滋賀報知新聞(ニュース)平成17年4月25日(月)

阪原服役囚の無実を晴らす

再審開始目指して支援者約100人集結

=日野町で署名活動展開=

▲「地獄の中にいるが、みなさんの協力が父や家族の光です」と語り支援を呼び掛ける家族ら
(湖東・日野町)
 十七年間にわたり無実を訴え続けている阪原弘服役囚(69)=広島県尾道刑務所=。開かずの扉といわれている再審開始を目指して、全国から支援者約百人がこのほど、八日市グランドホテルで開かれた「日野町事件の再審をめざす 第六回全国現地調査」(主催=日野町事件対策委員会、日本国民救援会滋賀県本部、阪原弘さんを守る会)に集結した。参加者は、暴行・脅迫による自白の信用性や無期懲役を確定付けた証拠の脆弱さを共通理解として深め、支援の輪を広げていく決意を新たにした。

 昭和五十九年十二月末、日野町豊田で酒類販売店を営んでいた店主・池元はつさん(当時69)を金品強取のために殺害したとして、事件発生から三年後に強盗殺人罪で逮捕され、無期懲役刑に処された阪原服役囚。 

 池元さんが行方不明になった日は知人宅で酒を飲み、翌朝まで知人宅で寝ていたとのアリバイを主張した阪原服役囚だったが、取り調べ段階で犯行を自白。その背景には、取り調べ中に警察官から結婚を間近に控えていた娘について「嫁ぎ先をガタガタにしてやる」などと脅迫され、暴行も加えられたという。

 最近では、昭和三十六年に起きた三重県名張市の「名張毒ぶどう酒事件」で、取り調べ時に自白を強要されたとして無実を訴え続けてきた奥西勝死刑囚(79)の再審開始が決定した。

 日野町事件は、一昨年から再審請求審で、大津地裁が選定した鑑定人が自白調書による殺害方法と過去の鑑定結果が整合しないとの考えを示したり、唯一の物証で物色行為を裏付ける手鏡の指紋鑑定結果の誤りを当時の指紋鑑定官が認めるなど、自白内容と客観的事実との矛盾が浮き彫りになり、弁護団は「重要な段階にある」と口を揃える。

 現地調査では、阪原服役囚の長女・美和子さんが、特発性間質性肺炎を患い体重三十八キロになった父親の体調を心配しながら「奥西さんの喜ぶ姿を思い浮かべたとき、いつの間にやら父の姿にすり代わり、いつ父はこの喜びを手にすることができるのか考えてしまい涙した。父の命がある間に取り戻したい。家族と一緒に再審の扉をたたいてください」と頭を下げ、二女・則子さんも「殺人犯の娘と言われるよりも、今は父がそばにいないこと、苦しみや喜びが分かち合えないことが一番つらい」と語り、胸に迫る支援呼び掛けに参加者も涙をぬぐった。

 翌日、日野町へ入った支援者と家族は五班に分かれて、事件のあった豊田地区などで阪原服役囚の無実を訴え、毎月大津地裁に提出している再審開始決定を求める署名への協力を呼び掛けた。

 半日で約百五十筆の署名を集め、地元住民からは「阪原さんはいい人やった」や「阪原さんは小さくて、大きくて身長のあったはつさんの遺体を運ぶのは無理だ」との声が寄せられた。

 今後、弁護団は、殺害方法や指紋、金庫の傷など問題の各論点について詰めの作業に入り、再審請求書の補充書をまとめる予定で、地元支援者らも署名活動以外に、新しい証拠証言の発掘・情報収集や当時の警察の不当な捜査実態発見のための地域住民との対話活動のほか、何よりも豊田地区の世論を変えていく取り組みに力を入れることにしている。