「布川事件」検察官即時抗告に対する
弁護団声明

 「布川事件」に関する再審開始決定に対し、本日、検察官が即時抗告の申立をしたことは、まことに遺憾である。

   本件再審開始決定は、多数の新証拠について、検察官の意見も十分に聞き、さらには事実調べも行った上で、慎重な審理を遂げた結果、これら新証拠が「確定判決を下した裁判所の審理中に提出され、これと既存の全証拠とを総合的に評価すれば、確定判決の強盗殺人事件についての有罪判決に合理的疑いが生じたものと認められる」として、無実を明らかにすべき審理への扉を開いたものである。本決定は最高裁の白鳥・財田川決定の趣旨に沿うものであり、裁判所が、自らの責務を忠実に果たした結果である。

   今、検察官に望まれるのは、裁判所がその責務を果たしたことを受け、検察官もその責務を果たすべく、公益の代表者として、この再審開始決定を謙虚に受けとめ、再審開始後の審理において公正に立証活動を尽くすことである。今回の即時抗告は、検察官の責務に反することであり、かえって検察の威信を損なうものと言わざるを得ない。

 弁護団は、検察官が国民世論に謙虚に耳を傾け、抗告をただちに取り下げ、真実の発見と審理の促進に協力することを強く求めるものである。

2005(平成17)年9月26日
布川事件弁護団


以下、記者会見での発言の一部を紹介します。

桜井さん怒りのコメント:
「検察が恥知らずなことにあきれた。捜査官、検察官は、偽証してもよいと、自ら認めたようなもの。それならそれで受けて立つ。彼らの実態を世間に広めるまでだ!」

杉山さんの奥さん:
「夫は無実。殺していないのに29年間も拘束された。やっと正しい裁判が開かれると思ったのに残念。しかし最後は真実が勝つと信じている」

柴田弁護団長:
「高検の検事長との面談で、即時抗告は、世論にも反している。これ以上世間良識に反することをすれば、かえって高検の威信を失墜させると訴えた。有罪の直接証拠は自白調書しかなく、その自白調書の信頼性が揺らいだのだから、地裁の開始決定は、市民の常識に照らして当然のこと。
警察検察が自白偏重という誤りを犯したことを徹底的に糾弾し、あるべき司法の姿を求めて闘う。布川事件の道を切り開くのみならず、多くの再審事件の道を切り開く」

記者の質問:
「なぜ検察はこれほど明白な決定に対してさえ即時抗告をすると思うか?」

弁護団の回答:
「誤りを認めたくないという検察のメンツ以外の何ものでもない。一般企業などでは、なぜ誤ったのか第三者機関を入れて原因を徹底究明し、誤りを繰り返さないための道を探るのが現在では常識化している。
ただひとり、司法だけが誤りを認めない。自浄能力がまったくない!」


9月30日(金)午後6時から:弁護士会館クレオにて報告集会