各新聞社 地球環境問題担当各位
熱帯林行動ネットワーク
小倉 正
●熱帯林の状況について
FAOより「世界の森林の現状1997」(SOFO1997)が今年3月に発行され、80-90年の10年間の状況を示していた「1990年度森林資源評価-グローバルシンセシス」(FRA1990)以降初めて、90-95年の5年間の森林減少の状況が明らかにされました。
熱帯林に関して言えば、80年代の10年間の減少速度から90年代に入って、少し下がった程度であり、大きく状況が変わっているわけではないと言えます。
文末にNGO第三世界ネットワークの見解の紹介文を添付します。
この見解は妥当だと私も思います。
●森林条約の討議の現状について
・これまでの経緯
リオの地球サミットでの「森林原則声明」の採択以降、CSDの下の特別会合である、「森林に関する政府間パネル」(IPF)において、持続可能な森林経営の基準と指標に関する複数のプロセスの討議や、エコラベルの利用が貿易に与える影響の問題、そして森林原則声明の各国での実施状況の確認など、森林問題の様々な論争点について討議が行われました。
今年6月の国連環境特別総会の場では、各国の考え方の違いを受けて、比較的継続審議のような、「森林に関する政府間フォーラム」(IFF)を2年間開催し、世界的な森林条約の必要性と内容について討議をし、改めて2000年のCSDでの議論に委ねることになり、10月1-3日のIFF1からは、IFFでの討議項目決定などが始まります。
林野庁としては、これまで、中間の意見を保ってきたのですが、IFFが始まるに当たって、森林条約の推進の方向と、国際貢献として10年前に横浜に誘致してきたITTOを支援して、森林条約の中でITTOに大きな位置を占めさせようという考えに変わりました。
この森林条約の状況に関しての見解を以下に述べます。
・IPFでは最終的にほとんどの森林NGOは、森林条約に反対の立場を鮮明にしました。
・IPFでの討議を見た限りでは、討議への参加者が代表する部門の問題があり、適切な代表団が構成されていない点が最も問題だと思います。
森林減少の見かけの原因について、焼き畑と薪炭材採取がよく強調されるが、本当にそれが原因なのであれば、農業担当閣僚なりエネルギー担当閣僚を討議に参加させ、対策を取ることが必要なはず。 仮にそうだと思っていて、それらの部門の担当者を討議の場に引き込もうとせず、森林経営の話ばかりしかしないのであればそれは、突き詰めての原因究明をし、役に立つ対策をする気がないからか、さもなければ、現在討議に参加している林業セクターの担当者が、森林伐採の問題を隠そうとしているのにすぎないと考えざるを得ません。
・実際は地域によって状況も大きく異なる森林の問題を、一つの森林条約で有効な規制などが取れるとも到底考えられませんから、枠組み条約の成立まで10年単位の取り組みをするのは、回り道であり、行動しないことの時間稼ぎにしかならないという危惧を多くのNGOは抱いています。
・また、実際に森林条約を進めようと言う国々も、例えばカナダにしても、自分の国の森林経営を美化して伝えており、各地の草の根の団体からの批判に答えていない現状であり、意義のある内容が作れるとは考えられません。
・最近では、ITTOですら、自分の国でエコラベルを作るプロジェクトを始める提案をしており、西暦2000年目標という目標値は作られましたが、これを理由とする貿易制限は掛けられず、WTOの自由貿易原則とすら全くバッティングしない、名前のみの保全を看板として掲げることで、ボイコットや不使用条例で拒否されている、西欧先進国市場への売り込みを行えるようにしようとしていると考えます。
・わずかにIPFで有意義だった項目としては、NGOの参加が進んだことであり、特に森林に関わる国際先住民族団体の発言が容認される雰囲気を作ったことが上げられます。
・森林減少の根本原因とは、さまざまな南北問題のかたまりそのものであり、南北問題による環境被害が、森林という形をとって具現化したものであると考えれば、各国の林業部門の担当者のみが集まって持続可能な森林経営などの業界的な規範を森林条約の中で作るとしても、それだけでは対策の意味をなさない可能性があります。これは、一つにはリオで気候変動問題や生物多様性の問題をそれぞれの条約の中だけの討議に区切ってしまって、それぞれの問題の連関を断ち切ってしまい、南北問題の絡み合いを議題に載せられなくしてしまった点が問題であり、それぞれの論議で連携を取る仕組みを作ることが重要だと考えています。
少なくとも、地球環境問題に関わる全ての条約で、技術移転と資金メカニズムのセッションが同じように設置され、同じ討議の結果、南北の間で見解の相違が大きく何も生み出さないままであるという状況には、このままでは出口がないと言わざるを得ません。
〔資金メカニズムに関して言えば、唯一先進国がある程度の責任を認める可能性がある、気候変動枠組み条約の中でお金を拠出させ、南北間の資金移転を行う対象として、他の関わりのある砂漠化防止条約、生物多様性条約などの資金源として使わせるなど、問題源としても、対策としても関連のある各条約間の連携を取る仕組みを作り上げるべきではないかと考えます。〕
・南北問題に正面から取り組むということはすなわち、WTOの自由貿易スキームそのものへも挑戦することが必要になります。
