日・豪のNGOが日本製紙に木材チップ工場の閉鎖を要請

 今年7月、オーストラリアと日本のNGO・個人が共同で、日本製紙に対し、オーストラリア南東部のイーデンで天然林を木材チップ加工しているハリス大昭和の工場を閉鎖するよう要請した。これは、来年4月に予定されている日本製紙と大昭和製紙の経営統合にあたって、明確な環境行動指針を掲げている日本製紙に大昭和製紙の現地子会社の工場の閉鎖を進めてもらおうとするもので、日豪合わせて41の団体・個人が署名した手紙を日本製紙に送付した。

唯一の日系企業、ハリス大昭和

 ハリス大昭和は、オーストラリア国内で天然林伐採と木材チップ加工に直接手を下している唯一の日系企業で、大昭和製紙が62.5%、伊藤忠商事が37.5%の株を保有している。オーストラリア南東部のビクトリア州とニューサウスウェールズ州の州境に工場を持ち、両州の天然林から原料を調達している。生産された木材チップは、全量を日本の大昭和製紙に輸出している。

 ハリス大昭和の伐採地の一つであるビクトリア州南東部に位置する東ギプスランドは、ゴンドワナ大陸時代から続く豊かな生態系を維持しており、オーストラリア国内で見られる陸上動物の半分以上の種が生息しているほか、樹齢500年以上のユーカリ原生林などが繁殖している。しかし、オールドグロスのうち完全に保護されているのは約50%にすぎず、伐採される木材のほとんどは、オールドグロスを含む樹齢の高い森林から伐採されている。

 ハリス大昭和の工場は、オーストラリアで最初に設立された木材チップ工場だが、1967年の操業開始時から現在に至るまで議論を呼び続けている。現地の抗議活動は、工場周辺のみならず、森林内やオーストラリア国内の各都市でも封鎖を起こし、多くの逮捕者を出している。世論調査は、常に80%以上の人々が天然林を木材チップのために伐採することに反対していることは、前号でも報告したとおりである。

 また、日本でもとても人気のあるコアラは、伐採によって生存数が極めて少なくなってきており、地域的な絶滅の危機に瀕している。科学的調査によって、野生のコアラがたくさん生息していると認められた地域においても、今年後半にも伐採が開始される予定になっている。

明確な行動指針を持つ日本製紙

 現地で直接伐採と木材チップ加工に関わっているのは大昭和だけだが、他の日本の製紙会社が天然林伐採に関わっていないわけではない。王子製紙、日本製紙、大王製紙、三菱製紙などが、オーストラリアのオールドグロスを含む天然林から生産された木材チップを、日本の商社を通して購入している。

 しかし、この日本企業の中で、王子製紙と日本製紙の二社については、天然林木材チップを植林木のものに転換する具体的な計画を持っている点で、他の会社とは異なっている。日本製紙は、2008年までに海外での植林面積10万ha以上を推進し、輸入広葉樹チップに占める植林木比率を70%以上にすることを目標としている。もちろん、植林造成については様々な大きな問題があるのだが(JATANの新刊「世界に広がる産業植林とその被害」を参照)、現地では「天然林伐採よりはまし」として、植林木への転換の方針は歓迎されている。

 しかし、日本製紙が大昭和製紙と統合した場合、植林木への転換目標が達成されなくなることが予想される。このようなことから、日・豪のNGOは大昭和ハリスの工場を閉鎖することを要請することになったのである。

不透明な統合後の方針

 日・豪の署名を連ねた手紙を7月26日に日本製紙へ送付した後、JATANは、地球の友ジャパン、レインボーパレード、日本消費者連盟とともに、8月31日に同社を訪れ、現地の状況を説明した上で、統合後の方針などについて質問した。

 日本製紙側の回答は、以下の通りである。

▼統合後の体制については、持ち株会社「日本ユニパック」の下に日本製紙と大昭和製紙が製造会社として存続し、原料調達部門はそれぞれの製造会社に置かれる。

▼環境に関する方針を持ち株会社で作るか、それぞれの製造会社で作るかは、まだ決まっていない。

▼ハリス大昭和の木材チップ工場の閉鎖については、現在はまだ別の会社のため、他社の経営について判断することはできない。

▼2000年現在の日本製紙の自社海外植林面積の実績は30,054haで、輸入広葉樹に占める植林木の比率は49%(予算ベース)である。

 以上のように、統合前という理由から明確な回答を得ることはできなかったが、逆に事前に現地の状況を訴え、NGO側の要望を伝えることができたことは大きな意味があったと考えている。JATANでは、今後も日本製紙に対する働きかけを行っていく予定である。■

日本製紙への要望書

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