一人組合員から集団的労使関係へ―一人組合員の活動方法


  当初から職場内多数派で、「労働相談から組織化へ」、そして職場定着とスムーズに行くのが一番よいが、なかなかそうはいかない。企業の執拗な組合つぶしに打ち勝てるかが第一の関門である。多数派を維持したまま組織を堅持する例もあるが、組織丸ごとつぶされることもある。事例で多いのは少数派になって職場内に組織を維持することだろう。

 それとは違って、最初から個人加入で会社にはまだ加入通知をしていない、いわゆる「非公然」の状態の組合員も多い。「日本全国どこからでもだれでも入れる個人加盟インターネット労働組合」であるジャパンユニオンの場合、ほとんどがそうだ。

 では現在「非公然」の状態にある一人組合員の問題をどう考えたらよいのかを検討したい。

1 一人組合員の闘い方
  まず東部労組の組合員でもジャパンユニオンの組合員でも、たとえば組合加入は「保険」だから現在の非公然の一人組合員のままでいいという組合員については、これはこれで大きな意義があるが、ひとまずおいておく。

 問題は職場で現状を何とかしたいと考えている組合員のことである。

 これには二つのケースがある。
  第一は、事後処理型とか労働債権型とかよばれているケースで、その特徴はすでに職場で問題が発生していて、その問題の解決をはかりたいというものである。そのほとんどが現在在職中であるが、問題が解決したらすぐ退職するつもり、ないしはすでに退職直後の場合である。 事例としては、不払い賃金、不払い残業代などの請求、パワハラなどに対する謝罪・損害賠償要求などである。その場合は、個人組合員として公然化、つまり会社に組合加入を通知し、同時に要求書を提示して、団体交渉を申し入れ、団体交渉で合意ができたら協定書を作成し、その後債権債務の履行を行えば、それで一件落着となる。団体交渉が決裂した場合は組合行動(争議行為)、裁判、労働委員会などで闘争を強化し、そのなかで妥結をかちとる。

 もともと退職が前提での個人での公然化なので、当人の獲得目標からみてほとんど不満なく終了する。というより個人では不可能であった水準を労働組合の力の発揮で獲得できることが多い。ただ「職場に労働組合を」の基準で見た場合は職場に組合員が残らないという意味ではすべて「敗戦処理」というほかない。

 第二のケースは、集団的労使関係(支部結成)志向型と呼べるものである。 労働問題の根本的解決は集団的労使関係によってしかできないわけで、一人組合員はその集団的労使関係を職場に打ち立てるために、非公然で職場のなかで仲間を増やす努力がもとめられる。

 一人組合員の場合、一人でもすぐに公然化して会社と交渉したいと希望する組合員はかなりいる。しかし私たちはそれにあまり賛成しない。なぜなら組合員が一人だけで公然化した場合、いじめやいやがらせなど会社の妨害で、孤立させられ、退職させられるケースが多く、他の労働者の組合加入につながりにくく、職場で集団的労使関係の確立がほとんどできないからである。非公然のまま職場で仲間を増やす努力をして、一定程度人数が確保されてから公然化することを勧めている。それでも一人で公然化を望む組合員については職場状況の分析など個別相談を強めて解決をはかるようにしている。

2 一人組合員は企業に打ち込んだ橋頭堡(きょうとうほ)

 もっとも一人組合員で、企業内に公然と存続できているケースもある。少数組合員でもほぼ同じである。

 私たちは、職場に存在し続ける一人組合員(又は少数組合員)は企業に打ち込んだ労働組合の橋頭堡と位置づける。一人ないし少数組合員であっても、その企業において「生きた労使関係」が存在する限り、つまり主体的にはその組合員が会社を辞めない限り、企業の中に地域労働組合が存在し、労働組合と企業との労使関係が成立しているということである。

 有名なところでは、動く大きな「かに」の看板で大阪道頓堀のシンボルとなっている「かに道楽」があるが、その東京の関連会社で、東部労組の女性組合員が裁判で負けているにもかかわらず、一人で雇用を確保している。

 なぜ雇用が確保されているのか。言うまでもなく、それぞれの企業での労使関係が個人対企業でなく、労働組合対企業になっているからにほかならない。もしその組合員を解雇した場合はその後の展開は労使とも十分に予想できるところである。企業にとれば、それぞれ本店前での派手派手な抗議行動から始まり、地域宣伝やマスコミでの宣伝、労働委員会、裁判と続く長い社会的包囲との闘いが待っている。「かに道楽」でそうなった場合は大阪まで行って、関西の協力関係にある労働組合、ユニオンの助けを借りながら、動く「かに」看板の前で抗議行動を展開するほかない。したがって、企業としては、社会的労働運動との闘いを決断した上で解雇するのか、雇用継続を容認するのかを天秤にかけざるをえない。そこから企業内で一人でも雇用を確保し続ける条件が生まれる。

