こんなときどうする
労働相談Q&A
contents

●ヘルパーの利用者宅の相互間を移動する時間が賃金とならない
保険給付の期限【労働災害】
セクハラ訴訟の実際の例は?
年俸者の残業代
契約期間途中の退職
休日の削減
産休と育児休暇を取ったらボーナスがゼロになった
女性には住宅手当は出せない?

 

 


ヘルパーの利用者宅の相互間を移動する時間が賃金とならない

  <ヘルパーの利用者宅の相互間を移動する時間が賃金とならない>

  <質問>
  ヘルパーをしています。仕事自体は好きですが、朝事務所に出勤して利
  用者宅に出向き介護を行っていますが、利用者間の移動する時間がトー
  タルで2時間もかかります。時給契約ですが、事務所は移動時間は賃金
  として計算しないといいます。もともと安い賃金なのに、これでは時間
  ばかりかかり賃金も安いままです。納得できません。


  <回答>
  メール拝見しました。厚生労働省は、ヘルパーの労働時間に入るものと
  して以下の通達をだしています(労働基準法第32条)。利用者間や事
  務所への移動時間は正当な労働時間ですので賃金を支払わないと違法と
  なります。

  ○移動時間 事業場・集合場所・利用者宅の相互間を移動する時間の取
  扱い。使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、労働者がそ
  の時間を自由に利用できないときは労働時間に該当する。たとえば、事
  業場→利用者宅や利用者宅→次の利用者宅の移動時間で、その時間が通
  常の移動に必要な時間程度であれば該当する(労働者の判断で寄り道し
  ていない)。

  ○業務報告書等の作成時間「その作成が介護保険制度や業務規定等によ
  り業務上義務付けられているものであって、使用者の指揮監督に基づき、
  事業場や利用者宅等において作成している場合には、労働時間に該当す
  る」。

  ○待機時間「使用者が急な需要等に対応するため事業場等において待機
  を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる
  場合には、労働時間に該当する」。

  ○研修期間「使用者の明示的な指示に基づいて行われる場合は、労働時
  間」「研修を受講しないことに対する就業規則上の制裁等の不利益な取
  扱いがある場合や研修内容と業務との関連性が強く、それに参加しない
  ことより、本人の業務に具体的に支障が生ずるなど実質的に使用者から
  出席の強制があると認められる場合などは、労働時間」。

 


保険給付の期限【労働災害】

<保険給付の期限【労働災害】>

<質問>
  労災保険と認定して休業(補償)給付を受けているが、ケカが治らず、いつまで貰えるのか不安です。

<回答>
 業務上のケガで休業日が続く限り給付されます(退職後も同じ扱いです)。ただ患部が固定化し、これ以上の回復のみ込み がない場合 は治癒とみなされ、給付は終了しますが、再発すればその時点から 給付は行われます。


セクハラ訴訟の実際の例は?
 


<セクハラ訴訟の実際の例は?>
 
  <質問> 
 私は、社長と3名の女性社員だけの職場で事務職です。勤続8年ですが、社長のセクハラがひどくなる一方です。仕事中でも体を触ってきます。
 忍耐の限度を超えました。退職も考えていますが、思い切って仲間と一緒に行政機関への訴えか裁判訴訟を考えて証拠を集めています。
  裁判で実際の例をひとつ教えて頂けないでしょうか。よろしくお願いし ます。
 
 
<回答> 
  メール拝見しました。
  ご相談の件ですが、明らかに、ひどいセクハラだと思います。 
  残念なことですが、当センターへもセクハラの労働相談は多数あります。 ここに来てセクハラの訴訟も多くなっています。裁判でも被害者が勝ってきちんと損害賠償を勝ち取っているケースも増えています。
 
  日本銀行事件(京都地裁判決 平成13年3月22日) 支店長が女性行員に対して、無理矢理キスをしたり胸を触ったほか、執ように食事に誘うなどのセクシュアル・ハラスメント行為を受け、被害者は精神的スト レスから健康も害し、通院治療で退職せざるを得なくなったケースに対 して、 裁判所は上司に対して、慰謝料150万円、1年間の賃金相当額など逸失利益約466万円などの損害賠償を命じた判決をだしています。
 
  まだまだ泣き寝入りする人も多いですが、勇気を持って立ち上がり、不当なセクハラを職場からなくしている方々も多くなってきています。 
  各県の労働局(http://www.campus.ne.jp/~labor/kankatu.html)の総合労働相談コーナーではセクハラ専門の相談窓口もあります。
  また、弁護士(日本労働弁護団)の無料電話相談窓口もご利用できます。
  日本労働弁護団 電話 03-3251-5363 毎週火曜日と木曜日午後から3時から午後6時

年俸者の残業代
 

 Q:「年俸者には残業代はない」と言われた。
 
 
 A:「年俸者には残業代を払わなくていい」は、ほとんどの場合とんでもない間違いです。

   年俸者であっても、会社は労働者の実際の労働時間が一日8時間、週40時間を超えた労働時間に対しては、必ず残業代を支払わなくてはなりません。
   また、仮に「年俸額」が「みなし残業時間・固定残業代含み」の場合は、就業規則・賃金規定などに「○時間のみなし残業時間」と予めきちんと明記されていないといけません。またその場合も「○時間」を超えた労働時間に対してはあらたに残業代を支払う必要があります。


