
帰還
ドゥルセ・マリア・カルドーゾ/著
上田寿美/訳
2025年11月刊行
定価2400円+税
4-6上製・272頁
ISBN978-4-7738-2510-7 C0097
封印された歴史、アフリカからの帰還
本作は、1974年にポルトガルで起きた「カーネション革命」直後、植民地アンゴラから本国へ帰還した少年ルイとその家族を描いた物語である。作者のドゥルセ・マリア・カルドーゾ自身もまた、アンゴラからの帰還者の一人であり、永くポルトガルでは封印されていた歴史である「植民地からの帰還者」の問題に文学的アプローチで取り組んだ話題作。
ポルトガル領アンゴラで暮らしていた白人の少年ルイとその家族の生活は、本国ポルトガルで起きた革命をきっかけに、歴史の大きなうねりに飲み込まれていく。本国に引き上げた帰還者たちは長期間のホテル暮らしを強いられ、そこにはアイデンティティや黒人差別など、さまざまなポストコロニアル的問題が浮かび上がる。1974年4月25日の革命後、アフリカから大挙して帰還した60万人のポルトガル人が「語らずにきたこと」を、ルイの目を通して赤裸々に描いた本作は大きな注目を集め、今もロングセラーとなっている。
「もうみんな行ってしまった。……僕らももうここにいるべきじゃない」
本作は、1974年にポルトガルで起きた「カーネション革命」直後、植民地アンゴラから本国へ帰還した少年ルイとその家族を描いた物語である。作者のドゥルセ・マリア・カルドーゾ自身もまた、アンゴラからの帰還者の一人であり、永くポルトガルでは封印されていた歴史である「植民地からの帰還者」の問題に文学的アプローチで取り組んだ話題作。
ポルトガル領アンゴラで暮らしていた白人の少年ルイとその家族の生活は、本国ポルトガルで起きた革命をきっかけに、歴史の大きなうねりに飲み込まれていく。本国に引き上げた帰還者たちは長期間のホテル暮らしを強いられ、そこにはアイデンティティや黒人差別など、さまざまなポストコロニアル的問題が浮かび上がる。1974年4月25日の革命後、アフリカから大挙して帰還した60万人のポルトガル人が「語らずにきたこと」を、ルイの目を通して赤裸々に描いた本作は大きな注目を集め、今もロングセラーとなっている。
「もうみんな行ってしまった。……僕らももうここにいるべきじゃない」
【著者紹介】ドゥルセ・マリア・カルドーゾ(ドゥルセ・マリア・カルドーゾ)
1964年、ポルトガル北東部トラズ・オズ・モンテス地方生まれ。幼少期をアンゴラで過ごすが、1975年、アンゴラ独立にともない家族とともにポルトガルへ帰国。2001年のデビュー作『血の荒野』で翌年「アコンテセ賞」を受賞し、作家として一躍注目を集める。『私の思い』(2005)でEU文芸賞(2009)を受賞、著作は20カ国以上の言語に翻訳・出版されている。本書『帰還』は2011年に批評特別賞、英語版が2016年に英国PEN翻訳賞を受賞するなど、国内外で広く評価されている。2024年にポルトガルのカーネーション革命から五十年を迎え、本書は再び注目を集めている。現代ポルトガル文学を代表する作家の一人。
【著者紹介】上田寿美(ウエダトシミ)
1972年兵庫県生まれ。京都外国語大学大学院修士課程修了。京都外国語大学講師。専攻はポルトガル文学。共著に『プログレッシブポルトガル語辞典』(小学館、2015)、訳書に『ポルトガル短篇小説傑作選』(現代企画室、2019)(共訳)がある。




