石川源嗣著『ひとのために生きよう!団結への道−労働相談と組合づくりマニュアル』
書評・感想文



冬の時代といわれる現在の労働運動にとって今何が必要なのか
                                      東京全労協議長・押田五郎

 東京東部労組は東京の下町に腰をすえた地域合同労組である。結成以来三八年。中小企業が密集し、労働者の活気と重層的な差別構造が入り混じるこの地域で活動の場を広げてきた。

 その東京東部労組が労働相談活動を始めて一八年になる。二〇〇四年にはNPO法人労働相談センターを設立させた。このセンターだけで二〇〇五年は年間の相談が五六四六件となり過去最高の件数となったという。日本の労働相談の草分けであり、かつトップクラスの実績を持つ実践的立場から、冬の時代といわれる現在の労働運動にとって今何が必要なのかを本書は明らかにしている。

 日本資本家階級による徹底した労働者分断と労働組合解体攻撃によって、民間大企業労組がこぞって御用化され、労使協調の企業別労働組合の枠組みから中小・下請け・臨時的雇用労働者が排除されて、労働者攻撃に対する組織的抵抗が圧倒的に抑え込まれる中で、首切りや権利侵害などに直面した労働者が個人として立ち上がるしかない状況がその背景にある。

 こうした日本の労働運動の歴史と現状を冷静に分析した上で、「労働相談は労働者への搾取、抑圧など階級矛盾の噴出口であり、最前線といえる」として、その具体的な事例を示すとともに、労働相談・組織化オルグをどう展開すればいいか実に判りやすく語りかける。

 そして労働相談を組合結成に結びつけるために、丁寧な労働組合結成マニュアルを展開している。

 長年に亘る厳しい労働運動の実践に体を張ってきた石川源嗣さんが、人間としての温かさを滲み出させている好著。ぜひ読み込んで活用したい。



読み応えのある内容でした
                               「港合同」(2006年7月10日号)編集後記

 全国一般東京東部労働組合副委員長の石川源嗣さんが執筆した「ひとのために生きよう!」は読み応えのある内容でした。

 第一章の過労死労災闘争の下りは、チェーン化して肥大する業界の生き残りを労使がどのように果たしてきたのか、労働組合の役割とは何なのかと、考えさせられる報告です。


中小労働運動の経験を学ぶ 組合活動家に必読書
                                       「全労協」(2006年8月1日号)

 この度、石川源嗣さんが「人のために生きよう!」、副タイトルで「団結への道」「労働相談と組合づくりマニアル」という本を「同時代社」から発行しました。石川さんは、一昨年までは全労協の常任幹事をされていた仲間で、現在は東京東部労組副委員長とNPO法人労働相談センター理事長を兼任され活躍されています。
 日本の労働運動は、後退に次ぐ後退を続け、組織率も十七.八%にまで低下しています。

 この間の規制緩和と労働法制の改悪は、正社員を削減し、非正規労働を拡大させています。中小労組と非正規の組織化、地域労働運動は、今後の労働運動の盛衰を決するものとなります。

 まさに、これらの課題は多くの仲間の共通課題です。これまでに取り組んできた経験から、労働相談活動と組織化、労働者の権利と組合づくり、オルグのあり方、地域連帯等々、分かりやすく提起されています。

 これは、組合活動家の必読書です。多くの方が購入して、参考にされることを要請するものです。

<組合は一生の時代に> 
 内容的には、例えば、すかいらーく店長の過労死と損賠・再発防止の闘い、労働相談での辞めたくても「辞めさせてくれない」という経営者独裁の職場支配の実態、個別労使紛争とインターネット活用による労働相談件数が激増していること。

 そして、この間の労働法制の規制緩和・改悪、終身雇用・年功賃金の崩壊、雇用の流動化と非正規の拡大等々に対して、労働組合のあり方を「企業内組合ではなく」「地域ないし産業に基盤をおいた労働組合を」、会社は変わっても組合は変わらないものとして「会社はいっとき、組合は一生」という時代に突入していると提起しています。



「非正規労働者」が大問題になっているとき、時期にかなった本
                                                   樋口篤三


 「ひとのために生きよう!団結への道」、有難うございました。
 「非正規労働者」(名称からしていかめしい)が日本も韓国も中国も(世界的に)大問題になっているとき、時期にかなった本だと思います。

 「オルグ」は、私の人生そのものです。何年かに、「日本オルグ団会議」という名の組織が生れ大いに期待したら、すぐ「開店休業」に。発案者が自己のせまい特殊なオルグ経験だけで人を集めようとしたのでは?

私は、地区オルグ、工場内オルグ、党オルグ等を経験し、その重要性を痛感してきました。この本の様なオルグは、ゼンセン同盟がもっとも多く歴史も積んできたが、思想の違い(労資協調主義)から、経営者と一体で組織化する等、敗戦直後から−松岡駒吉が代表−いわれてきました。出版記念会をぜひやるべき!