契約期間途中の退職
 

 Q:契約社員です。契約期間途中で退職したいのですが、会社は「契約不履行」で訴えると脅かされます。


 A:契約期間途中でも、「正当な理由」があれば、期間の途中でもただちに解約できます。

   当然のことですが、会社が残業代を支払わないなどの労基法違反を行っている場合や悪質なセクハラなども解約できます。
   また労働契約の初日から一年を経過した日以降においては、使用者に申し出ることにより、いつでも退職できます(労基法137条)。
   また、労働条件が労働契約と著しく事実と相違する場合においては、労働者は即時に労働契約を解除することができます(労基法第15条の2)。
   また、民法628条は「やむを得ざる事由」の場合は解約を認めています。1.本人の病気 2.両親や子供の病気の介護などです。


休日の削減

  <質問> 
 私は、医療機関でいわゆる中間管理職をしています。先日法人から、今まで120日あった休日を106日に変更するという通達がありました。私も含めて、部下も休日の多さに引かれ入職した者も多くいます。私の就労契約書には、確かに120日(というか週休完全2日及び夏季3日冬季3日祝祭日)と記載されており、部下たちは就労契約を書面でもらっていないとのことでした。ただ、ハローワークなどに出している求人広告には確かに120日とかかれ、部下たちもそれを見て募集したのに・・・と不満は募っています。このような場合、私のとるべき行動はどのようなことなの
  でしょうか?よろしくお願いします。
 
  <回答> 
 メール拝見しました。ご相談の件ですが、●休日の日数については、「労働条件」の一部であり、それは労使が対等の立場で決定するものです。従って、契約の一方の当事者である経営側が一方的に変更すること はできません。原則として、本人の同意が必要となります。●また、休日を削減するというのは、「労働条件の不利益変更」にあたりますので、それを行うには、「高度の合理性」が必要となります。そのような理由もなく、勝手に不利益変更を行うことはできません。●以上のことから、経営側に対しては、休日削減の撤回を要求することが可能であると思われます。ただ、その際ですが、個人での対処が難しいこともあります。
 会社に労働組合がないのであれば、みなさんで労働組合をつくることを考えてみてはどうでしょうか。 


産休と育児休暇を取ったらボーナスがゼロになった

 
 <質問>出産して、引き続き育児休暇をほぼ一年取って職場に復帰しました。ボーナスがゼロでした。上司は「欠勤扱いだから出せない」と言います。あきらめなくてはいけないのでしょうか。
     
     
  <回答>メール拝見しました。
     労基法第39条の?は「産前産後の女性が、・・規定によって休業した期間は、・・出勤したものとみなす」と規定されておりますので、会社の「産休中は欠勤扱い」は明らかに違法行為となります。また、平均賃金を算出しなければならない場合でも出産休暇中の期間はこの算定期間からはずさなければなりません(同3項2号)。
     
     育児休暇に対しても裁判判例があります。東朋学園事件 東京地裁判決(平10.3.25)「出産休暇及び育児休暇を欠勤扱いとして賞与を全額支払わない取り扱いは、労基法およぴ育児休業法の趣旨に反し違法・無効である」
     
     以上の判決が示す通り、産休と育児休暇を理由とした賞与の全額ゼロという不利益取り扱いは違法となります。


女性には住宅手当は出せない?

 <質問> 
 私は、30年勤続の看護婦の婦長です。常々疑問に思っているのですが、なぜ私たち女性には住宅手当がないのでしょうか。私のとるべき行動はどのようなことなのでしょうか?よろしくお願いします。
 
  <回答> 
  メール拝見しました。
 1、男女雇用機会均等法第7条(福利厚生)では「住宅手当・・・については、労働者が女性であることを理由として、男性と差別的取り扱いをしてはならない」と規定しています。しかし、一般に、就業規則や賃金規定で、住宅手当を「世帯主」「主たる家計の維持者」に限るという規定をしている会社は多いと思います。
 
 あなたも指摘するように現日本の実態は、住民票上の「世帯主」はほとんど男性です。その結果、「世帯主」との条件を付けられれば、最初から女性を住宅手当の支給から排除されてしまい、典型的な「間接差別」となってしまうと考えます。残念ながら、現状では、一般に、就業規則や賃金規定で、住宅手当を「世帯主」「主たる家計の維持者」に限るという規定をしている会社は多いし、法的には、今のところ、これ自体は「女性であること」を理由とするものにはあたらないとされています。
 
 しかし、三陽物産事件判決(東京地裁平6.6.16)は「世帯主という基準によって賃金に差をつけることは違法だ」という画期的な判断を示しました。ただ、この判決は「住宅手当」をテーマに争われたもので
 なく、非世帯主は25歳から賃金の一部を据え置くという差別を争ったものです。しかし、本来であればこのような考え方が住宅手当にも通用すべきであると私たちも考えますが、残念ながら、今の所はそうはなっ
  ていません。
 
 
 2、しかし、労基法はあくまで「最低」の規定です。労働者と会社が交渉し合意すれば、幾らでも労働条件を改善することは可能です。 
 
 最終的には労使間の力関係で決定します。労働者側の団結が強ければ、間接差別をやめさせ、全員に住宅手当を支給させることは充分に可能です。
 職場で労働組合を立ち上げ、その組合を通じて会社と交渉し勝ち取っていくことを追及したらどうでしょうか。