自国の森林を保護し、持続的に使っていくための貿易制限は、国内の森林保全に直接関わることであり、農業部門以上に保護の必要は明らかです。
・勿論、今年はCOP3、温暖化問題の非常に重要な交渉会議があり、関心も呼びやすく、エネルギー消費の問題や森林の破壊の問題として、南北問題が構図として見えやすいわけですから、今年はNGOの連合体である気候フォーラムに参加して、この気候変動問題を機会に森林問題にも目を向けてもらうとともに、失われた条約間のつながりを取り戻すように、多くの一般市民に働きかけようとしています。
国連環境特別総会を控え、森林減少に関するFAOの新たな統計が出ているもようです。 Third World Resurgence No.81/82より部分訳を紹介します。
途上国側のNGOの国際森林討議に関する見解ともなっていますので、ご一読下さい。
【森林の劣化はなおも続く】
熱帯雨林に関する憂慮は、UNCEDプロセスにおける中心的な議題であった。
多くの途上国が、UNCEDでは熱帯林の問題だけが取り上げられるべきではなく、先進国で既に多くの森林が失われたことを考慮に入れ、全ての種類の森林に注意が払われるべきであることをきちんと取り上げた。その結果、法的拘束力のない、森林に関する合意の中で、全ての種類の森林の危機を取り上げる公約が行われた。
当時、多くの先進国NGOは森林条約を推進していた。しかし、多くの途上国NGOは、国際協定では、森林も保全されず、また先住民族や他の森林居住者の権利も保証されないと論じた。
政府のレベルでは、多くの森林資源を保有している南の国々は、北の支配の下に自国の資源がグローバル化されることを恐れ、条約に「躊躇」していた。
この間にも、原生林は高い速度で劣化し続けている。これが例えば米国やカナダなど、自然保護活動家が伐採に抗議している北の国でも起こっている事なのだ。
途上国では、以前はとうてい入り込めず伐採できなかった遠隔の地へも森林伐採が広がっている。例えば太平洋の島国や南米、アフリカの残存する森林も同じく脅威を受けている。最近では東南アジアの森林伐採企業が多国籍プレイヤーとなり、最終消費地こそ日本、欧州、北米のままではあるが、アジア太平洋地域や南米地域に大きなコンセッションを取得するようになっている。
リオ以降、世界の森林の状況は引き続き速い速度で悪化し続けている。このことは、全体の状況をチェックすることにはるかに失敗しており、森林消失のプロセスが繰り返されるままになっていることを示している。
97年3月に刊行されたFAOの新しい報告書「世界の森林の現状1997」によると、世界の森林は、1990年から95年の間も引き続き高い速度で減少し続けており、毎年、平均して1130万ヘクタールの森林が失われ続けている。(IPS, 1997)
この五年間で途上国の森林は6510万ヘクタール(1302万ha/年)減少しており、この減少量は、先進国での880万ヘクタールの森林増加によって補われている。
このように、正味では5600万ヘクタールの森林が失われた。
報告書は、途上国の年間減少率を0.65%と概算している。
途上国の天然林は1990年から95年の間、毎年1370万ヘクタールの減少を示している。これは1980年から90年の、毎年1540万ヘクタールの減少と比べれば僅かに低いが、依然として高い速度である。
森林減少はまた、途上国の熱帯地域で最も大きく、熱帯アジア-オセアニア地域で毎年0.98%の最高値を示している。
先進国の中では、森林の条件の悪化が、欧州と北米で重要な問題であり続けている。その中には山火事や、病虫害、大気汚染が含まれる。
UNCED以来、森林の状況全般に関しては、ほとんど何の進展も無かったことをこのデータは示している。伐採について言えば、多くの国で伐採可能な土地面積が減少したため、林業の活動が、新たな地域や国に飛び火したことが挙げられる。そして、また広範な熱帯林地域で、新たな伐採コンセッションを与える計画が上がっている。
森林に関する政府間パネル(IPF)がCSDの下に設置され、ここで作られた森林に関する行動計画が97年の国連環境特別総会で評価される。
NGOの強いロビー活動によって、討議事項の中には、(途上国の累積債務問題、不公正な貿易の問題、持続不可能な消費/生産パターンの問題を含む、)森林減少の基本的な原因を同定することの必要性が述べられていたにも関わらず、IPFの議論は林業問題にばかり集中していた。
IPFのプロセスでは、林産業と林業の利益を推進する国々が主要なアクターであった。
IPFの具体的な報告が、究極的には商業伐採を合法化するための、一連の持続可能な森林経営の基準と指標となることをNGOは恐れた。結果として、森林減少の基本的な原因が確定されず、また共同体の権利が守られず、生物多様性や森林生態系の保全も行われない危険がある。
UNCEDの時に森林協定を推進していたNGOのいくつかは、IPFの方向性に懸念を抱いているため、後に記者会見を開いて、森林条約に反対の立場を明らかにした。
政治的レベルでは国際的な論争が続く一方で、森林部門の更なる自由化のプロセスと、商業伐採のグローバル化と他の経済活動のため、更に高い速度の森林減少が引き起こされ、"いつものとおりのビジネス"となる危険性がある。
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