反安保実 NEWS 第12号

視点・論点 B
防衛庁から防衛省への改組の意味を、考える
        山本英夫     

  


 去る一月九日、防衛庁が防衛省に改組された。それまで鳴りを潜めていたマスコミは、一挙に防衛省の意義を報じた。この問題はマスコミが論じているだけの話ではない。私なりに運動的視点を提示する。
 先ず、「省」となり、「国際平和」を冠して、海外派兵を自衛隊の本務にした意味は頗る大きい。安倍首相は、九日に開催された記念式典で、防衛省は「新たな国づくりの基礎となる」ものだと豪語し、「集団的自衛権」の見直しにも言及した。この発言に込めた彼の決意は、「武力を国是とする国」への一大転換を果たすことだろう。この調子だから、安倍政権は、ホルムズ海峡で米潜水艦が九日午前(日本時間)に起こした日本タンカーヘの衝突事件について、責任追及や事実関係の究明すら米国ブッシュ政権に申し入れていない。この衝突が大規模な事故にならなかったのは、この船が巨大なタンカーであり、船底が二重構造のために壊滅的な破壊を免れただけなのだ。
 他方、ブッシュ大統領がイラク政策の見直し(兵隊の増強等)に懸けるとしたことにも安倍政権は、依然として支持しているのだ。これは単なる言葉の問題に留まらない。政府はイラク等に航空自衛隊を派兵しており、増派された米兵が行う掃討作戦に、自衛隊(員)はより深くコミットさせられるのだ。以前に小泉は「自衛隊が居るところが『非戦闘地域』」だと大見栄を切ったが、防衛省を配下に治めた安倍首相は、「非戦闘地域」か否かにさえとんと無頓着になっている。
 海外派兵の本務化は、こうして自衛隊を泥沼に陥れていきかねない。また日本の民衆をこうした戦争に支持・協力することが「国民の美徳」かのように追い込んでいくだろう。
 一部のマスコミは、早くも翌一〇日に、参事官制度の見直し案を報じた。シビリアンコントロールの為の機関として防衛庁長官の下に事務官(背広組)を置いて来たが、これを制服組(自衛官)に取り替えてしまおうというのだ。
 防衛省になったことに、喜びを隠しきれない背広組だが、喜びもつかの間、彼らは実権を喪失しかねないのに呑気なものだ。マスコミは「防衛省は政策官庁になれるのか」と問うているが、朝鮮半島戦争計画の策定が日米間で具体的に進行中であり、こうなれば、背広組の出る幕は殆どなくなるだろう。現に陸上自衛隊のイラク派兵でも物資等の輸送計画などを初めとして制服組が決めたのだ。つまり防衛省が政策官庁になる意味とは、単なる組織改革や人材育成ではなく、制服組(特にイラクや米国の中央軍司令部等で海外実績を積んできた幹部)を政策形成マンとして育成することにあり、実戦に基礎づけられた外交に一歩踏み出したいのだ。
 政策官庁としての防衛省は、対米パートナー部局であった外務省(北米局)との確執が強まることは、必定だ。しかし、防衛省の強みは、軍事プロフェッショナル集団にあることだ。そして米軍のイラク作戦と自衛隊の兵站支援等の米日共同作戦から「米軍再編」を推進する政策官庁となろうとしているのだ。
 ちなみに外務省発行の「外交青書」(〇六年版)第3章の「分野別に見た外交」の「第一節 国際社会の平和と安定に向けた取組」は@「日米安保体制」、A「テロ対策」、B「地域安全保障」(以下略)であり、@には「米軍再編」、「ミサイル防衛」(図面入り)が示されている。
 次の国会では、米軍再編支援法が上程されようとしている。また、次回は先送りされる見込みだが、派兵恒久化法が検討され、集団的自衛権の見直しや自衛隊法(武器使用基準の緩和)の改悪も検討されている。「日米同盟」はこうして軍事を基軸として再編されようとしており、その一歩として、二〜三月にチェイニー副大統領の来日、四〜五月に安倍訪米が予定されている。
 私達は、「来日・訪米」反対!と防衛省が加速するだろう米軍再編支援法阻止に早急に全力を傾注しなければなるまい。 
 (やまもと ひでお/派兵チェック)


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