盗聴法成立強行に抗議する--------民主主義と基本的人権の蹂躙を許さない

参議院本会議は全国から、そして社会のさまざまなセクターから批判が集中しているいわゆる盗聴法案を含む組織的犯罪対策法3法案(以下、盗聴法)の成立を強行しました。しかし、私たちは異常な議事運営の連続で成立しようとしているこの盗聴法を日本の法律として到底受け入れることはできません。

なぜなら、まずこの法案が憲法で保障された通信の自由という基本的人権を侵すからです。また、この法案の矛盾点あるいはこの法案がもたらすであろうさまざまな問題点を指摘しても、政府側からはまともな回答が得られていません。さらに将来、この法律がどんな人権侵害を生み出すかも現時点ではまったくはかりしることができません。この法案が持つ問題点がこの法案の影響を受ける市民には十分知られていない時点で、国会内外の議論を打ち切り、成立が強行されたからです。

今回の盗聴法が持つ特徴は、高度に技術的なことを扱いながら、その技術について法の条文でまったく規定されていないところです。国会の中で技術者によってこの盗聴法の技術的な問題点の指摘がなされました。そして技術者からは異口同音にこの法案の成立に危惧が表明されたのです。

与党の議員も、とうていこの盗聴法がもたらす弊害を理解しているとは考えられません。そんなに議論を急ぐ理由がどこにあったのでしょうか?

国際的に見ても、この法案の現時点での成立は拙速であると法律家からも通信業界から指摘されております。国際的要請があるからこの法律を作る、というのが政府の当初の大義名分でした。しかし、それは実際の国際外交の中では存在しておりません。

また、盗聴法自身がその大義名分である組織的犯罪に役に立たないことは国会の法務委員会の質疑の中でも十分明白になっております。

今後、テクノロジーの発達とともに、ますます大量な情報が通信ネットワークの中を流れる時代となっていきます。通信ネットワークをさらに発達させ、そこに自由な情報の流通を保障することが、今後の社会の発達にとって不可欠になっています。この時代的な要請を受けて、今やインターネットの国際的潮流はいかに情報を保護するか、プライバシーを守るかということに集中しています。また、政府の情報を公開させ、一方で市民のプライバシーを守るのは世界の政治の潮流と言っていいでしょう。

しかし、日本ではまさにこうした流れに逆らう法律を制定しようとしているのです。

通信ネットワークの中のプライバシーを守ることは今後の社会の健全な発達にとって欠かせない根本政策であるべきです。それを放棄し、警察にほぼ無制限の盗聴権限を与える盗聴法を成立させることによって、日本におけるネットワークの発達のチャンスを日本政府はつぶしてしまっているのです。

盗聴法に対して、市民運動ばかりか企業、文化人を含むさまざまな社会セクターから反対が出ていること、とりわけ、今後のネットワーク社会を迎える上で、中心的役割を果たすに違いないインターネット業界から強い批判が出ていることを政府は無視しています。業界団体にはなんら相談なく、また日本に急激に増えているインターネットユーザの声を無視して、小渕内閣は自民・自由・公明3党の数の論理のみを頼りに、この法案の成立を強行しようとしています。これはまさしくファッショとしかいいようのない強権政治に他なりません。

一方、私たちはこの盗聴法を成立させた援軍として働いたマスコミを糾弾せざるをえません。本来、盗聴法が持つ問題を指摘し、広く知らせ、広範な関心を呼び起こすべき日本のマスメディアはその本来の役割を十分果たしたと言うにはほど遠いといわざるをえません。この盗聴法は、政府から自立したジャーナリズムの存在を危うくする、その意味でマスコミにとって深刻な問題であるにも関わらず、そうした姿勢を自覚的に明らかにした新聞社、テレビ局がどれだけあったでしょう? これが結果的に政府の盗聴法成立に対する多大な支援となりました。マスコミで働く人々に真剣な反省をよびかける次第です。

私たちは、警察による巨大盗聴システムを成立させないために、インターネットおよび通信関係業界、技術者に通信の秘密を守ることを第一とし、技術協力などを一切行わない良心的不服従をよびかけます。

私たちは、この盗聴法と闘う中で、これまでにない市民運動の枠組みを越えた広範な人と人のネットワークを作り上げることができました。今後はこのネットワークを生かしながら、この盗聴法によって引き起こされるであろう諸問題を研究・調査し、そうした情報を今後とも市民に公開し、この盗聴法の実行を許さない活動を続けていきます。また、市民一人一人が自分のプライバシーを守れるように自衛していくノウハウを共有し、警察国家による管理を許さないネットワーク作りの活動を行っていきます。

政党を越え、この法律の問題点を共有しようとする議員とも協力し、この法律に反対する市民、企業、技術者とも連携して、この法律の施行を許さず、盗聴法の廃絶に向けた闘いを継続することをここで宣言いたします。

1999年8月12日

JCA-NET セキュリティ委員会 <desk@jca.apc.org>
ネットワーク反監視プロジェクト (NaST) <priv-ec@jca.apc.org>
盗聴法成立阻止ネットワーカー連絡会 <owner-anti-wiretap@jca.apc.org>

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