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新潟日報    2014年10月5日 「にいがたの一冊」欄
新潟日報    2013年7月27日
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新潟日報    2014年10月5日 「にいがたの一冊」欄

〈暮らし再生へ向かう山古志〉

本書は、未曾有の大地震で住宅も道路も棚田も養鯉施設も破壊され、全村非難した山古志の人々の新しい村づくりの「物語」であり、東洋大学の先生を中心に同志16人の著者の支援と観察の記録である。昨年刊行されたもので、巻頭には被災時の村長・長島忠美現復興副大臣の山に生き続ける熱い想いがある。

2004年10月23日に発生した中越地震の直後から8年間の村の人々が共に生きる姿が丁寧に描写され、支援や思想もよく理解できる。ヘリコプターで離村した時から避難所や仮設住宅での生活経験により、帰村後の村づくりでは共同や外の人との交流が盛んである。例えば、共同耕作や共同直売所等の沢山(たくさん)の新しい仕組みを創出し、暮らしの再生へと皆が向かっている。

そこには幾つかの要因があったようだ。まず、「みんなで山に帰ろう」の意志が長島村長からいち早く示されたこと。次に、仮設住宅が全村まとまって建設され、14集落5地区の人々が集落毎(ごと)に入居でき、さらには地区毎の集会所、診療所、農園などができ、近所付き合いと心身の健康が維持できたこと。

三つ目は行政のリードで、豪雪に耐え山の生活や景観に馴染(なじ)む低コストの復興住宅も出るが早々と建設され、住宅復興の目処(めど)が早期についたこと。四つ目は被害の大きい6集落は、都市計画の専門家と行政によって何回も復興計画のワークショップが行われたこと。五つ目は復興住宅について書体毎に行政と丁寧に相談ができ、自律再建の意欲が増したことである。全体として山古志村と被災後合併した長岡市の森民夫市長をはじめとする行政の一体となった取り組みが優れていたことが認められる。

山に帰った後の生活復興の様子もよく分かる。自ら食べるための農業とその余剰農作物の直売や交換と多様な加工品開発、かつての買い手であった愛鯉家の協力による伝統の養鯉業の復活、育牛と伝統の「牛の角突き」祭りの復活など美しい山古志が復活しつつある。

加えて、かつてこの村に強い影響を及ぼした政治家田中角栄と民俗学者宮本常一の紹介がある。実はこれによって本書に太い筋が通り、これからの山古志の方向が明確に分かりやすくなっている。また、このことは今日、東日本大震災からの復興や過疎化や高齢化に悩む多くのまちやむらへの貴重な示唆になっている。

最後に、本書が急逝された東洋大学山古志支援のリーダーであった社会活動家内田雄三教授に捧(ささ)げられたものであることを付記しておきたい。
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新潟日報    2013年7月27日

2004年の中越地震で全村避難した山古志村の帰村後の歩みを調査してきた東洋大学社会福祉開発研究センターが、書籍「山あいの小さな村の未来ー山古志を生きる人々ー」を今月発刊した。地域コミュニティーを維持し、未来につながる地域づくりに取り組んできた具体策などを紹介している。

センターが文部科学省の補助を受け、07〜11年度までの5年間にわたり山古志で研究してきた成果をまとめた。

書籍は帰村後の地場産業や高齢者支援の取り組み、社会的支援の在り方などをテーマ別にまとめ、山古志が取り組んできた「持続的むらづくり」の方策を掲載した。

また地域コミュニティーに配慮した仮設住宅団地の建設、住民活動などを後押しする地域復興支援員の配置など、東日本大震災の震災復興に活かされた支援策も紹介している。

執筆者の1人で農業生物研究室を主宰する明峯哲夫さん(67)=さいたま市は「地域復興を目的に、一般の人でも分かりやすいように研究論文の文体を書き直した。多くの住民に読んでほしい」と期待を込める。

8月には、執筆者有志による出版記念イベントを山古志地域で開催予定。書籍は山古志地域全戸に無料で配布する。
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