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読売新聞 2011年12月18日 評:椹木野衣
■美術手帖 2011年10月「中原佑介美術批評選集、刊行スタート」 文:永峰美佳 pdf記事を読む
朝日新聞 2011年9月7日 記事:田中三蔵
読売新聞 2011年9月1日
毎日新聞 2011年8月25日 記事:岸桂子
■『中原佑介美術批評選集』の刊行がスタート。2011年8月20日(土)に「中原佑介さんを偲ぶ会」が開催され、その会場にて選集の刊行を開始しました。今後全12巻を随時刊行していく予定です。
■装丁は浅葉克巳さんが担当され、ブログ「浅葉克巳秘書日記」でも、本書をご紹介頂きました。
■『中原佑介美術批評選集』の全巻予約も承っております。お申し込みはこちらをFAXにてお送り頂くか、同じ内容をメールにてお送りください。

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読売新聞 2011年12月18日 評:椹木野衣

〈学問と詩人 融合求め〉

戦後の美術批評をリードした「御三家」。

既に他界していた東野芳明に続き、昨年の針生一郎、今年は中原佑介と、相継(あいつ)いで亡くなった。中原氏とは昨年、瀬戸内で開かれたシンポジウムで同席し、帰りの車で話したのが最後となった。日本の美術批評は新しい段階を迎えた。

訃報を知ったのは、震災の直後だった。すぐに頭をよぎったのは、氏がもと京大の湯川秀樹研究室で理論物理学を専攻していたこと。原子炉から放出された放射能による大規模な環境汚染を、いったいどんな思いで見ただろうか、と。実際には、震災前の三月三日に亡くなっていて、知る由もなかったのだが。

著者を美術批評の世界に押し出したのは、大学院在学中に応募した美術評論募集で一席を獲得した、本書と同名の一編。これを含む選集の出版が先ごろより始まり、併せて第五巻『「人間と物質」展の射程』が出されている。

キーワードは「物質」だ。美術作品が物である以上、あたりまえかもしれない。けれども、ここで物質というとき、単に素材としての物を意味しない。先の一席評論に早くも登場するこの語には、アインシュタインの相対性理論が登場して以降の新しい世界観が反映されている。

それは「批評」という語を一九世紀までの「思考」と対比しているのにも明らかだ。著者にとって美術批評とは、作品への絶対的な価値観の吐露でも、理路整然とした体系でもありえなかった。作品と同様、動的に運動しながら、ともに創造していく。氏の好んだ別の言葉を使えば「発明」だった。確かに、単なる物としての「機械」に創造的な揺らぎはない。

かつて理論物理を学びつつ詩を書いた氏は、学問への志も詩人への憧憬も断ったあと、批評に両者の対立ではなく融合を求めたのではないか。だからこそ、機械文明の危機を思わせる震災下に氏が美術を通じて何を語ったか。同じ批評家として、本書を読み考えずにはいられない。
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朝日新聞 2011年9月7日 記事:田中三蔵

〈故中原佑介氏の批評集刊行―全12巻、戦後美術を読み直すヒント〉

現代美術会を先導した一人で、今年3月3日に胆嚢がんのため79歳で亡くなった美術評論家の中原佑介さん。その仕事を顕彰する「中原佑介美術批評選集」(現代企画室+BankART出版)の刊行が先月始まった。全12巻。2013年夏に完結の予定で、半年ごとに2、3巻ずつ配本する。

アートディレクターの北川フラム氏と「BankART1929」代表の池田修氏を代表とする編集委員会は、関係者や愛好者が語り合う研究会を10回開催しており、今後も研究会を続け、成果を編集に反映させていく。8月20日には、都内で「偲ぶ会」も開かれた。

22日に配本された第1回分は2冊。第1巻の「創造のための批評ー戦後美術批評の地平」には、1955年に催された美術出版社の懸賞論文で1席となったデビュー作「創造のための批評」のほか、「岡本太郎論」など16本が収められている。もう1冊は、第5巻の「『人間と物質』展の射程ー日本初の本格的な国際展」。「人間と物質」展は、氏がコミッショナーを務め、海外からクリストら27人、国内から河口龍夫や松澤宥ら13人を選び、70年に東京都美術館で開かれた大規模展。幅広さや、新鮮さ、鋭さが語り継がれている伝説的企画展だ。その図録への文章や、同展を巡る評論を集めている。

両巻とも、氏の業績の骨格をなしており、深い見識や先見性、文章の明晰さを再確認させる。また、戦後美術を読み直すヒントになる内容だ。
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読売新聞 2011年9月1日

〈中原佑介氏の仕事 選集に〉

3月3日に79歳で死去した美術評論家、中原佑介氏の仕事をまとめた『中原佑介美術批評選集』(現代企画室+BankART出版)全12巻の刊行が始まった。第1回配本は2冊(本体価格各2400円)で、第1巻『創造のための批評』は1955年に美術出版社の美術評論募集で第一席となったデビュー作など初期の評論を収録。第5巻『「人間と物質」展の射程』は、70年に手がけた伝説的な国際展をめぐる文章を集めた。

8月20日には出版記念を兼ねた「偲ぶ会」が東京都内で開かれた。建畠晢・京都市立芸術大学長は「『人間と物質』展のラディカルな精神を継承していきたい。著作集も出始め、希有な知性の全貌が私たちの前に明らかになっていくのではないかと思う」と述べた。

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毎日新聞 2011年8月25日 記事:岸桂子

3月3日に胆嚢がんのために亡くなった美術評論家、中原佑介さん(享年79歳)をしのぶ会が、東京都内で開かれた。針生一郎さん、東野芳明さんと共に「現代美術評論の御三家」と呼ばれた故人を慕ってアーティスト、美術関係者ら約140人が参加。尽きぬ思い出を語り合った。

UBEビエンナーレ(旧・現代日本彫刻展、毎日新聞社主催)の審査などを長年共にした酒井忠康・世田谷美術館長は故人独自の視点に触れ、「徹底的な取材をした現場主義者」とたたえた。半世紀以上の交流があった画家の池田龍雄さんは、1955年のデビュー作「創造のための批評」に言及、「『変革』という言葉に共感しました」と語った。美術出版社編集者としてこの評論を担当した上甲ミドリさんも駆けつけ、京都大大学院湯川秀樹研究室で物理学を専攻していた中原さんが美術の道へ転向した経緯を明かした。

手がけた展覧会の中でも燦然と輝くのが、コミッショナーを務めた70年の日本国際美術展「人間と物質」。リチャード・セラさんら海外作家を含む40作家を紹介し、日本初の国際的な美術展となった。これに参加した河口龍夫さんは「創作意欲をかきたてられる批評をいただきました」。美術評論の後進世代にあたる建畠晢さんは「物書きとキュレーションの双方をすることが目標だった。ラジカルな精神を受け継ぎたい」と誓った。

この会は、生前から準備が進んでいた全12巻の『中原佑介美術批評選集』(既刊は2冊、現代企画室発売)の出版記念も兼ねた。




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