1998年の刊行書

エルネスト・チェ・ゲバラとその時代 コルダ写真集
ハイメ・サルスキー 太田昌国文/98.10/A4判・120p/2800円+税

「英雄的ゲリラ」と題されたあの写真はどんな状況で撮られたものだったか。ゲバラやカストロの思いがけぬ素顔を明かし、キューバ革命初期の躍動的な鼓動を伝える87枚の写真に加えて、写真とゲバラの関わりについての文章「写真解読のための註」など豊富な資料を備えた〈時代を読む〉写真集。

文=太田昌国「チェ・ゲバラと私たちの時代」
一、その思想を風化させないために
二、色あせぬゲバラの思想・感性・生き方
三、ゲバラと朴慶植さんの運動と死

アルベルト・コルダ写真展ポスター

「コルダ写真集」表紙


国家を越える市民社会 動員の世紀からノマドの世紀へ
斉藤日出治著/98.12/A5判・280p/3200円+税
ひとは、どこへ向かうのか? 家族・家族・地域・国民国家などという伝統的な組織に帰属して事故を定義することをやめつつあるいま・・・・・

白鳳の阿修羅 足で歩き続けた古代史
森 秀人著/98.7/46判・300p/2300円+税

銅鐸の謎、天皇の謎、闇に包まれた吉備国・出雲国・諏訪国。日本古代史は、なぜ、かくも謎に満ちているのか?古代の権力者たちによって、複雑に塗飾され秘匿された古代史のヴェールを独自な視点をもつ民間史学者・森秀人が剥ぐ。蘇我入鹿邸から命がけで古代資料を救出した船史恵尺、その息子で、日本に仏教をはじめて導き入れた実在の高僧、船氏道昭、黒衣のふたりを通じて、額田王姫、天武天皇、中臣鎌足が語りだして、古代史の内幕を明らかにする、想像力に満ちた歴史物語!

●著者の言葉●
ヒストリー(歴史)というものは、ひとびとが考えているように、歴史的事実を寄せ集めたものではない。歴史は、思惟された過去のことであり、人間の想像力が縦横に走り回ることのできる世界なのである。


無実でも死刑、真犯人はどこに 鶴見事件の真相
かくも絶望的な、刑事裁判の現実!
大河内秀明著/98.6/46判・356p/2200円+税
警察のズサンな見込み捜査。それに疑念を抱きつつ、警察に追随する検察。自白の信用性や凶器の特定に疑問符をつけつつ、死刑判決を下す裁判所。日本の刑事裁判の現場は、メンツにこだわり、勘と感性が驚くほど鈍く、したがって人権を軽んじ、「常識では考えられない」ことを平然とおこなう、警察・検察・裁判所が一体っとなった、愚者の<三角地帯>と化している。本書は、1988年、横浜鶴見で起こった金融業者夫婦殺害・強盗事件の被告の弁護人が、被告の冤罪を晴らすために、執念をもって書き上げた怒りの書である。
律儀なれど、任侠者  秩父困民党総理田代栄助
高橋哲郎著/98.2/A5判・376p/3800円+税

民衆はなぜ、田代栄助を困民党の総理におしたてたのか。

秩父事件研究の現在を踏まえつつ、周到な資料の読み込みと丹念な現地調査にもとづいた、日曜歴史家ならではの田代栄助評伝。