 問題はそのあとだ。一人ないし少数組合員がいかにして多数派に転化するのか。成功例は多くない。企業は組合員とその他の従業員との間に行き来できない堅固なバリケードを築く。組合員は企業の組合つぶし攻撃に屈せず、「ハリネズミ」になって企業に対峙し、企業内に存続し続けるために多大のエネルギーを集中せざるをえない。多数派になることを考えるどころではない、企業に自分がいることだけで精一杯という時期もある。

 その際、組合つぶしに屈せず企業内に存続するんだという組合員のプライドが苦しい闘いを支える重要な要素となる。しかし同時にそのプライドが企業のバリケードと相まってその他の労働者との交流、団結の障害物になっている場合もある。

 一人ないし少数組合員が多数派になるのに、今までは当事者の人格に基づく活動にのみ依存する傾向がどうしても強かったが、「一人組合員(又は少数組合員)は企業に打ち込んだ労働組合の橋頭堡(前進拠点)」(注)と考えるのであれば、労働組合総体としての社会的労働運動の中に正当に位置づけ、地域労働組合と個別企業内一人組合員(又は少数組合員)の相互関係強化の活動に、多数派への道を追求することが課題となる。

(注)きょうとうほ 【 橋頭堡 】 (軍事用語)  橋を守るため、その前方に築くとりで。また、川・湖・海などの岸近くで、渡って来た部隊を守り、以後の攻撃の足場とする地点。 ?「―を築く」

3 集団的労使関係をめざす一人組合員の活動方法
  集団的労使関係をめざすなら、どのような状況であれ第一番目の方法は、職場で仕事仲間と仲良くなり、何でも話せるようになり、労働者同士の信頼関係を築くところから始めるほかない。会社への疑問や不満、グチを出しあい、どうしたら劣悪な労働条件や職場環境を改善できるかを話しあえれば、大きな進歩だ。労働組合結成に向けた仲間になるのにあと一歩だ。

 集団的労使関係をめざす第二の方法は、本部の担当者も入ってもらい、もう一度企業・職場の分析と職場での一人組合員自身の日常の動き方を点検する。またそのなかで、職場での組合結成の条件を分析しなおす必要がある。一人仕事で、職場に同僚がいないとか、話すチャンスすらないとか、いろいろ個別の事情については個別に検討して解決策を見出すしかない。

 以前ある組合員に朝、職場に行った時に同僚にあいさつするのかと聞いたところ、同僚があいさつしてこないので自分もしないと返答されて、あきれたことがある。これではダメで、相手があいさつを返してこなくても必ずあいさつする。またなぜあいさつをしてこないのかを検討する必要もある。いずれにせよ団結できる、または団結すべき相手についてはとことん考え、行動すべきである。そこからしか人間関係ははじまらない。

 職場では、まず人間として信頼されるために最低限次のことは実行すべきだろう。
  仲間に謙虚に。先頭で汗水垂らす。あいさつはしっかりする。遅刻はしない。仕事はしっかりする。陰日向がない(上司のいるときだけ仕事する、人により態度を変えるのは信用されない)など。

 第三の方法は、ジャパンユニオン組合員で職場か居住地が東京以外の場合、その地域にある一人でも加入できる労働組合ユニオンに入りなおす方がよいかもしれない。その場合はまず本部に相談するのがよい。

 第四は、「送り込み」を検討すること。あまりいまいる職場を固定的に考えない方がよい。ここに就職したから、一生ここにいないといけないということではない。第二の方法のところでも指摘したが、職場の分析を通して、いまいる職場に組合結成の可能性が少しでもあるのであれば、そこでがんばるのは当然のことである。その場合は他のジャパンユニオン組合員を自分の会社に誘うことも「送り込み」の一種である。また逆に、組合結成条件のあるジャパンユニオン組合員のいる職場に自分が移るのも「送り込み」である。地域労働組合は集団的労使関係確立に向けた出撃拠点・プールである。職場における集団的労使関係の確立ということを判断基準にして、柔軟に対処することを勧めたい。それらについては、組合員個々人の個別の進路相談に応じていきたい。

 第五は、以上のような考え方を自分なりにまとめていくためにも、ジャパンユニオン組合員研修講座に参加する意味は大きいと思われる。

4 一人組合員の活動方法 まとめ
  「一人組合員から集団的労使関係へ 一人組合員の活動方法」について、一般的な考え方、やり方を考えてきたが、実際の個々の組合員についてはどう対処すればよいのだろうか。

 まず各組合員自身が上記の考え方、やり方を参考にしながら、自らの置かれている状況をふまえて、自分の活動方向を考えることだと思われる。

 その上で、ジャパンユニオンでは「組合員との個別面談相談」を設置しているので、それを利用するのも一つの方法である。

 そこでは、相談を通じて、第一に、組合員それぞれで置かれている境遇と目的の違いがあるので、各人においてそれが何かを明確にすること、第二にそれに基づいて、それぞれの進路を明確にするということである。

 それらを希望される組合員はジャパンユニオン本部に連絡していただきたい。希望者と個別面談相談を設定するようになる。