる実質的な最後の機会。重要な分水嶺だ」と述べた。

2025年は75歳以上の人が急増する年。その後、高齢の死亡者は激増する。

医療と介護の連携を進める際に不可欠となるのが「看取り」の推進だ。住み慣れた場所で死ぬことを望む人が多いのに、医療関係と介護事業者の間の意思
疎通がなかったり、在宅での看取りが難しかったりで、終末期に病院へ搬送さ
れる人は少なくない。このため、自宅や介護施設でも看取りをできる体制を整
えることが喫緊の課題となっている。

看取りの推進には、病院を退院した人の介護の受け皿確保や24時間体制の訪問診療・看護への手厚い報酬配分が必要となる。ただ、社会保障費の抑制も避けて通れない。財源の4割を税が占める報酬の改定率は、年末の政府予算編成時に決まる。優先度の低い医療・介護のサービス価格を下げ、メリハリをつける中で全体の改定率をプラスとするか、マイナスとするか、攻防はすでに始まっている。

政府は20年度のプライマリーバランス(PB)黒字化(過去の借金返済分を除き、新たな借金なしに政策経費を賄えること)を掲げる。目標達成に躍起の財務省は、15年度改定の介護報酬をマイナス2・27%、16年度の診療報酬をマイナス1・03%に押さえ込んだ。また、16~18年度の社会保障費の伸びを計1・5兆円に抑える目標に向け、最終の18年度も1000億円台の削減を目論む。標的は予算額が約12兆円の医療費と約3兆円の介護費で、かかりつけ医以外を受診した人に定額負担を求める制度の導入や、高齢者の医療、介護費の負担増を迫っている。

これに対し、日本医師会の横倉義武会長は4月26日の記者会見で、「アベノミクスで経済が回復しつつある。それに見合う形(の診療報酬)でもいいのではないか」と反論した。横倉氏を後押しする自民党厚生族幹部も「(高額の抗がん剤)オプジーボの薬価引き下げや高給の人の介護保険料アップなどで18年度はすでに700億円弱分の社会保障費削減にメドがついている。診療、介護報酬を下げる必要はない」と訴える。

【巻き返し図る財務省】

「自民党からも、そんな提言をしてほしい」。4月6日、安倍晋三首相は、PB黒字化にとらわれず、積極的な財政出動が必要と申し入れた自民党の西田昌
司参院議員にそう応じ、PBにはこだわらない考えを示唆したという。

この話を耳にした厚労省幹部は、「社会保障費でも経済の好循環を生むものは削減対象外」と受け止めた。「介護離職ゼロを掲げる政権が、それに反するマイナス改定に踏み込むのは難しいのでは。来年末までには衆院選があるのに、お年寄りを泣かせ、日医を怒らせて与党にいいことはない」と期待を込める。

財政規律派には分の悪い空気も漂うなか、財務省は診療報酬を地域別に決める案まで持ち出し、全国一律の報酬にこだわる日医を揺さぶっている。安倍政権の財政規律の緩みを懸念する同省関係者は「同時改定時こそ、医療費、介護費の無駄を削ってメリハリをつけないと国の財政が危うくなる」と漏らし、巻き返しを図っている。

(吉田啓志・「毎日新聞」編集委員、5月26日号)

「税額通知書」へのマイナンバー不記載の自治体が相次ぐワケ

2017/06/06(火) 17:37

準備書面の内容を原告らに説明する「マイナンバー違憲訴訟」の東京弁護団。(撮影/小石勝朗)

住民税を天引き(特別徴収)している企業・団体へ従業員の居住地の市区町村から送られる税額通知書に、全員の個人番号(マイナンバー)欄が新設された問題で、番号を記載せずに通知書を送付する自治体が相次いでいることがわかった。政令指定都市の愛知県名古屋市が不記載で発送しているほか、東京都内でも40近い自治体が不記載か一部不記載と決めている。番号漏洩への危惧が、国の圧力を跳ね返した形だ。

総務省が地方税法施行規則で定める税額通知書の様式を省令で変え、今年度から個人番号欄を設けた。しかし、勤務先に知らせていない従業員の番号まで自治体から勝手に通知されることになり、「プライバシー権を侵害し違憲」との批判が出ている。同省が普通郵便での送付を認めている上、番号の管理態勢が不十分な企業にも送られるため、漏洩の危険が増すなど弊害が指摘されてきた。

