反安保実 NEWS 第12号

視点・論点 @
イラク情勢とアメリカの選択
       池田五律     

  


 年末のドサクサの一二月三〇日、フセイン元イラク大統領の死刑が執行された。これでフセイン政権とアメリカとの関係も藪の中になってしまった。アメリカ政府は死刑延期を求めたというが、口封じを望んでいたに違いない。そもそもイラク政府による特別法廷での裁判といっても、フセインは米軍施設に収容され続けてきた。アメリカによる裁きであったことは否めず、アメリカへの反発は激化するだろう。
 一二月末、二〇〇三年三月の開戦からの米軍の死者が三〇〇〇人を超えた。「産経新聞」一月三日は、「損害を広げる路肩爆弾(IED)という『見えない敵』や、これを操る武装組織の封じ込めに妙案はなかなか見いだせない」と報じている。また、死刑に際しシーア派の執行人からフセインが罵倒されている映像が公になったこともあり、宗派対立も激化しているといわれている。
 こうした状況の中で、イラク政府はすべての武装勢力を対象とした掃討作戦を実施すると表明した。その背景には、最大二万人の米軍バグダッド増派というブッシュ政権の方針がある。バグダッドだけでも安定化させて格好をつけたいということだ。公共事業などに最大計一〇億ドルを投入してイラク人の雇用を創り出し民生安定を図る、とも報じられている。だが、その利権をめぐる対立が新たな火種になるかもしれない。
 これらの方針は、アメリカ国内での早期撤退論の高まりを受けたものである。治安を回復しなければ撤退したくても撤退できないということなのだ。ブッシュに対して早期撤退を求める者たちも、「対テロ戦争」を否定しているわけではない。中間選挙の結果は、「共和党穏健派の敗北、民主党タカ派の勝利」ともいわれている。ベーカーらが出した「イラク報告書」にしても、イラクのイラク化、中東の中東化、有志同盟諸国の役割拡大、後始末への国連の活用といったものだ。これは、米軍再編と海外派兵を拡大する自衛隊再編を加速させる方向に変わりはないということを意味する。
 しかも「対テロ戦争」はグローバルに展開されている。ソマリアでは、アメリカが後押ししている暫定政府が「イスラム法廷連合」から首都モガジシオを奪取した。イラン制裁決議を受け、ペルシャ湾に米軍空母が増派(計三個の空母打撃群に)された。北朝鮮に対しても、韓国からの邦人救出も含む日米共同作戦計画策定など圧力強化の手を緩めてはいない。
 そうした中で、第一次復興業務支援隊長だった佐藤正久一等陸佐が、参院選比例代表の自民党公認候補として立候補するという話も出ている。防衛省への昇格も果たし、自衛隊制服組が調子づいている証だ。陸上自衛隊イラク派兵部隊に情報収集・分析機能を持つ専門班を設け、治安・警備情報収集の現地「協力者」を雇っていたことも明らかになった。
 派兵を通して、自衛隊が確実に変貌していることを忘れてはならない。
(いけだ いつのり/派兵チェック編集委員会)


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