社会・エッセイ

無実でも死刑、真犯人はどこに
大河内秀明 著/46判・356p/98.5/2200円+税
かくも絶望的な、刑事裁判の現実!
警察のズサンな見込み捜査。それに疑念を抱きつつ、警察に追随する検察。自白の信用性や凶器の特定に疑問符をつけつつ、死刑判決を下す裁判所。日本の刑事裁判の現場は、メンツにこだわり、勘と感性が驚くほど鈍く、したがって人権を軽んじ、「常識では考えられない」ことを平然とおこなう、警察・検察・裁判所が一体っとなった、愚者の<三角地帯>と化している。本書は、1988年、横浜鶴見で起こった金融業者夫婦殺害・強盗事件の被告の弁護人が、被告の冤罪を晴らすために、執念をもって書き上げた怒りの書である。


裸になったサラリーマン 自律と連体の市民的公共空間の創造へ
佐々木政憲 著/46判・280p/97.3/2300円+税
カイシャ社会で七転八倒しているサラリーマンに贈る「20世紀末資本主義論」

戦後の日本経済の歩みは「シビル」が「セビロ(背広)」に変貌する過程だった。それが頂点に達したバブル経済のときには、セビロの軍団が猛々しく世界を闊歩した。いまサラリーマンに、その元気はない。これまでのサラリーマン社会の制度やモラルが揺らいでおり海外からも批判の対象となっているからだ。この批判と揺らぎのなかで、以前と同じ姿で再び活力を取り戻すことなど、もはや問題外である。日本経済を支えたサラリーマンは裸になったのであり、新しい衣を探さなければならない。どのようにしてか。どのような衣をか。(本書より)―その答えを模索する書。

【本書の目次】

1 労働と欲望の動員経済
 (1)二〇世紀資本主義と消費社会の誕生
 (2)欲望の差異化と労働のフレキシブル化
 (3)消費社会の転回と自由時間

2 日本型動員経済の展開
 (1)現代日本の市民社会的状況
 (2)フレキシブルな生産体制の動員様式
 (3)日本型生産システムの変容

3 社会的剰余循環の転換と市民的公共圏の創造へ
 (1)蓄積体制の転換と社会的労働時間
 (2)フォード主義の社会的剰余循環
 (3)新しい市民的公共圏の創造へ

【著者について】
佐々木政憲(ささき・まさのり):1947年、北海道に生まれる。共著に『経済原論…市民社会の経済学批判』(青林書院新社、83年)『現代市民社会の旋回』(昭和堂、87年)/『政治経済学の古典的系譜』(三嶺書房、88年)

新宿 ダンボール村 闘いの記録
新宿連絡会[新宿野宿労働者の生活・就労保障を求める連絡会議]編/46判・312p/97.8/2800円+税
大都会・東京の路上、地下街、川べりに増え続ける野宿者の群れ。新宿地下街も例外ではない。

無党派層の期待を担って登場した青島都政は、96年初頭新宿地下街のホームレスを排除し、ダンボール小屋を一掃した。その後東京地裁はその攻防に際し威力業務妨害で逮捕された人びとを無罪と判断し、東京都の施策を実質的に批判した。本書には、この裁判での被告の意見陳述・証人の証言に加え、新宿地下街で出されているニュース誌を通じて伝えられる現場からの声を集成した。
目次

第1部 路上から撃て―闘いの軌跡
(1)仲間たちが起きあがった 94・2・17〜94・8
(2)ダンボール村を守り抜け 94・9〜95・4
(3)STOP! 動く歩道 95・4〜96・1
(4)そして闘いは続く 96・1・24〜97・5

第2部 ダンボールはゴミじゃない―裁判の軌跡
[被告人意見陳述]
守るものは己の身体と、仲間のつながりだけ 米田庄次
運動は目的に向かい、濁流のように流れていく 笠井和明

