【申入書】
衆議院 安全保障委員会 委員長、理事、委員 様
    
防衛庁「省」昇格法案に、熟慮に熟慮を重ねた慎重審議を求めます
  


11月24日〜25日に反安保実から次の申入書を、衆議院 安全保障委員会にメール送信、FAXしました。


衆議院 安全保障委員会       様

      新しい反安保行動をつくる実行委員会(第10期)

  防衛庁「省」昇格法案に、熟慮に熟慮を重ねた慎重審議を求めます

 今国会で、防衛庁「省」昇格法案が審議されています。同法案は、防衛庁設置法、自衛隊法、安全保障会議設置法の3法改定を軸に、他関連70法案にもわたる一括法案です。それは、防衛庁を防衛省に、防衛庁長官を防衛大臣に、内閣府令を防衛省令になどの文言の読み替えが大部分を占める「組織改正案」です。
 しかし今、政府は、何故に、この法案を大慌てで国会に上程し、成立させようとしているのでしょうか。自衛隊を実質的な軍隊として強化し、防衛省を改憲準備機関の一角を占めるものにしたいのではないでしょうか。熟慮を重ねた検討が行われるべきだと私達は考えます。以下、是非ともお考え戴きたい課題・論点を列記します。

@自衛隊は「専守防衛」の部隊とされてきましたが、新たに海外派兵を「本務」としています。 
自衛隊法第3条2項に、「周辺事態」及び「国際連合を中心とした国際平和のための取り組みへの寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動」と規定し、一気に海外派兵への道をエスカレートさせようとしています。
 「国際連合を中心とした国際平和」と言えば、聞こえはいいかもしれませんが、曖昧な包括的な表現で、テロ対策特別措置法とイラク人道復興支援等特別措置法に基づく海外派兵を本務にしてしまうのです。
 例えばイラク人道復興支援等特別措置法の基になったイラク戦争は、米国がフセイン政権を「大量破壊兵器」を隠し持っている「ならず者国家」だと決めつけ、武力で威嚇し、先制攻撃をしかけて起こした戦争でした。しかし、大量破壊兵器は存在しなかったように、完全なつくり話であることを、ブッシュ政権自らが認めざるをえなくなりました。またその後の統治もままならず、内戦状態が拡大し、今や収拾のつけようもない状態になっています。
この法案は、そうしたことまで、より積極的に協力するものになっているのです。

A防衛大臣への権限の集中は、何をもたらすのでしょうか?
 政府は、内閣府の外局である防衛庁を防衛省にすることによって、内閣府の主務大臣の内閣総理大臣が権限をもっている諸事項を防衛大臣に移管するとしています。ただ「内閣の長」の権限は、そのまま内閣総理大臣にあると説明しています。
 しかしこれも字義通りに解釈することはできません。内閣府の主務大臣としての総理大臣がもっている権限が防衛大臣に移管され、従来から防衛庁長官がもつ権限と相俟って防衛大臣に集中されるのです。それによって、平素から有事まで、米軍との共同作戦をより緊密化させるものです。特に防衛出動下令前の(米軍への)物品の提供等の規定は、周辺事態法や武力攻撃事態法ですら、周辺事態や武力攻撃事態等の認定は、閣議決定と国会承認を必要としていますが、それすら無視することになりかねない法案です。

B安全保障会議設置法の諮問事項に周辺事態への対処及び国際平和協力活動の重要事項を加えています。
 これもAで指摘したことと重なりますが、戦時体制に備える重要な改定です。現在の北朝鮮に対する臨検等を含む制裁論議がしきりと行われていることにも対応しています。特に安全保障会議の議員(委員)に防衛大臣が入り、事態対処専門委員会に自衛隊制服組が含まれることをかんがみれば、軍事組織の発言力が強化され、戦争の発動を準備していくことでしょう。

C有事体制の整備の果ての改定であり、米軍再編の渦中での改定です。
 今回の法案は、92年のPKO協力法、97年の新ガイドライン、99年の周辺事態法、03年の武力攻撃事態法等の海外派兵―有事体制の整備の上に立案されており、これらを組織的に集大成する法案です。
こうした一連の動向の中に、省昇格法案を置き直して見ると様々な問題点が浮かび上がって来ます。例えば、先の自衛隊法改定により、陸海空の自衛隊を統合軍とし、その指揮官は統合幕僚長になりました。3軍統合軍とは米軍との共同作戦を念頭に置いたものであり、「対テロ」戦争能力を高めるために不可欠とされるものです。既に自衛隊は目の前の敵(人)を殺す訓練を始めています。またイラクでは、そうした緊張関係におかれもしたようです。
 今回の改定案の中にも「対テロ」 戦争に身構えた「領域警備」の強化が目論まれています。いくら「武力行使に当たらない範囲内で」(自衛隊法第3条2項)と規定したとしても、他方で武力行使を導き出す条件をつくりだそうとしているのです。例えば、これまでにも治安出動下令前に行う情報収集(同法79条の2)や自衛隊の施設等の警護出動(同法第81条の2)が新設されましたが、今回は、同法第80条の海上保安庁の統制を内閣総理大臣の権限から防衛大臣の権限に移行させ、海上警備行動をより強力に行えるようにするとしています。

D防衛庁の制約を外し、平和憲法の最終的破壊に繋がります。
 こうして政府は、「独立の省として、主権国家として、国防に関する我が国の意思を内外に明確に表明」しようとしています。これは「2+2」での発言権のアップを意図するものであり、また国連安保理常任理事国入りを計るものでしょうが、米国の意思に寄り添う形での「同盟の強化」にしかならないでしょう。そして米国の意向に沿って、政府は、「ミサイル防衛」の一連の開発・配備を進め、敵基地を攻撃する、上空を飛ぶミサイルを迎撃すると集団的自衛権の解釈変えを行う議論に踏み出しています。これでは、米国の意につき従った実質的な改憲と言うほかありません。
 防衛庁・自衛隊は、そもそも現行の平和憲法と矛盾するものですが、それでも憲法第9条により、防衛庁・自衛隊は武力行使を規制されています。それを外すことは重大な、禍根を残す結果を招くことになります。それでも政府は、明文改憲以前から、あの手この手を駆使して、改憲を当たり前であるかのように演出したいのです。

私達は、武力で平和はつくれないと考えます。それはアジア・太平洋戦争から私達が学び取ることができる貴重な教訓であり、イラクで起こっている現実を謙虚に直視すれば、そう言わざるをえないでしょう。「反テロ」戦争―報復の論理が平和をもたらすことはありません。 
 人々の命よりも国家が重い社会は、人々の人生を踏みにじり、他国の人々を殺す加害者にさせるばかりか、殺戮を美化する恐ろしく誤った社会に組み替えてしまうでしょう。
 貴方の見識と責任が問われているのです。そこで以下の要請を行います。

(a)防衛庁「省」昇格法案を巡る問題点を洗いだし、とことん追及してください。
(b)政府による拙速な採決には、断固とした反対の行動を示してください。
 

2006年11月24日
新しい反安保行動をつくる実行委員会(第10期)
◆連絡先:FAX 03(3234)4118
東京都千代田区三崎町3−1−18 近江ビル4階 市民のひろば気付
メール hananpojitsu@jca.arc.org

戻り