現代企画室

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闇の河

ケイト・グレンヴィル/著
一谷 智子/訳
2016年1月刊行
定価2500円+税
4-6上製・460頁
ISBN978-4-7738-1519-1 C0097

新たな生を希求して「未開」の入植地に移り住んだ一家と、その地で永く生を営んできた先住民との邂逅。
建国神話の奥に潜む闇を上質な小説に仕立てあげた、オーストラリア文学史上屈指の国民的ベストセラー。

ときは19世紀初頭、ロンドンでの貧窮生活と生命の危機をくぐり抜け、ウィリアムとサラのソーンヒル夫妻は植民初期のシドニーにたどり着く。舟運の仕事についたウィリアムは、やがてシドニーから隔たった入植地に希望を見出し一家で移り住むが、無人の未開地と思われたそこは、先住民が伝統的な暮らしや祭祀を営む場所だった……。
異文化との出会いと衝突、そして和解に至る道のりで、「記憶」はいかに物語られるのか。多文化にひらかれた新たなアイデンティティを模索するオーストラリア社会に、深い衝撃をもたらした現代の古典。

【著者紹介】ケイト・グレンヴィル(ケイト グレンヴィル)

1950年、シドニーに生まれる。現代オーストラリアを代表する作家の一人。
シドニー大学で芸術学を学び、映画制作会社に勤務。その後、イギリスとヨーロッパで数年間を過ごし、執筆活動をはじめる。1980年に米国に渡り、コロラド大学でクリエイティブ・ライティングの修士号を取得。1983年にオーストラリアに戻った後、テレビ局に勤務しながら最初の短編集Bearded Ladies (1984)を出版する。以後、これまでに9冊の小説作品と3冊の創作論(うち1冊は共著)、『闇の河』(The Secret River)執筆の経緯をまとめた回顧録、自らの母を通じて20世紀における女性の生き方を綴ったノンフィクション作品を発表している。
『闇の河』(2005)は、マン・ブッカー賞、マイルズ・フランクリン賞にノミネートされたほか、英連邦作家賞、クリスティナ・ステッド賞など数多くの文学賞を受賞。世界各国語に翻訳されベストセラーとなる。これまで数回にわたり演劇作品に翻案され、2015年にはABC(オーストラリア放送協会)でTVドラマ化された。
The Idea of Perfection(2000)でオレンジ賞、 Lilian’s Story(1985)でヴォーゲル・オーストラリア文学賞、Dark Places(1995)でヴィクトリア州文学賞を受賞。シドニー工科大学、ニューサウスウェールズ大学、シドニー大学、マッカリー大学のそれぞれから名誉博士号を授与されている。

【著者紹介】一谷 智子(イチタニ トモコ)

1974年、京都に生まれる。筑波大学大学院教育研究科修了。博士(文学)。現在、西南学院大学文学部英文学科教授。専門はオーストラリアを中心とした英語圏文学・文化。主な著書にPostcolonial Issues in Australian Literature(共著、Cambria Press, 2010)、論文に「核とオーストラリア文学―B・ワンガーの写真集と連作小説を巡って」(『オーストラリア研究』第27号、オーストラリア学会、2014)、「核批評再考―アラキ・ヤスサダのDoubled Flowering」(『英文学研究』第89号、日本英文学会、2012)、「オーストラリア先住民文学におけるアボリジナリティとその概念の変容―アイデンティティ・ポリテックスからポストナショナル・パラダイムへ」(『南半球評論』第25号、オーストラリア・ニュージーランド文学会、2010)などがある。