名古屋市は、5月15日に送付を始めた約8万8000通の税額通知書の個人番号(12桁)欄を、12個のアスタリスク(*)で埋めた。河村たかし市長は3月の市議会で対応を問われ、「個人のプライバシーを守るためしっかり相談したい」と答弁していた。

市は、個人番号を記載して簡易書留で送付することも検討したが、地方税法が義務づける5月末までに企業・団体に届けるには「5月上旬までに郵便局に持ち込まなければならないとわかり、事務処理上、無理だった」(市民税課)。

普通郵便での送付となり、「個人番号の漏洩防止のため慎重な対応が必要」として、今年度は記載を見送ることにした。通知書を入れる封筒に「開封前に宛名をお確かめ下さい」といった注意書きを何カ所か入れて効果を見るとい
う。

高知市は、個人番号欄を空欄にしたまま1万通余の通知書を発送した。「誤配達、盗難などの郵便事故や、個人番号の管理者ではない従業員が開封するといった『さまざまなリスク』を考慮し、今年度は記載を控えた」と説明する。

東京都内の税理士らでつくる研究グループ「東京税経新人会」が、発送時期の迫った4月後半以降、都内49区市を調べたところ、確認できた44区市のうち板橋区、新宿区、立川市、三鷹市など39区市(17区22市)が、個人番号を「記載しない」、または6~8桁をアスタリスクで表示するなど「一部不記載」の方針を決めていた。

記載する自治体は簡易書留を利用するケースが多く、新たな財政負担を強いる結果となっている。

【違憲訴訟でも取り上げる】

総務省は3月6日に「Q&A」と題する文書を出し、「個人番号を不記載や一部不記載(アスタリスク表示を含む)とすることは認められていません」と自治体に圧力をかけた。しかし、税額通知書に番号を記載する理由については「公平・公正な課税や事務の効率化につながる」とするだけで、具体的な説明をしてこなかった。不記載の自治体に地方税法上の罰則がないことは認めている。

同省の担当者は「マイナンバー制度の趣旨や、通知書に個人番号を記載する目的を引き続き自治体に説明し、来年度以降、記載してもらえるようにしたい」と話した。

すでに通知書の誤送付も明らかになっている。札幌市では、3通(8人分)の誤送付が判明。市の事務処理ミスや誤配達が原因で、いずれも回収したが開封された後だった。同市は個人番号を記載し、簡易書留で発送していた。

一方、個人番号の利用差し止めなどを求めている「マイナンバー違憲訴訟」の東京弁護団は、4月18日に東京地裁であった口頭弁論で、この問題を取り上げた準備書面を陳述した。

税額通知書への個人番号記載が許されるなら、マイナンバー法は「極めて抽象的かつ曖昧な目的で、漏洩などのリスクがあるにもかかわらず、個人番号を本人の同意なく送付することを可能とする法律ということになる」と指摘。「個人のプライバシー権などを制約するもので憲法13条に反し違憲」と主張した。番号制度の違憲性を立証していく大きな柱になりそうだ。

(小石勝朗・ジャーナリスト、5月26日号)

加計学園疑惑にみる安倍官邸の「恐怖政治」(佐藤甲一)

2017/06/06(火) 15:06

2018年春に愛媛県今治市で獣医学部の開設を目指す「加計学園」をめぐる問題が再浮上した。国家戦略特区の認定、新設学部の認可をめぐって内閣府職員が文部科学省の担当官に「総理の意向」をかざして手続きの加速化を求め、そのやりとりを記した文書が現れたのである。この問題は「森友学園」の「忖度」で済まされない問題をはらんでいる。

5月17日の衆議院文部科学委員会で文書の存在を明らかにした民進党の玉木雄一郎衆院議員の質問に、松野博一文部科学大臣は、学部新設について「設置時期をあらかじめ提示、書き込むようなことは審議会との関係においてどうなのかと話した記憶がある」と答弁した。

