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部落解放 2011年7月号
世界へ未来へ|9条連ニュース 2011年1月20日(木)
東京新聞、中日新聞ほか 2010年12月12日(日)読書面「新刊」コーナー
信濃毎日新聞 2010年12月5日(日)評者:早瀬晋三(大阪市立大学教授)
新潟日報、宮崎日日新聞ほか 2010年12月5日(日)「新刊ガイド」

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部落解放 2011年7月号

日本ではなかなか話題にならない難民の迫害や差別。しかし少数だが日本にも難民は暮らしていて、遠い国や地域の問題ではない。また著者は「日本は途上国にさまざまな援助、すなわち暴力的介入をしている」とする。援助という名の介入が難民を生み出している現実も、日本が難民問題の当事者であることを示している。横浜の診療所で難民の医療にかかわっている医師が、難民の暮らしと背景をみずからの経験から語る。
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世界へ未来へ|9条連ニュース 2011年1月20日(木)

難民とは何か、民族とは、そして国家とは?

著者の活動は、フィリピンのピナツボ火山噴火被害者の救援から始まった。そして、バングラディッシュ、タイ、ザイール、パキスタン、日本で難民の医療支援や調査を続けてきた医師が、各国で難民が発生する原因や社会背景を探り、難民保護および「人道支援」の本質に迫ります。

著者は、現在横浜の診療所に勤務している。「世界は分断しつつある。それをつなぐのは、わたしであり、あなたであり、彼・彼女である」という言葉は実に重い。声なき難民の声を聴くことができる書であり、かつまた難民問題を根底からとらえなおす問題提起の一冊です。
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東京新聞、中日新聞ほか 2010年12月12日(日)読書面「新刊」コーナー

著者は、バングラデシュ、コンゴ(旧ザイール)、パキスタンなど海外での医療救援活動のほか、アフガニスタン、ベトナム、イランなどの在日難民への医療支援と実態調査を続ける。本書は、医師としての体験と思考、実践を通して、難民政策と外国人収容所の問題点を明らかにする。難民とは何か、支援とは何かを提起し、近代化が生みだす難民と私たちの関係を解明する渾身の一冊。

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信濃毎日新聞 2010年12月5日(日)評者:早瀬晋三(大阪市立大学教授)

「人道支援」の名の下の「暴力」

「うまれかわり、もう一度機会があれば、わたしたち(難民)は(定住先として)日本を選びません」「UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、欧米のNGOとともに新しい支配者としてやってきた」――。日本に定住した元難民や地元NGOの医師の言葉である。今、日本で、世界で、難民に何が起こっているのだろうか。

著者は海外で難民のための医療活動、日本で外国人診療に従事している。その経験を基に、援助、民族、国家とは何かを問いながら、難民が発生する原因や社会背景を探り、さらに「難民保護」や「人道支援」の名の下に、どのような「暴力」が行われているのか、その実態に迫ろうとする。

UNHCRは、1950年の設立当初から政治性が強く、日本を含む先進国を中心とした資金から成り立っているため、「国益」を無視した「人道支援」ができない。

一方、日本の難民受け入れは、過去約30年間に538人で、認定率は1%しかない(5%のインドシナ難民を除く)。しかも、認定を待つ間、外出することも許されなず、あたかも犯罪者のように扱われる。

日本に長く暮らす外国人は、日本人の仕事仲間や隣人がとても親切だと言う。しかし、その日本人が、国家を意識すると途端に国益を重視して外国人を排除する。グローバル化が進み、多文化共生社会が唱えられても、難民の居場所はない。

本書を読んで、一方的で極端な見方だと感じた人がいるかもしれない。その原因は、著者個人より、もっと深い所にある。難民と関わりを持った者が、まず困ることは、基本的知識を得るための本がないことだ。先進国や国際機関にだけ目を向けるようでは、今の世界は理解できないし、未来も展望できない。

大切なことは、自分の国や地域だけの平和も繁栄もあり得ないことに気付くことだろう。世界のどこかで戦争や紛争があり、不幸な人々が出現すれば、それが巡り巡って自分たちの生活を脅かす。「国益」を超えて考えることの意味を、本書は教えてくれる。

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新潟日報、宮崎日日新聞ほか 2010年12月5日(日)「新刊ガイド」

著者はミャンマーやルワンダなどの難民を海外で支援し、日本に暮らす難民を診察する医師。現場の視座から、難民を取り囲む状況を包括的にまとめた一冊だ。

実態を熟知するが故に、難民の生活を保障しない受け入れ国政府、支配・服従の関係を持ち込む国際機関や非政府組織(NGO)を厳しく批判する。援助は善意でも、見返りを期待するのでもなく、「力のある者がない者をささえなければならない義務」であり、「社会に対する責任である」との言葉が重い。



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