現代企画室

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未来の記憶

エレーナ・ガーロ/著
冨士祥子/訳
松本楚子/訳
2001年8月刊行
定価3000円+税
4-6上製・400頁
ISBN978-4-7738-0111-8 C0097

禁じられた愛に走った罪のゆえに罰として石に姿を変えられた女。その物語の背後に広がる時代と村人の生活を複数の声が語る、メキシコの豊穣なる神話的世界。

【著者紹介】エレーナ・ガーロ(エレナ・ガーロ)

エレナ・ガーロ(1920〜1998)

メキシコのプエブラに生まれる。読書を好んだ両親のもとで、幼いころからヨーロッパの古典文学に親しみ、同時にフランス語やラテン語を学んだ。こうして自然と身につけた想像力、神秘主義、東洋哲学や古典趣味に加えて、家で働く先住民の使用人たちとの交わりのなかで触れた「魔術的な」世界観の影響を強くうけた。

1936年、首都の国立大学に進み、バレエと演劇を専攻する傍ら、振付師としても活躍した。37年、若き詩人のオクタビオ・パスと結婚、外交官としても活躍した夫と共に、米国、フランス、インド、日本などでの生活を経験、シュールレアリストとしても活動した(パスとは59年に離婚)。57年にパスが率いる前衛劇団のために数篇の一幕物の戯曲を書き上げ、作家としてもデビューした。この頃から60年代にかけてもっとも充実した旺盛な創作活動を展開し、本書『未来の記憶』を63年に、同じく代表作「トラスカラ人の裏切り」を収めた短編集『七色の一週間』を64年に発表した。

これらの作品には、ヨーロッパ文化と先住民文化のせめぎあいの中で自己形成したガーロの世界観が如実に反映されている。ガーロが加担しようとする「抑圧された弱者」にとって、外的・歴史的な現実は常に抑圧的に機能するが、彼女はそれに先住民の宇宙観と神話によって彩られた魔術的な現実を対抗させ、抑圧的で不幸な歴史的現実を否定し、自由で幻想的なもうひとつの世界を作り上げている。幻想的な作風をもつ、現代ラテンアメリカのもっとも重要な担い手のひとりであったとみなされている。