反安保実 NEWS 第10号

視点・論点 C
前のめるMD配備をどう止めるのか
――軍需産業への公的援助を許さない
        杉原浩司

  


 七月五日に強行された朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)によるミサイル発射実験は、日米のミサイル防衛(MD)推進勢力に格好の口実を与えた。東アジアを最大のMD市場と想定していた米巨大軍需産業にとっては、笑いが止まらない状態だろう。
 日本政府はさっそく迎撃ミサイル配備の前倒しと未配備期間における米国MDによる「補完」強化の検討に入った。前者については、今年度末に最新鋭の地対空誘導弾であるパトリオットPAC3の入間基地(埼玉県)への初配備が開始される。当面前倒しが検討されているのは、二〇〇七年度中とされてた第1高射群の他の三基地(霞ヶ浦、習志野、武山[横須賀])へのPAC3配備を二〇〇七年内に早めるという案である。
 それ以降の配備前倒しについては驚くべきプランが浮上している。当初計画では二〇〇八年度中に浜松基地、二〇〇九年度中に春日基地(福岡県)を本部とする高射群への配備が計画されていた。八月八日の「日経」によれば、防衛庁はその計画を少なくとも一年以上前倒しすることを検討しているという。
 二〇〇八年度分からのPAC3は三菱重工がロッキードマーチンからライセンス生産することになっている。防衛庁は配備前倒しには設備の増強や人員配置で企業に協力を求める必要があるとして、迎撃ミサイルを生産する企業向けの助成制度を新設する方向で検討に入ったというのだ。
 契約額の五%程度を国が助成する案を軸に調整が進められるとのことで、三菱重工や関連数十社の他、今後の契約企業が対象。補助金として給付するか契約額を上積みするかの形となる模様だ。来年度の必要額は五〇億円程度が見込まれ、一五〇〇億円規模となるMD関連の概算要求に盛り込む方針という。
 国家による軍需産業に対する公然たる助成である。一方で医療や福祉を削り、弱い者いじめをしながらの。私たちはこうした非道を絶対に許さない。
 後者の米軍のMD態勢については、米国防総省が迎撃ミサイル(SM3)を備えた太平洋配備のイージス艦を年内に現行の三隻(シャイロー、レイク・エリー、ポートロイヤル)から六隻に倍増する方針を決めたという。また二〇〇九年までに太平洋配備の一六隻のイージス艦全てがSM3搭載を完了する予定という。
 この八月下旬には横須賀にSM3搭載イージス巡洋艦「シャイロー」が配備される。
 日本政府は海上自衛隊イージス艦へのSM3搭載予定の二〇〇七年末までに、シャイロー一隻では心もとないとして、SM3搭載型米イージス艦をもう一隻日本に配備(ないしは緊急時の配備の約束)するよう米国側に打診している模様だ。
 既に沖縄・嘉手納基地への米軍PAC3の八月配備開始と年内の試験運用が発表されている。周辺自治体と沖縄はPAC3配備反対の意思を表明している。
 「本土」のMD関連(ミサイル、レーダー)配備予定地での自治体への働きかけを強めなければならない。前倒しから前のめりへと進むMDを格好の口実とする形で集団的自衛権行使を容認する流れもつくられつつある。さっそく安倍晋三は政権構想案の中に、集団的自衛権を解釈変更で容認した上で、全面改憲へと進むという方向を入れ込もうとしている。二〇〇六年後半は私たちにとって、本当に正念場となりそうである。ぜひ参加・支援・協力を!
(すぎはら こうじ/核とミサイル防衛にNO!キャンペーン2006)

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