代行主義的なサービス活動から「団結への道」に結びつけていくために
                                                   戸塚秀夫

 先日はご高著「ひとのために生きよう!団結への道」をご恵投下さり、有難うございました。現在最も必要とされるパトスと落ちついた考察とが結びついた好著と受けとめました。地味な相談活動をベースにして生まれたこの書物は多くの読者に届けるに値いする、と思います。本来でしたらよろこんで出版記念パーティの「よびかけ人」にならせていただくところですが、あいにく当日は先約があって出席できませんので遠慮させていただきます(自分が出席できない会合への「よびかけ人」にはならないという原則で身を処してきましたので)。

間違いなく良書であり、多くの人々にすすめたい本ですので、友人たちに宣伝していくつもりです。以下、その理由を要約し、若干のコメント風の希望を申し上げます。

 この書物の最大の強み、魅力は、自分たちの運動の経験を、限界や過ちを含めて分析し、成果をふまえて「団結への道」を探ろうとするパトスが一貫している、ということでしょう。限られた労働相談のケースであっても、深く分析していくことによって、より大きな支配構造にたちむかうべき通路がみえてくる、と教えて下さっているように思います。

読みながら、以前(もう20年も前のことですが)足立実さんがかつての毛沢東の農村調査にふれながら、日本の大量の未組織労働者の海に組織化の波をおこしていく道はないか、と熱っぽく語って下さったことを思いだしました。私の記憶が間違いでなければ、当時、足立さんは労働相談活動についての評価、位置づけについて考えなおしているところだ、と語っておられました。この書物は、それを代行主義的なサービス活動から「団結への道」に結びつけていくために、どんな「教育活動」が必要とされるか、と提起しているように思いました。この書物を生みだしたものが、東部労組の多年の運動経験であり、それを冷静に分析しようとする知性であることは間違いない、と受けとめました。

 そこから、抽象的、一般的に正しいと思われる題だけでなく、極めて特殊、具体的な、実験的な提言が述べられていることにも興味をもちました。新たな「送り込み」戦略の提起、「労働相談ボランティア」の組織化の構想など、これまでも部分的には語られることもあったとは思いますが、このように系統的に語られるとつよい説得力がでる、と思いました。私はこの書物をいまの大学生たちにも紹介してみたい、と考えております。

 一つだけ気になったことを申し上げます。それは、組織率低落の原因を産業構造や就業構造の変化に求めようとする考え方を批判するなかで−私も同じような観点で文章をかいてきた人間ですが−、そのような変化が運動家たちにせまっている課題を理論的に捉えかえすというスタンスがやや弱くなってはいないか、という危惧です。私自身は、「原因」というものを多層的に探る、という観点を大事にしたい、と考えております。

 ご労作への感謝の気持をお伝えしたいと思い、少し長すぎる礼状になりました。今後ともご活躍下さるようにと期待しております。

二〇〇六年八月十七日

戸塚秀夫

『ひとのために生きよう!団結への道−労働相談と組合づくりマニュアル』を読んで
                                             佐々木有美(ビデオプレス)


佐々木です。

『ひとのために生きよう!団結への道ー労働相談と組合づくりマニュアル』を読みました。

著者の東京東部労組副委員長の石川源嗣さんとは、同労組での新支部結成を描いたビデオ『組合づくり』の制作時にお会いして以来のおつきあいです。

「いま日本の労働運動が歴史的な退潮期を迎えているのはまちがいない。『なぜここまで追いつめられているのか』との声が聞こえてくる。運動の活況期の手法はいまそのままでは通用しない。従来の運動の継続では労働運動の復活はありえない。創意が問われている」(「はじめにー死ぬのがいやなら組織せよ」より)

26年間地域労組のオルグとして活動してきた石川さんの、運動の現状に対する差し迫った危機感を感じさせることばです。最近の労働相談では、賃金・解雇問題などと並んで「(会社が)辞めさせてくれない」という相談が増えているそうです。暴力や脅しで労働者が強制的に働かされる「労働者の奴隷化」が深く進行する現実。「問題の本質は、個々の労働者が思想的、社会的に企業内に閉じこめられて監禁状態にあること、さらに会社内での労働者の完全無権利、経営者の完全独裁体制という究極の労使関係が形成されていること」だと石川さんは書いています。そしてこのような現実がどのような歴史的経過を経て形成されたのか、戦後労働運動の敗北の過程とその原因が明らかにされます。

「労働者の完全無権利」「経営者の完全独裁」を変えるためには、労働組合が強化される以外にはないわけですが、東部労組でも労働相談の件数は近年著しく増えているのに、それが新規の組合員獲得と連動しない。職場でも孤立した労働者の相談が多く、労働組合結成には至らないなどの悩みを抱えているそうです。日本の労働運動の中では唯一「元気」といわれ、ここからしか運動の再生はないとも言われる地域労組(個人加盟労組)がいま抱える悩みをどう解決していくのか、本書はそれへのきわめて実践的な解答です。

タイトルの『ひとのために生きよう』は、「夜回り先生」として子どもたちの相談相手になっている水谷修のことばだそうです。はじめはピンとこなかったこのタイトルも「『ひとのために生きる』ことは、人間が社会的関係の中でしか生きられないためであり、他者との関わりによって唯一、人間らしく生きることができる」という石川さんの思いにふれて納得できました。これは労働組合の原点を語ることばだったんですね。

『ひとのために生きよう! 団結への道ー労働相談と組合づくりのマニュアル』
(同時代社 03-3261-3149 定価1500円+税)