2002年5月30日

声明
盗聴法初適用は問題山積み
5月23日警視庁発表では、何ら事実が明らかになっていない

盗聴法の廃止を求める署名実行委員会

■容疑者の防御権、弁護士の弁護権、国民の知る権利への侵害
 今回の初適用で盗聴法の危険性、問題点が改めて明らかになりました。
 盗聴法の初適用は、3月下旬の報道で初めて明らかになりましたが、警察はその際盗聴捜査を理由に逮捕者名、事件の概要を明らかにしませんでした。今まで通常捜査の警察発表では逮捕者の氏名、事件の概要を公表しています。警察が、容疑者名(しかもたった一名)を公表したのはやっと5月23日になってからです。最初の逮捕者があったのは2月上旬ですから、警察は約3ヶ月半盗聴捜査を理由に事件の概要を隠し続けたのです。
 この間、盗聴捜査を理由に容疑者の防御権、弁護士の弁護権が侵害され、マスコミが取材の制限を受けたことは間違いありません。この状態を許せば、盗聴法適用に関して情報を出さないことが常態化する可能性もあります。
 今回の盗聴法の初適用は、事件が秘密裏に処理されかねないそういう盗聴捜査の恐ろしさをつきつけたといえます。

■盗聴捜査の実施内容をすべて公表すべきだ!
 国家公安委員会・警察は、盗聴捜査の実施内容を明らかにすべきです。不祥事を繰り返す警察に対する市民の信頼はありません。警察が市民の信頼を取り戻すつもりならば実施内容を公表すべきです。5月23日の発表は、形式的なものにすぎません。
・そもそも今回の事件で盗聴法が適用対象の事件であったのか。
・携帯電話の盗聴の立ち会いがどうおこなわれたのか。
・盗聴の記録がどう行われたのか。
・盗聴の当事者に対する通知はいつおこなわれたのか。
 などなど、検証されなくてはならない問題がたくさんあります。警察は盗聴捜査の全過程を明らかにすべきです。

■盗聴法初適用−幹部逮捕どころか、覚醒剤・大麻押収数グラム
 今回の事件は、報道によれば、今年の1月下旬、警視庁は東京地裁に覚醒剤違反容疑事件で盗聴令状を請求し、発布され、一月下旬から10日間盗聴を実施し、いままでに計9名を逮捕(1名を起訴)、1名を指名手配し、事件で覚醒剤6.4グラム、大麻3.5グラムを押収した、とのことです。
 法務省・警察は盗聴法の制定にあたって、今までの捜査では犯罪組織の末端しか逮捕できない、犯罪組織の中枢、幹部などを逮捕するために必要といってきました。しかし、初適用の結果は、組織幹部の逮捕どころか覚醒剤取引の末端の逮捕であり、押収した覚醒剤・大麻は計10グラムでした。報道によれば警察の内部からも「傍受法を適用しなければならないほど大掛かりな事件だったか」との疑問の声があがっているとのことです。
 この初適用は、盗聴法施行以来、一昨年、昨年と二年に渡って盗聴法を適用できなかった警察が、このままでは盗聴法が「絵に描いた餅」になりかねないとの危機感で、とにかく何でもよいから適用するとの方針のもと、アリバイ的に行ったものにほかなりません。こんなことを認めたなら、小さい事件にも盗聴法が適用され、盗聴乱発への道を開くことになります。

 以上のことからわかるように、盗聴法は乱用の歯止めを欠く悪法であることが、改めて明らかになりました。やはり、盗聴法は廃止されなければなりません。私たちは今後も、引き続き廃止を求めて参ります。国会でも、廃止に向けた取り組みをしていただけるよう、お願いします。

以上