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怒りの玩具

ロベルト・アルルト/著
寺尾 隆吉/訳
2015年9月刊行
定価2800円+税
4-6上製・260頁
ISBN978-4-7738-1515-3 C0097

20世紀初頭のブエノスアイレス。ボルヘス、ビオイ=カサーレスらを育んだサロンから隔たった街場で、もうひとつのアルゼンチン文学が生まれた。
「ひたすら仕事に打ち込んでいれば未来は我々のものだ。いつも文学について話してばかりいるのではなく、誇り高い孤独のなかで、顎への〈パンチ〉ほどの暴力を秘めた本を書くことで我々の文学を作っていこう。」
今なおスペイン語圏各地で熱狂的に支持される、「現代アルゼンチン小説の開祖」の代表作!

稀代の大悪党に憧れ、発明を愛する誇り高き少年が、貧困に打ちのめされた果てに選びとった道とは?
貧しい移民の子としてブエノスアイレスに生まれたアルルトの自叙伝的小説。
都市とそこに生きる孤独な人間の葛藤、下層労働者の「その日暮らし」をみずみずしいリアリズムで描き出す。

【著者紹介】ロベルト・アルルト(アルルト,R.)

1900年、ブエノスアイレスの移民家庭に生まれる。10歳で義務教育も終えることなく放校処分となった後、書店員、レンガ職人、ペンキ職人、港湾職員などを転々としながら創作を始める。1926年に『怒りの玩具』で文壇にデビュー。1928年から『エル・ムンド』紙のコラム「エッチング」を担当し、人気記者となる。『七人の狂人』(1929)、『火炎放射器』(1931)、『魔法の愛』(1932)といった長編小説のほか、多くの短編小説や戯曲を残した。1942年に心臓発作を起こして急死。生前の評価は高くなかったものの、現在ではアルゼンチン文学最高の小説家の一人に数えられている。

【著者紹介】寺尾 隆吉(テラオ リュウキチ)

1971年名古屋生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。メキシコのコレヒオ・ デ・メヒコ大学院大学、コロンビアのカロ・イ・クエルボ研究所とアンデス大学、ベネズエラのロス・アンデス大学メリダ校など6年間にわたって、ラテンアメリカ各地で文学研究に従事。政治過程と文学創作の関係が中心テーマ。現在、フェリス女学院大学国際交流学部教授。
主な著書に『フィクションと証言の間で―現代ラテンアメリカにおける政治・社会動乱と小説創作』(松籟社、2007)、『魔術的リアリズム―20世紀のラテンアメリカ小説』(水声社、2012)、主な訳書にエルネスト・サバト『作家とその亡霊たち』(現代企画室、2009)、オラシオ・カステジャーノス・モヤ『崩壊』(同、2009)、マリオ・バルガス・ジョサ『嘘から出たまこと』(同、2010)、フアン・ヘルマン『価値ある痛み』(同、2010)、フアン・カルロス・オネッティ『屍集めのフンタ』(同、2011)、カルロス・フエンテス『澄みわたる大地』(同、2012)、ギジェルモ・カブレラ・インファンテ『TTT トラのトリオのトラウマトロジー』(同、2014)、ホセ・ドノソ『別荘』(同、2014)、グレゴリー・サンブラーノ編『ゴンサロ・ロハス詩集(アンソロジー)』(同、2015)がある。