反安保実 NEWS 第2号

 視点・論点 A
 動き出した「国民保護」の具体化に抗して
 ――東京での闘い
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山本英夫 
  


 自衛隊のイラク派兵も第5次隊を迎えてしまっているが、その裏で密やかに軍事態勢が敷かれようとしている。〇三年六月に成立した武力攻撃事態法等の戦争三法、同年七月にイラク特別措置法と続き、〇四年六月武力攻撃事態法を受けた形で国民保護法等の戦争七法が成立した。
 政府は、昨秋、同法に基づき指定公共機関を閣議決定するとともに同法施行。さらに一二月に「国民保護指針(骨子)」(武力攻撃事態四類型、緊急対処事態の四類型)をまとめた。
 こうした国の動きにそって、今、都道府県は国民保護協議会条例と国民保護対策本部及び緊急事態対策本部条例等を議会に上程しているのだ(鳥取県や神奈川県は既に施行されている)。
 国民保護協議会とは、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」第三七条に「都道府県知事の諮問に応じて当該都道府県の区域に係わる国民の保護のための措置に関する重要事項を審議」し、「前号の重要事項に関し知事に意見を述べる」機関と規定されている(市町村も同様)。
 都道府県国民保護対策本部とは、前記国民保護法第二七条に「武力攻撃事態等」(予測事態を含む)と政府が認定した際に「当該都道府県及び当該都道府県の区域内の市町村並びに指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する当該都道府県の区域に係わる国民保護のための措置の総合的な推進に関する事務を司る」(市町村にも)と規定されているように、有事に稼働するための機関だ。
 次に東京都の問題を述べる。東京都は総務局総合防災部に国民保護担当の副参事(課長級)を置き、同防災対策課に調整担当係長(国民保護担当)を配置している。
 二月一日、都内各地で反戦運動などを闘うグループ、個人が参加して、東京都国民ホゴ条例を問う連絡会(準備会)を結成することを確認した(三月一一日結成集会)。そして都に対して質問と申し入れ状を二月一六日、都に提出(この論議には憲法学者の石埼学さんが積極的に参画)。これは国民保護法の問題点を東京都の現実を踏まえ様々に切り込んだ質問状だ(全文は派兵CHECKのHP:http://www.hahei-check.net/docs/modules/news/ に)。
 山口副参事らにこれに答えるよう要請。次回の話し合いの確約をとり、二月二二日に再度訪問。また一六日午後、都の条例案を都議の福士敬子さんを通して入手した。これらの条例案は抽象的な文言が並んでいるだけだ。これについても質問状を作成し、二二日に提出。なお都の条例案は総務省消防庁が例示した案文をほぼ棒引きしたもの。
 また二四日、都議会に陳情書も提出した(全文は派兵CHECKのHPに)。先の質問状に対する山口副参事の回答は、「国民保護計画」を審議する中で具体化されるので、現時点では不透明とするものが多かった。「地方自治の原則が武力攻撃事態等においても尊重されるのは当然」としながら、続けて「武力攻撃事態は、国家の緊急事態の中でも最も重大なものであり、これに国全体で的確に対処するため地方公共団体に対して一定の関与が必要とされるのもまた当然」とし、一二〇〇万都民の安全を配慮するよりも軍事化を重視しているようだ。
 しかし私達は以下の視点は踏まえつつ、取り組みを重ねたい。第一に「武力攻撃事態」といっても、まだ戒厳令などの国家緊急権は未成立。武力攻撃事態法でさえただの個別法なのだ。政府が武力攻撃事態等を認定したところで、地方公共団体は平素の業務、住民の福祉、安全への配慮を全面停止できる訳がない。第二に都民の生活に即して考えれば、武力に訴えて解決しようとすれば極めて危険だ。第三に条例を阻止できなくても、国民保護計画の審議、策定過程での闘いを展望したい。戦争国家体制を許してはならない。
(やまもと ひでお/東京都国民ホゴ条例を問う連絡会)

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