2000年8月

全労協所属単産労組執行部各位殿

盗聴法廃止署名運動実行委員会
海渡雄一
(連絡先 日本消費者連盟)

盗聴法の廃止を求める署名への取り組みを求める要請書

 私たちは盗聴法の制定に反対し、法成立後はその廃止のための活動に取り組んできた市民団体・労働団体・ネットワーカーなどで作る実行委員会です。私たちの集めた盗聴法廃止を求める署名はすでに18万人以上に達しています。全国津々浦々より、たった一人から小さな草の根グループ、数万人を抱える労働組合まで、様々な個人・団体から署名が寄せられ、本当にこの悪法を廃止したいという思いがひしひしと伝わってきます。

 この署名の集約はすでに四回を数え、衆参両院の野党議員約200名に手渡されて、国会へ提出されています。そんな多くの市民・労働者の思いが国会にも届き、先の臨時国会では、民主・共産・社民・無所属の超党派で衆参両院で廃止法案が提出されるという画期的な事態を招いています(参議院では二度目の提出)。18万人という数に加え、市民・労働者の強い願いが国会を動かしたといえるでしょう。

 にもかかわらず、政府はこの7月傍受規則を公表し、8月15日には盗聴法を施行しました。

 昨年の盗聴法制定後明確となった神奈川県警、新潟県警をはじめとする全国の警察組織の不祥事の連続に示される腐敗は、実は法制定以前のものがかなり含まれています。とりわけ、捜査情報を利用して警察官が女子大生を脅迫した事件は盗聴法制定の遙か以前に警察部内では発覚していた事件です。盗聴法は腐敗の数々を国会に対して隠し通して、だまし取られた法律といえましょう。

 傍受規則をみても、「令状は厳格に遵守する」というような精神規定はあっても、遵守されなかったときの罰則はなにもありません。立会人は犯罪の内容も通信内容もわからないで立っているだけで、なんのチェックが可能なのでしょうか。大量のデジタルデータを記録できるDAT(デジタル・オーディオ・テープ)の利用なども、デジタル盗聴データベースの構築への危惧を具体的なものとしています。

 米国の国家安全保障局(NSA)を中心に、イギリス、オーストラリアなど西側の情報機関が作っ ている大規模な盗聴ネットワークエシュロンをご存じですか。電話、ファックス、電子メールなどありとあらゆる通信を、地上も通信衛星含めて盗聴し、監視するシステムです。98年の欧州議会で「エシュロン」による市民へのプライバシー侵害が明るみにでて大きな批判を浴び、現在米国でも連邦議会が問題にし、プライバシー団体が裁判に訴えています。日本も、この「エシュロン」と深い関わりがあります。三沢基地に「エシュロン」のための傍受施設があることがわかっています。私たちは盗聴法も「エシュロン」と何らかの関わりがあるのではないかとの疑問を持っています。

 仮に組織的犯罪に対する対策強化の観点に立つとしても、市民のプライバシーを侵害する危険性の高い法律を認める前提には、警察組織の透明性と高い倫理性が確認されることが最低限の前提のはずです。私たちは、警察組織がそのような信頼性を勝ち取っているとはとうてい評価できません。雪印乳業も食中毒の責任をとって全工場を停止しました。警察が一連の不祥事を真に反省しているなら、みずから盗聴法は返上して、組織犯罪対策は警察改革の実があがったかを世に問うてから再度提案すべきではないでしょう。

 盗聴法は、すべての市民・労働者をもの言わぬ国民へと変えさせるための「内なるガイドライン」です。

ぜひとも「盗聴法の廃止を求める国会誓願署名」への取り組みをお願いいたします。そして、ともに人権の守られる平和な社会をめざして参りましょう。