第4回 森林に関する政府間フォーラム(IFF4)

〜議論はまたも先送りに〜

 森林に関する政府間フォーラム(IFF)の第4回会合(最終会合)が、1月31日から2月11日までニューヨークで開催された。

 国際的な森林問題に関しては、森林に関する政府間パネル(IPF)が95年から97年まで開催され、約150の行動提案をとりまとめたが、森林条約の作成の必要性については国際的な合意が得られなかった。その後、森林に関する政府間フォーラム(IFF)を設置することが決定され、これまでに3回の会合を行ってきた(図参照)。

 IFFでは、いわゆる森林条約に関する検討や、IPFからの懸案事項(新たな基金、技術移転など)の検討が行われたが、最も関心を集めた森林条約の作成については、カナダ、マレーシア、コスタリカなどの賛成派と、アメリカ、ブラジルなどの反対派が対立したままに終わった。今年の4月から開催される持続可能な開発委員会(CSD)に提出する文書は合意されたが、その内容は、

(1)国連に新たに「国連森林フォーラム(UNFF)」を設立する

(2)5年以内に森林に関する法的拘束力を有する文書(条約等)の作成について検討する

 と、双方の意見を取り入れた形となっている。なお、これまでのIPFやIFFがCSDの下に設置されていたのと異なり、今回提案されたUNFFは国連の下に常設され、これまでに合意された様々な取り組みについての実施を促進することが目的とされている。

 IPF以来、多くのNGOや先住民族団体は、森林条約は伐採会社や貿易業者によって支配され、森林問題を解決することはできないばかりか、森林伐採が正当化されたり、森林に依存した生活をこれまで以上に侵害されるなどとして、新たな森林条約をつくることには反対してきた(JATAN NEWS No.40参照)。そして、IPFで合意された行動提案を実施することや、そのモニタリング機構を創設すること、森林の減少・劣化に関する背景要因に着目することなどを求めてきた。

 今会合の結果、条約の作成は先送りとなり、UNFFの目的がこれまでに合意された取り組みの実施の促進を前面に出したことについては、NGO側の主張が通ったと言えるかも知れない。また、UNFFの位置づけが、いわば「格上げ」されたことや、他の関連機関との調整や連携を強化するとされたことによって、これまでIPFやIFFだけでは解決できなかった問題が前進する可能性もある。

 しかし、これが実際にどう機能するかについては、今後の推移を見守る必要がある。

森林問題に関する国際的な取り組みの流れ

地球サミット(UNCED;92年)

法的拘束力のない「森林原則声明」作成

持続可能な開発委員会(CSD3; 95年)

IPFの設置を決定

森林に関する政府間パネル(IPF; 95〜97年)

約150の行動提案を決定

国連特別総会(UNGASS; 97年)

IFFの設置を決定

森林に関する政府間フォーラム(IFF; 97〜2000年)

UNFFの設置を提案

持続可能な開発委員会(CSD8; 2000年)


IFF4の簡潔な分析

(Earth Negotiaions Bulletin Vol.13 No.66より抄訳)

 森林に関する政府間フォーラム(IFF)の最終会合は、多くの未解決の問題に取りかかることに成功したが、IFF4における最大の関心事は、森林に関する法的拘束力を有する文書(条約等)の交渉を始めるかどうかであった。

 また、他の多くの問題も大きな議論を巻き起こした。新たな資金、技術移転、環境と貿易については、途上国側は持続可能な森林経営を達成するための必要不可欠な基盤となる三つの柱と呼んだ。この三つの柱に関する交渉グループは激しい議論を展開したが、新たな資金源の問題と、環境と貿易が相互支持的なもの(貿易が環境によい影響を与える)であるかどうかについては、合意しないことが採択された。

法的拘束力をつけるか、つけないか?

 すべてのタイプの森林の経営や保全、持続可能な開発を促進するための、国際的な取り決めやメカニズムについての議論、特に、法的拘束力を有する文書(LBI)の交渉を始めるかどうかについては、最も激しい議論を巻き起こした。この交渉の激しさは、会合の最終予定日の翌朝の日の出まで、この問題の主要部分に合意することができなかったという事実が物語っている。いくつかの参加国が、交渉において一人勝ちを目指す態度を持っていたことは当初より明らかであった。いくつかの条約作成推進国は、LBIを明記していない新しい森林に関する政策フォーラムへの言及には全く譲歩しようとしなかった。条約作成反対国は、新しい森林フォーラムには賛成したが、LBIには反対した。

 条約作成に関する意見の大きな分裂は、通例の南北対立とは異なるものであった。いくつかの熱帯林地域の国は法的拘束力を有する文書に賛成したが、その他の国は反対した。また、いくつかの温帯林地域の国は条約作成に賛成したが、他の国は中立的であったり、強く反対した。LBIに賛成する理由は国によって異なり、持続可能な森林経営を推進することに焦点をあてている国、貿易の保護体制を作ろうとする国、新たな資金の保証を求める国など、様々であった。LBIに反対する理由については、国家の主権を守ろうとする国、行動を実施することに焦点をあてる国、他の文書(条約等)の下での行動を主張する国に分かれた。先住民族団体は、LBIによって森林に依存した文化や生活をする権利がさらに侵害されることを恐れ、いくつかのNGOは、LBIによって悪い林業施行が正当化されることを心配した。途上国はこの問題に関して一つにまとまってはいなかったが、特に多くのアフリカ諸国は、LBIに新規の追加的な資金援助についての何らかの約束を取り付けることに油断がなかった。

 結局、「すべてのタイプの森林に関する法的な枠組みを作るための権限の範囲を勧告するために(5年以内に)検討を行う」という合意文は、LBIに対する賛成、反対の両陣営が共に満足できると感じられるほど、実にあいまいである。ある政府代表は、「今後5年間に、非常に多くの法律家が交渉結果を解釈するために莫大な公費を使うであろう」ともらしている。

誰が資金を出すのか?