新設学部の認可は文科省の諮問機関である大学設置・学校法人審議会において厳正に審査される。委員は大学関係者などからなり、審査内容は施設や教員の配置、カリキュラムの内容まで多岐にわたる。にわかに提出したから通るものでは到底ありえない。松野大臣はそうした認可の手続きを念頭に、16年1月に戦略特区認定、3月末に学部新設の申請、8月末に認可の判断提示というスケジュールからみて準備不足に陥ることはないのかとの真っ当な疑問を示した、と受け止められる。

言い換えれば、国家戦略特区という安倍内閣の「三本の矢」の一つである目玉政策だからと言って厳正な認可基準を曲げることはあってはならないとの懸念を示したもので、そう指摘せざるを得ない状況認識が存在したことを物語っている。

52年間認められてこなかった獣医学部の新設が本当に必要かどうかは意見が分かれる。百歩譲って獣医師の増員は必要で、さらに今治市が国家戦略特区に認定するに相応しいとしても、そのことと開学を前提として日程を区切り、あたかも大学設置基準を「緩和」してでも間に合わせろというのは本末転倒である。

「総理の意向」の有無は別としても、内閣府が主導する日程ありきの進め方は、文部科学行政の公正な進め方とは相容れない。松野大臣の答弁から安倍政権の目玉政策という「大義」を掲げて、適正な行政の執行をねじ曲げることを強要するかのような振舞いが、霞ヶ関の内部にあることが明らかになったのである。

さらに重大なことがある。先の委員会で「文書が作成された可能性はある」と答弁した松野文科大臣に対し、菅義偉官房長官は5月17日の会見で「文書の作成日時や作成部局が明確になっていない」などと述べ、「怪文書の類い」と決めつけた。松野大臣が言及した「存在の可能性」についての調査は19日に行なわれたが、関係者7人から1人当たりわずか10分?30分の聞き取りで済まされ、「確認できなかった」との結論に終わっている。菅官房長官が「怪文書」と頭ごなしに決めつけたものに、松野大臣が異論を唱えられるはずもない。

懸念すべきは菅官房長官をはじめとする安倍官邸の霞ヶ関に対する「恐怖政治」ともいえる「統制」であり、安倍首相周辺が絡む事案によって、行政の公平性がねじ曲げられようとしている事実である。だが、そうした手法への反感も霞ヶ関内に燻っていることは、図らずも松野大臣の答弁から明らかになった。政党政治を否定するかのような安倍首相の改憲提案もあわせ、「安倍一強政治」の歪みが露わになりつつある。

(さとう こういち・ジャーナリスト。5月26日号)

前川前文科事務次官、菅答弁に反論

2017/06/05(月) 20:03

6月5日に開かれた衆議院決算行政監視委員会で、加計学園問題が取り上げられた。今井雅人委員(民進党)の質問に菅義偉官房長官が答弁に立ち、記者会見やメディアからのインタビューなどで発言を続ける前川喜平氏が文科事務次官を辞めた経緯について、前川氏への個人攻撃ともとれる発言を繰り返した。

これに対し、前川氏は同日夕方、弁護士事務所を通じて「説明が不十分と思われる点、事実と異なる点があります」として、マスコミ各社に事実関係をファクスで送付した。

たとえば、菅官房長官が、「(前川氏は)天下り問題に対する世論の厳しい状況になって、初めて自らが辞められた」と答弁したことについて前川氏は次のように記している。

〈私は1月4日には引責辞任を決断し、省内の再就職規制違反問題の担当者にその意思を伝えております。そして、1月20日に辞職を承認するという発令を受けました。/一方で、再就職規制違反問題が初めて報道されたのは1月18日のことであると認識しております。(略)いずれにしても菅官房長官のご指摘はあたりません〉

前川氏がファクスで最初に記しているとおり、安倍晋三首相の友人に便宜を図るために公平公正であるべき行政がねじ曲げられたのではないかという加計学園問題の疑惑と、前川氏辞任の経緯は〈本質的部分とは関係のないこと〉だ。

安倍政権は、前川氏のイメージダウンが目的としかみえない「個人攻撃」をやめ、内閣府・文科省の関係者に対する真相究明に協力すべきだ。そうしないと、安倍政権に対する信頼はますます揺らぐ。

前川氏の主張の全文はこちら

(伊田浩之・編集部)

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