[弁護側証人証言]
自らを柱に縛りつけての抵抗 安藤孝義
東京都へ伝えたいこと 松本勇二
居住権は国際社会の基本的人権だ 穂坂光彦
排除はクリアランス政策の再来だ 下田平裕身
抵抗行為に違法性はない 萩原重夫
二十年間日雇労働者を見続けて 下宮忠子

はじめに差別があった 「らい病予防法」と在日コリアン
清瀬・教育ってなんだろう会編
国本衛ほか著/46判・216p/95.12/1500円+税
「らい」予防・隔離・撲滅政策の柱として君臨した「らい予防法」の廃止は、差別の歴史の終止符となるのか?多様な視角から日本社会に向けられた問題提起の書。

山谷 やられたらやりかえせ 
山岡強一 著/46判・452p/96.1/3000円+税
やまさん--みんながそう呼んだ日雇い労働者運動の担い手・山岡強一。86年1月凍てついた新宿の路上で彼は右翼の凶弾に倒れた。真摯な思考過程を明かす遺稿集。

父親が語る登校拒否  [新装増補版]
東京シューレ父母会編/46判・280p/97.11/1600円+税
親はなくとも子は育ち、学校がなくとも子は育つ。それを悟った父親たちがホンネで語る「登校拒否」論、新装版刊行!

塾主宰者、社会保険労務士、編集者、建築家、生協職員、国家公務員、大学教授、広告代理店主、接骨医――さまざまな職業に就いて、この企業・学歴社会を生きる父親たちは、子どもの登校拒否を契機に、何を考え、何に迷い、いま何を確信しはじめているか。

「子ども」の絵 成人女性の絵画が語るある子ども時代
アリス・ミラー 著 中沢吉晴訳/46判・184p/92.5/3000円+税
「幼児虐待」に至る心のメカニズムを徹底解明。教育、育児、心理療法の分野に一大センセーションを巻き起こした著者が、子どもの虐待の実態を告発する。

多次元的世界に生きる 千葉大学文学部公開講座
千葉大学文学部編/A5判・336p/91.6/2600円+税
世界の至るところでさまざまな人々が、さまざまな問題を解決するために努力し、21世紀のための多様な原理と独自の価値を追求している。共生の思想の模索。

激動の時代を読む ジャーナリズムの現場から
奥武則 著/46判・280p/91.4/2200円+税
記者歴20年の著者が、激動の80年代を読み解き、波瀾の90年代を展望する。毎日新聞の論壇時評などを通じて、日本とこの国に暮らす人々の姿が明らかにされる。

鎌倉・市民アカデミア もうひとつの生涯学習
久保田順 著/A5判・304p/91.1/2800円+税
鎌倉に開校して15年。官製の文化行政ではなく、企業の経営するカルチャーセンターでもない、市民が自ら組織し運営する学習の場としての市民アカデミアの全豹。

海流と潟 風土の感性
松浦豊敏 著/46判・280p/90.7/2200円+税
20年ぶりの奄美行きを語る「糖漏発見」をはじめ、九州の内海沼辺ひとやものの気配を鮮やかに伝え、風土に息づくさまざまな感性を澄明な文体で綴るエッセイ集。

技術街道をゆく ニッポン国新産業事情
吉岡忍 著/46判・520p/87.11/1800円+税
47都道府県のさまざまな産業現場を歩いた著者は人々の声に耳を傾け、風景を凝視し、考える。わが国の新産業事情はもとより、私達の社会のありかを明らかにする。

憂愁の物理学
林浩一 著/46判・221p/85.9/1200円+税
モノポール、大統一理論を究める最先端の物理学者が、俗説を排し、独創と偏見に満ちた世紀末の物理学を展開。理科ぎらいの人に贈る軽妙で洒脱な科学エッセイ。

南大坂・流民の論理 労働者自主管理の可能性
総評・全金・山科鉄工支部編/46判・246p/81.7/1500円+税
労働者運動総撤退の中で最後の抵抗戦のひとつとして浮上する自主管理論争。その先駆的な戦いを担った大阪西成・山科鉄工の継承こそ、現在の労働運動の課題だ。