反安保実 NEWS 第12号

視点・論点 A
ミサイル防衛が加速させる軍事化の“なだれ”から身を守るには?
――二〇〇七年MD阻止運動の展望の選択
        杉原浩司     

  


 防衛「省」昇格への“前祝い”でもなかろうに、年末年始にかけて、ミサイル防衛(MD)に関連する重大な動きが相次いで大きく報じられた。
 昨年六月に青森県つがる市の空自車力分屯基地に前倒し配備された、最新鋭の移動式早期警戒レーダーである「Xバンドレーダー」の西日本への追加配備が打診されていることが判った。日本海(東海)に面した福岡県の芦屋基地(自衛隊PAC3も配備予定)などが有力視されている。
 初代防衛大臣に就任した久間章生が旗振り役となってきた「軍事秘密一般保全協定」(GSOMIA=ジーソミア)の日米間での締結方針も固まった。「集団的自衛権の行使に踏み切り、わが国が米国との共同軍事作戦を行う決断が前提」(松村昌廣『軍事情報戦略と日米同盟』芦書房)とされるこの協定は、「知る権利」を一層制約するとともに、イージス艦など米軍機密部品の修理を三菱電機など日本の軍需産業に新たに開放するものでもある。今年前半にも締結し、通常国会中に承認を得る構えという。
 MDの日米共同開発により崩壊が始まった武器輸出禁止三原則。自民党は、米国以外の国も含めた兵器の多国間共同開発への参加解禁に向けた検討を本格的に開始した。三菱重工などが待望していたものだ。
 そして、上昇段階のミサイルを航空機先端に搭載したレーザーで迎撃する「航空機搭載レーザー」(ABL)への技術・財政支援を、米国が日本に要請している事も表面化した。米側は、五年後の実用化を狙い、システム小型化のために三菱重工など企業名を挙げて技術協力を求めている。ボーイングが主導して開発中だが、昨年十月に行われた発射機の完成式典では、オベリング米MD局長が「我々は米国民に“光の剣”を与える大きな段階に入った」と映画「スターウォーズ」に例えて宣言する有り様だ。相手国周辺に発射機を展開させ発射直後に迎撃するこのシステムは、限りなく先制攻撃に近い威圧的な兵器だ。日本政府・企業の加担は許されない。
 通常国会では二月にも「宇宙基本法案」が提出される。六九年の「宇宙の平和利用」決議を葬り去るこの法案は、河村建夫、河井克行らが主導し、青木節子(慶応大学)らがブレーンとなり、三菱電機など軍需産業の利害を背景としたもの。スパイ衛星の高度化や早期警戒衛星の開発、宇宙での日米軍事協力などが狙われており、防衛「省」が宇宙政策の管轄に新規参入することも予想される。「宇宙の軍事化に道を開く」(石附澄夫、「私の視点」一月十二日付、朝日)悪法成立を阻止する取り組みが急務だ。
 昨年十月に強行された沖縄・嘉手納基地への米軍PAC3配備に続き、三月には航空自衛隊入間基地(埼玉県)にPAC3が遂に初配備されようとしている。〇六年度補正予算にロッキードマーチンからのミサイル購入費など七六億円が計上され、予算委員会で二月初頭にも審議される。あまり時間はないが、昨年末に入間デモを行った地元の取り組みとも連携しつつ、予算委員会への介入も試みたい。また、二月下旬から三月初めにかけては、取り組んできたPAC3配備反対と三菱重工への軍需生産反対署名の提出行動(デモ)も予定している。それらとタイアップさせて、二月二四日にはミサイル防衛の問題点を抉る集会も準備中である(詳細未定)。
 〇七年は本当に踏んばりどころだ。課題の大きさに比してこちらの力量は未だ心もとないが、相手の姿ははっきり見えてきた。弱みに付け込んで一歩ずつにじり寄るような、したたかな取り組みを編み出したいと年頭に想う。
(すぎはら こうじ/核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)


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