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スタイルアサヒ(朝日新聞社)2018年6月号 取材・文:石井広子、土田ゆかり
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スタイルアサヒ(朝日新聞社)2018年6月号 取材・文:石井広子、土田ゆかり

〈大人も楽しめる絵本の世界〉

絵本は子どものためだけの読み物ではありません。現在、大人も楽しめる絵本もたくさん出版されています。絵本を芸術と位置づける絵本作家の田島征三さんのアトリエを訪ね、創作のエネルギーについて聞きました。

〈童心に帰らなくてもいい
今のままの自分で読んでもらえれば〉


静岡県・伊豆高原にある絵本作家、田島征三さん(78)のアトリエ。海を見下ろす小高い丘に立ち、林の奥から小鳥のさえずりが聞こえる。1階には画材が並び、天井付近から田島さんが手がけた色鮮やかな現代アートの作品がぶら下がる。

2階のベランダには、拾った木の実が天日干しされていた。作品の素材にするためだ。秋は家の周りで鳥や落ち葉がぴゅんぴゅん風に舞う。「あの葉っぱに乗ったら楽しいだろうなと想像するだけで。物語が浮かぶ」と笑顔で話す。

「絵本作家の中で僕はいちばん、子どものことを考えずに描いていると思う。だって、僕が子どもだからね」。人にどう思われるかではなく、自分が面白いと思うのもを表現する姿勢は若いころから変わらない。

美大生のころ、大手広告会社に派遣され、企業のポスターを制作。社員から「スポンサーの宣伝になっていない」と言われ、「僕は人の宣伝をするためにデザイナーになったんじゃない」と帰ってしまった。ところが今、田島さんの躍動感あふれる画風は企業のイメージアップのための広告にも起用されている。

この日は、6月に校正出版社から発売の絵本「ぼく、おたまじゃくし?」の原画の仕上げにかかっていた。モデルは「絵本と木の実の美術館」(新潟県十日町市)の屋外にあるビオトープ。その池の中に棲む生きものたちの世界を描いた。同館は2009年、田島さんが「大地の芸術祭」の作品として、古い校舎を丸ごと「空間絵本」に変えた建物だ。今はNPO法人が運営する美術館になっている。

打ち合わせのため、出版社の担当編集者も訪れていた。「かつて国内の絵本は、児童文学者の文章に挿絵を付けたものが多かった。芸術性の高い絵を中心に据え、絵本をアートとして作る絵本作家としては、日本でも先駆的な存在です」と話す。

田島さんは、絵と言葉を響き合わせて、一つの世界を作る。「絵本は芸術としてみてもらいたい。童心に帰らなくてもいい。今のままの自分で読んでもらえれば」



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