 劇的なものではなかったが、森林基金の創設に関する論議は、多くの政府代表の最大の関心事となった。多くの政府代表は、持続可能な森林経営の達成に向けて進み出すために、新規で追加的な資金を作り出すことに望みをかけた。先進国には提供できる資金はなく、一つの基金に資金の提供を行うことについて、表明したがらなかった。

 いくつかの途上国は、新規で追加的な資金について明言のないLBIを検討する意志はないと繰り返し主張した。先進国側からは、さまざまな意見が出されたが、どんなに懸命に文書を書き替えようとしても、新たに捻出される資金はないという事実は変わらなかった。結局、各国代表は持続可能な開発委員会(CSD8)へ文書を提出することを同意したが、その文書では、IFFでは議論されたが、国際的な森林基金を創設するかどうかについては同意できなかった、と述べられている。

だれが知識を所有するのか?

 技術移転の要求から離れて、議論は生物資源へのアクセスとその利益分配に関する論争へ発展した。IFFは、アクセス、知的所有権、所有権に関する独自のシステムに関連する、複雑な問題の検討を進める場となった。この問題はまた、貿易と環境、森林に関連した伝統的知識(TFRK)に関する議論と結びついて浮上した。知的所有権と所有権に関する独自のシステムの議論については、IFFがこのような問題を扱う能力がなく、むしろ生物多様性条約や世界知的所有権機関との関係で議論されるのが望ましいと考えるいくつかの政府代表を不安にさせていたのは明らかであった。これがこの問題を進めるチャンスであり、森林に基づいた技術をより大きく移行させる手段になると考える国もあった。知的所有権、特に森林に関連した伝統的知識に関する議論は、少なくともあるひとつの先進国に、独自のシステムによって、国(あるいは伝統的な知識の所有を法的に認められた人)に、これらの保護権を過去にさかのぼって適用する道が開かれるかもしれないという関心をかき立てた。これらのすべての懸念は膠着状態を招き、各国代表は合意しないことを採択し、最終的には文書からかっこ書き(前回会合までの保留事項)は取り除かれたにもかかわらず、前進はほとんどなかった。

政治的権限の欠如?

 1999年の森林の減少と劣化の背景要因に関する国際ワークショップから、IFF3に提出された100以上もの行動提案の中で、国際金融機関の透明性に関する行動提案だけが唯一採択された。IFFがこれらの背景要因について注意を払わなかったことは、IFFが「巨視的な」マクロ経済問題に関する取り組みにおいて、その他の機関をしのぐ程の政治力を持っていなかったことを示している、とある政府代表は話している。彼はまた、CSDの下部組織であるIFFは、IMFやWTO、世界銀行、その他の主要なハイレベルの機関に関連する問題に取り組むほどの十分な政治的権限を持っていないようである、と言っている。このような見方は、国連経済社会理事会(ECOSOC)やCSDではなく、国連総会の下に新たな国連森林フォーラム(UNFF)を設置するという要求を強いものにしている。

 しかしながら、この新たなフォーラムをめぐる問題の一つに、政治的権限を持つこととメジャーグループ(先住民族団体やNGOなど)の参加が、交換取引になるということがある。提案されたUNFFは、国連総会の下で持つことのできる高度な政治的権限によって得るものがあるであろうが、森林問題に関わる多くの政府組織や非政府組織の参加を促すために必要な、オープンで透明性のある包括的なプロセスを失うことにもなりかねない。なぜなら、NGOは国連総会を母体とする組織への参加を制限されているからである。いかにして、より大きな問題に取り組むための政治的権限を持ち、なおかつ、政策問題の影響を直接受けるような人々を参加させていくかというジレンマは、提案された取り決めにおける最も重要な課題として残されている。

デジャ・ブ?

 IFFは、森林に関する政府間パネル(IPF)が、国際森林政策において最も議論の多い問題についての合意を形成するという課題を残して終了した問題に、再び取り組んだ。これらの問題の多くの議論は、デジャ・ブのようにIPFと同じ議論が繰り返されていたが、いくつかの分野ではIFFは確かな前進を見せた。ある政府代表は、IFFの主な成果は、国家森林計画の重要性を注目させたばかりでなく、森林問題についての多くの関心を集め、対話を続けたことであると述べている。また、IFFのプロセスは、多くの国家主導の取り組みやNGO主導の活動を促し、資金問題や背景要因、森林被覆率の低い国々、森林研究のような分野への人々の関心を集め、IPFや前回までのIFFの会合において議論された多くの問題についての合意文書を作成した。

新しく改善された方式?

 IFF4閉会の際には、3年前のIPFと異なり、合意文書を作成することができたことで、多くの政府代表が安堵した。しかし、IFFの合意文書のいくつかの部分、特に継続するフォーラムの提案や法的拘束力を有する文書について継続して議論することについては、IPFの結果と同じである。このため、自国の首府にIFFが成果をあげたと説得することは、とても難しいことであろうと述べた政府代表もいる。IFFの提案は勧告にすぎず、真の決定はCSD8によってなされるため、闘いはまだ終わっていないとほのめかしている政府代表もいる。しかしながら、CSDは1997年のIPFの勧告について議論を進めることはできず、合意に達するために国連特別総会(UNGASS)における、よりハイレベルな参加者が必要であった。現在のところは、CSDがIFFの勧告にどのように対応するのか、また森林に関する国際的な対話と協力が将来どうなるのかを見守る必要がある。

ニュースレター記事一覧 | ホームページ

© 1999-2003 熱帯林行動ネットワーク(JATAN)