反安保実 NEWS 第6号
視点・論点 A
初の「国民保護実動訓練」は「弱者」切り捨てで始まった
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山本英夫
 


 本紙前号に私は「『国民保護』体制下の防災訓練」と題して、東京都町田市で行われた防災訓練を批判した。その中で私は、防災訓練に高齢者や「障害者」の安全に配慮すると称して、介護ボランティア団体までが動員されていることを取り上げ、これは「国民保護」にも適用される構造だと書いた。
ところが一一月二七日に、福井県美浜原発周辺で行われた初めての「国民保護」実動訓練では、子ども、高齢者(六〇歳以上)、「障害者」は、不参加を強制されたようだ。
戦争とは「弱者」を切り捨てるものだと、私達は批判してきたが、初めての訓練でこれほど露骨だとは。「国民保護訓練」は最初から国民の命を守ろうとすらしていないのだ。
 これは既に常識のはずだが、子どもは被曝の影響をより大きく受けるものだ。だから、より迅速に適切な対処をしなければならないのだ。
 しかし何の緊張感もないような想定下で行われた訓練で、政府や福井県、美浜町等は、船に乗せるのが危ないからなどと称して、彼ら彼女らを排除したのだ。
ここでやはり沖縄戦の話が浮かんできてしまう。壕下に隠れていた人達が子どもが泣いていると、米軍に所在が知れてしまうと日本兵に子どもを殺すように迫られた。実際に多数の子どもたちがこうして親達に殺された。
 こんなに極端な話ではないが、子どもやお年寄りなどが足手まといだとしたら、そんな「避難計画」や「避難訓練」は、最初から破綻しているのだ。丈夫で元気な大人だけが無事に避難しましたというオメデタイ話は、あってはならないはずだ。
 ただしこの報道は、全国紙には全く触れられていなかった。抗議や監視行動に参加した「反原発新聞」の西尾漠氏から、「そういえば、若い人が多かったよ」と聴き、現地の福井新聞を確かめたら、前記の通りだったのだ。なお福井新聞は、「国民保護」訓練に協力してきた地方紙だ。それでもこのことに触れざるをえなかったのは、それだけ現地に批判の声が起こったからだろう。
 他方、全国紙は、どこに目をつけているのだろうか。猛省を促したい。軍事化を検証する視点は、憲法9条だけではない。改憲派のマスコミだから、「全てイエス」というのでは、「事実」を検証する(垂れ流すばかりではない)マスコミたる資格を既に失っていると言わざるをえない。
 詳しくは「派兵チェック」一二月号を見ていただきたいが、この訓練に緊張感はなかったらしい。船に乗って避難した人達の中に、救命胴着がきつくて辛かったと言う声があったそうだ(放射線の防護服を着ていた訳じゃない)。たまたま太った人だったのかもしれないが、周りの人と交換すれば、いい話で、乗船時間だって、三〇分程度だから我慢した、その程度の話だ……。
 しかし防災訓練との違いは、当然にもまだあった。武装した自衛隊員や海上保安官が避難民の警護をしたことだ。陸上自衛隊は金沢にある第一四普通科連隊から軽装甲機動車(イラクでも使っている)でやってきた。武装した自衛隊が前面に立ち、「頼もしそう」な演出をしようとしたのだろう。「原発は安全」だが、「テロ」は怖いというイデオロギーを垂れ流しながら。
 私達は事実に即してものごと検証することを不可欠とする時代に生きているのだ。
 (やまもと・ひでお/東京都国民ホゴ条例を問う!連絡会)

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